I Say A Little Prayer
◆L
「――良いご家庭に引き取られました。これでもう安心ですね」
Lの為に新しい紅茶をカップに注ぎながら、ワタリは穏やかな口調で報告を締めくくった。
「…そうだといいが、家庭の良さは、正直私には分からない。親がいなくとも子は育つというし、二親が揃っているというだけで後は最悪な家庭もあるだろう……ようは、愛情の問題だ。どれだけ子供の事を想っているか……」
注がれたばかりの紅茶に角砂糖を数個入れ、スプーンでゆっくりかき回す。
「皆、あの子の幸せを願っていますよ。それは間違いありません」
「…そうだな。だが私はあの子を彼らから取り上げてしまった。目標を達成させる為には必要のない存在だからと……」
かき回し、スプーンをソーサーに置いたがカップには手を伸ばさなかった。
「…Lとしての私は、どんな時でも合理的であらねば。悲惨な結果や残酷な結末を迎えるに違いないと確信していても、それが正しいならそうするしかない」
「真実を追求するには常にそれ相応の覚悟が必要です。先にどんな結果が待ち受けていようとも」
「…竜崎は、暢気でいい。彼は皆に好かれていて何の問題もない」
そこでLはやっとカップに手を伸ばした。
「…Lの方は、ただの目標でしかない。本当の意味では、子供達からは必要とされてはいないんだ。だから今回の事では『Lという人物は全く融通の利かない冷血漢だ』と思ったろうな」
うっすらと口元に笑みを浮かべ自嘲気味にそう言うと、ようやくカップに口をつけた。
「あの子達にはあなたが言ったように『Lが駄目だと言った』と伝えましたからね」
「それであの子達はお前だけでなく、竜崎である私にも口添えを頼んできた訳だ。『どうかあなたからもお願いして下さい。エリンが私達とずっと一緒にいられるように』と。まぁそれも予測していた事だったな」
「手離した事、後悔なさっているのですか?」
「いや――」
そこでLは手を伸ばしてまた角砂糖を数個つまんだ。
「――後悔するくらいなら初日にあの子を警察に引き渡していたよ」
そして飲みかけのティーカップにポチャンと落とした。
「…あの子は普通の子だ。私の…彼らのようにはなれない。普通の子には普通の生活をさせなければ。だが、その普通がなかなか見つからない。あの連中には任せておけなかったんだ。だからお前に任せた。それでまともな家庭が見つかった」
それからまた同じ様にスプーンでグルグルとかき回した。
「愛らしい子でしたね」
ワタリは細い目を更に細めて微笑んだ。
「…お前の真似がしたくなっただけだ。少しだけ…そういう気分を味わいたかった…それだけだ…」
Lはかき回す手を止めず、だたグルグルと。
表情も変えず。
小さき者の魂は、全ての者の魂を揺さぶる。
伸ばされた小さな手を掴まぬ者は、深い闇に陥る。
「…たとえ短い期間でも、彼らは学んだはずですよ。小さな命はとても尊く、それを守る事は容易ではないがそれだけの価値があるのだという事を」
ワタリは僅かに目をすがめた。Lの心の内を見るように。
幼い自分に伸ばされた手を、彼自身も決して忘れてはいないのだ。
そして救えるものならばこの世の幼き者全てを救ってやりたいと願っている事も。
「……ワタリ」
「はい」
「おかわりを」
「あぁ、これはこれは。気付かずに申し訳ありません」
ワタリはLから突き出された空のティーカップを受け取ると、そこへまた新しいお茶を注いでやるのだった。
「――良いご家庭に引き取られました。これでもう安心ですね」
Lの為に新しい紅茶をカップに注ぎながら、ワタリは穏やかな口調で報告を締めくくった。
「…そうだといいが、家庭の良さは、正直私には分からない。親がいなくとも子は育つというし、二親が揃っているというだけで後は最悪な家庭もあるだろう……ようは、愛情の問題だ。どれだけ子供の事を想っているか……」
注がれたばかりの紅茶に角砂糖を数個入れ、スプーンでゆっくりかき回す。
「皆、あの子の幸せを願っていますよ。それは間違いありません」
「…そうだな。だが私はあの子を彼らから取り上げてしまった。目標を達成させる為には必要のない存在だからと……」
かき回し、スプーンをソーサーに置いたがカップには手を伸ばさなかった。
「…Lとしての私は、どんな時でも合理的であらねば。悲惨な結果や残酷な結末を迎えるに違いないと確信していても、それが正しいならそうするしかない」
「真実を追求するには常にそれ相応の覚悟が必要です。先にどんな結果が待ち受けていようとも」
「…竜崎は、暢気でいい。彼は皆に好かれていて何の問題もない」
そこでLはやっとカップに手を伸ばした。
「…Lの方は、ただの目標でしかない。本当の意味では、子供達からは必要とされてはいないんだ。だから今回の事では『Lという人物は全く融通の利かない冷血漢だ』と思ったろうな」
うっすらと口元に笑みを浮かべ自嘲気味にそう言うと、ようやくカップに口をつけた。
「あの子達にはあなたが言ったように『Lが駄目だと言った』と伝えましたからね」
「それであの子達はお前だけでなく、竜崎である私にも口添えを頼んできた訳だ。『どうかあなたからもお願いして下さい。エリンが私達とずっと一緒にいられるように』と。まぁそれも予測していた事だったな」
「手離した事、後悔なさっているのですか?」
「いや――」
そこでLは手を伸ばしてまた角砂糖を数個つまんだ。
「――後悔するくらいなら初日にあの子を警察に引き渡していたよ」
そして飲みかけのティーカップにポチャンと落とした。
「…あの子は普通の子だ。私の…彼らのようにはなれない。普通の子には普通の生活をさせなければ。だが、その普通がなかなか見つからない。あの連中には任せておけなかったんだ。だからお前に任せた。それでまともな家庭が見つかった」
それからまた同じ様にスプーンでグルグルとかき回した。
「愛らしい子でしたね」
ワタリは細い目を更に細めて微笑んだ。
「…お前の真似がしたくなっただけだ。少しだけ…そういう気分を味わいたかった…それだけだ…」
Lはかき回す手を止めず、だたグルグルと。
表情も変えず。
小さき者の魂は、全ての者の魂を揺さぶる。
伸ばされた小さな手を掴まぬ者は、深い闇に陥る。
「…たとえ短い期間でも、彼らは学んだはずですよ。小さな命はとても尊く、それを守る事は容易ではないがそれだけの価値があるのだという事を」
ワタリは僅かに目をすがめた。Lの心の内を見るように。
幼い自分に伸ばされた手を、彼自身も決して忘れてはいないのだ。
そして救えるものならばこの世の幼き者全てを救ってやりたいと願っている事も。
「……ワタリ」
「はい」
「おかわりを」
「あぁ、これはこれは。気付かずに申し訳ありません」
ワタリはLから突き出された空のティーカップを受け取ると、そこへまた新しいお茶を注いでやるのだった。