I Say A Little Prayer
◆マット
皆は外に出て行ったようだ。
マットはあたりをキョロキョロと見回し、自分一人なのを確認してから目的の部屋へ近寄った。それからもう一度辺りを見回してからドアノブにそっと手をかけた。そしてゆっくりノブを回して静かにドアを開けると、物音を立てないよう注意しながら中へと体を滑りこませた。
(上手くいった……)
安堵のため息を長く静かにもらしつつ、壁際にあるベビーベッドに目をやった。
(お姫様はお昼寝中ですか……)
それからまた、なるべく音を立てないよう足を忍ばせてベッドまで歩いて行った。
「…やっぱり寝てたね」
中を覗き込んで呟やき、顔をほころばせた。
マットはニアの次位に表情が乏しいと思われているようだったから、彼がこんな表情を見せる事もあるのだと知れば、皆本当に驚くだろう。
ニアは何事にも全くの無表情無関心だったが、マットはそうでもなく、ただあまり大袈裟にしないだけだった。
笑ったりすることはあったが、泣いたり怒ったりという酷く心身を消耗するような感情を表さないようにしていたからだ。
「エネルギーの無駄」などと言っていたが本当は傷つくのが嫌な小心者だった。
自分の本当の気持ちを見せても相手に分かって貰えなかったら?
他の兄弟のように泣いたり怒ったり拗ねたり甘えたり出来なかった。目立たないつまらない子だった。
ベッドには赤ん坊が眠っている。
門の前に置いていかれた可哀想な子。
でも今はみんなが彼女に夢中だ。
「……言ってないからみんな知らないんだけどさ、俺妹が二人いるんだ」
マットはベッドの中ですやすや眠るエリンに、静かに語りかけた。
「赤ん坊の頃よくオムツとか替えてやったし、ミルクも飲ませてやった。ゲップの出し方なんて上手いもんだよ」
薔薇色の柔らかい頬を指先でちょんちょんとつつくと、彼女は目を瞑ったまま口をモグモグと動かした。
「あれ? 夢の中でミルク飲んでんの? 美味しい?」
その仕草が可愛らしくて、マットは思わず頬を弛ませた。
「…可愛いね……何でそんなに……可愛いの?」
ただ眠っているだけなのに。
何故だろう。
何かする訳でもないのに。
幼子は、仕草一つ一つが愛らしさに満ち、見つめる者全ての心を和ませる。
飽きずに暫く寝顔を見つめていた昼下がり。
皆は外に出て行ったようだ。
マットはあたりをキョロキョロと見回し、自分一人なのを確認してから目的の部屋へ近寄った。それからもう一度辺りを見回してからドアノブにそっと手をかけた。そしてゆっくりノブを回して静かにドアを開けると、物音を立てないよう注意しながら中へと体を滑りこませた。
(上手くいった……)
安堵のため息を長く静かにもらしつつ、壁際にあるベビーベッドに目をやった。
(お姫様はお昼寝中ですか……)
それからまた、なるべく音を立てないよう足を忍ばせてベッドまで歩いて行った。
「…やっぱり寝てたね」
中を覗き込んで呟やき、顔をほころばせた。
マットはニアの次位に表情が乏しいと思われているようだったから、彼がこんな表情を見せる事もあるのだと知れば、皆本当に驚くだろう。
ニアは何事にも全くの無表情無関心だったが、マットはそうでもなく、ただあまり大袈裟にしないだけだった。
笑ったりすることはあったが、泣いたり怒ったりという酷く心身を消耗するような感情を表さないようにしていたからだ。
「エネルギーの無駄」などと言っていたが本当は傷つくのが嫌な小心者だった。
自分の本当の気持ちを見せても相手に分かって貰えなかったら?
他の兄弟のように泣いたり怒ったり拗ねたり甘えたり出来なかった。目立たないつまらない子だった。
ベッドには赤ん坊が眠っている。
門の前に置いていかれた可哀想な子。
でも今はみんなが彼女に夢中だ。
「……言ってないからみんな知らないんだけどさ、俺妹が二人いるんだ」
マットはベッドの中ですやすや眠るエリンに、静かに語りかけた。
「赤ん坊の頃よくオムツとか替えてやったし、ミルクも飲ませてやった。ゲップの出し方なんて上手いもんだよ」
薔薇色の柔らかい頬を指先でちょんちょんとつつくと、彼女は目を瞑ったまま口をモグモグと動かした。
「あれ? 夢の中でミルク飲んでんの? 美味しい?」
その仕草が可愛らしくて、マットは思わず頬を弛ませた。
「…可愛いね……何でそんなに……可愛いの?」
ただ眠っているだけなのに。
何故だろう。
何かする訳でもないのに。
幼子は、仕草一つ一つが愛らしさに満ち、見つめる者全ての心を和ませる。
飽きずに暫く寝顔を見つめていた昼下がり。