束の間

 彼女の話を聞いても、にわかには信じられませんでした。一致しすぎて気味が悪いほどなのです。
 彼女は三日前、屋敷の近くの裏通りで仔猫を見つけました。痩せて汚れてとても可哀想な状態で、放っておけばそのまま死んでしまうのではと思い、屋敷に連れ帰りました。
 幸いな事に、屋敷の主と忠実な執事は三日間留守です。三日は誰にもとがめられずに過ごせます。その後は、泣いて頼むかダメなら近所で飼ってもいいという人を見つければいい。
 そうして一日目、二日目と、その猫と一緒に楽しい日々を過ごしたのですが、三日目の朝、今朝の事ですが、目を覚ますとその猫が冷たくなっていたと言うのです。昨日の夜まで、一緒に眠るまであんなに元気だったのに。
 しかし泣いても喚いても、その猫が目を開けることはありませんでした。
 夕方には私たちが帰ってくるので、猫の遺骸を何とかしなければなりません。この屋敷には庭がないので仕方なく、もちろん違法なのは知ってますが、彼女は遺骸をセントラルパークに埋めに行ったそうです。
 そうしてその猫の事を思い出しては泣いているところへ、私とワタリが帰ってきたというわけです。
 
 「どんな猫だったんですか?」
 「オスの仔猫で、全身真っ黒なんですが、後ろ脚二本だけが真っ白で……」
 「名前は付けてたんですか?」
 「はい。その脚が靴下を履いてるみたいで可愛かったので『ソックス』と……」 
 私が見たのは夢ですよね?
 本来なら、この屋敷は人であれ動物であれ何であれ、私の許可なくしてはどんなものも出入り禁止なのですが、そんなことよりこの奇妙な一致は何なんでしょう。
 いや、おかしな点もありますよ。彼女は三日間猫と過ごしているのに、私が夢を見るのに眠っていた時間はせいぜい二時間程度なのです。
 しかし夢の中では確かに三日経っていました(三日目の事は覚えていないのですが)。 彼女はお風呂に一緒に入ったことも、ベッドの上で疲れるまで猫とはしゃいだ事も教えてくれました。私が夢で見た事と、いえ体験した事と全く同じでした。
 こんなおかしな事本当にあるんでしょうか?信じられません。
 話している時に彼女はまた泣きだしてしまいました。猫の、可愛いソックスの事を思い出してしまったようです。
 泣くのをやめさせるのにはどうしたらいいんでしょう?
 言いつけを守らなかったのはもちろんいけない事ですよね。そこは注意しないといけません。
 でもそんなことより今は、彼女を慰める方が大事です。

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