I Say A Little Prayer
◆リンダ
「……どうしてもダメなの? ロジャー」
「ここは乳児を預かる施設ではないんだよ。分かっているだろう?」
「…分かってる。でも…あんなに懐いているのに。それに皆あの子を大切に思ってる。とても愛してるわ。あの子も分ってる」
「あの子は君たちとは違うんだ。普通の子だよ。だから普通の生活をさせてやらなければならないんだ」
「ちゃんとした家が必要って事?」
「ここもちゃんとした家だよ」
「…でもパパとママはいない」
「私とマリア、ワイミーさんや他の職員全員が君たちを愛してるし、大切に思ってる」
そうじゃない。皆思ってる。
自分だけを愛してくれる人が欲しいと。
ここではそれは叶わない。
だからこそ、あの子をここに留めるのは良くないのだ。
「…そうね。私達とは違うんだよね……」
リンダは淋しさを隠して微笑んだ。
「…ロジャー?」
「何だい?」
「一つだけお願いがあるの」
「さぁて、どんな事かな? 言ってごらん」
「…あの子…エリンは描いてもいいんでしょ? だってあの子はここの子じゃないもん。あの子はみんなと違う普通の子なんでしょ? だからいいんでしょ?」
すがるような目でロジャーにそう訴えると、彼は優しく微笑み「勿論、構わないよ」と言った。
リンダは絵を描く才能に恵まれていた。
心に浮かんだ事をそのまま表現出来たし、見たものをそっくり写しとる事など朝飯前。その上、以前見たものを寸分違わず紙の上に表す事も出来たのだ。
才能もあったがそんなモノがなかったとしても、彼女はとにかく描く事が大好きで、四六時中何かしら描いていたが、たった一つ描いてはいけないものがあった。
それはここにいる人々。
職員は勿論だったが、特に自分と同じくここで暮らす子供達の姿を、紙に写しとる事は許されていなかった。
ここはただの養護施設ではないから。
だから。
沢山スケッチをした。
頭の中に残す為に。心に留めておく為に。
名前を呼ばれてにっこり微笑んだところ。
ミルクを飲んでお腹いっぱいになり満足そうにしているところ。
お気に入りのオモチャを落として泣いてしまったところ。
嫌いなホウレン草のマッシュを食べたくなくてイヤイヤしているところ。
いないいないばぁをされてゲラゲラ笑っているところ。
「…いい子ね、エリン。大好きよ」
穏やかで愛らしい寝顔をスケッチしながらふと手を止めて呟いた。
「…ずっと一緒だからね。忘れないからね」
柔らかい光が射し込む部屋の中で、夢中になって描いた。
「……どうしてもダメなの? ロジャー」
「ここは乳児を預かる施設ではないんだよ。分かっているだろう?」
「…分かってる。でも…あんなに懐いているのに。それに皆あの子を大切に思ってる。とても愛してるわ。あの子も分ってる」
「あの子は君たちとは違うんだ。普通の子だよ。だから普通の生活をさせてやらなければならないんだ」
「ちゃんとした家が必要って事?」
「ここもちゃんとした家だよ」
「…でもパパとママはいない」
「私とマリア、ワイミーさんや他の職員全員が君たちを愛してるし、大切に思ってる」
そうじゃない。皆思ってる。
自分だけを愛してくれる人が欲しいと。
ここではそれは叶わない。
だからこそ、あの子をここに留めるのは良くないのだ。
「…そうね。私達とは違うんだよね……」
リンダは淋しさを隠して微笑んだ。
「…ロジャー?」
「何だい?」
「一つだけお願いがあるの」
「さぁて、どんな事かな? 言ってごらん」
「…あの子…エリンは描いてもいいんでしょ? だってあの子はここの子じゃないもん。あの子はみんなと違う普通の子なんでしょ? だからいいんでしょ?」
すがるような目でロジャーにそう訴えると、彼は優しく微笑み「勿論、構わないよ」と言った。
リンダは絵を描く才能に恵まれていた。
心に浮かんだ事をそのまま表現出来たし、見たものをそっくり写しとる事など朝飯前。その上、以前見たものを寸分違わず紙の上に表す事も出来たのだ。
才能もあったがそんなモノがなかったとしても、彼女はとにかく描く事が大好きで、四六時中何かしら描いていたが、たった一つ描いてはいけないものがあった。
それはここにいる人々。
職員は勿論だったが、特に自分と同じくここで暮らす子供達の姿を、紙に写しとる事は許されていなかった。
ここはただの養護施設ではないから。
だから。
沢山スケッチをした。
頭の中に残す為に。心に留めておく為に。
名前を呼ばれてにっこり微笑んだところ。
ミルクを飲んでお腹いっぱいになり満足そうにしているところ。
お気に入りのオモチャを落として泣いてしまったところ。
嫌いなホウレン草のマッシュを食べたくなくてイヤイヤしているところ。
いないいないばぁをされてゲラゲラ笑っているところ。
「…いい子ね、エリン。大好きよ」
穏やかで愛らしい寝顔をスケッチしながらふと手を止めて呟いた。
「…ずっと一緒だからね。忘れないからね」
柔らかい光が射し込む部屋の中で、夢中になって描いた。