人とポケモン
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…ガチャン、
扉が閉まり、部屋に静寂が訪れる
伊「……」
鞄から一枚の写真を取り出す
これはハナと初めて会って直ぐに撮った写真だ
まだリオルだった頃の俺と小さいハナが写っている
俺は幼少期から執事ポケモンとして育てられた
作法、礼儀、言葉遣い、姿勢、、
厳しい訓練を沢山こなして
俺は何時からか笑わなくなった
けれど、それは寧ろ執事として良いことだった
感情を持たず、淡々と主の世話をする
それが人間の必要とする道具だった
ーー
「お嬢様、こちらの者が今日からお嬢様のお世話を担当させていただきます」
伊「伊吹です、何なりとお申し付けを」
俺は教えられた様に、練習通りの言葉を並べる
それだけだった
ただ、それだけ
それだけだったのに
出会って数日たったある日…
『伊吹!』
伊「何でしょう」
『外で遊びたい!』
伊「では、お庭に参りましょうか」
『お庭じゃなくて!お屋敷の外!』
伊「駄目です、外は危険です」
『えー、伊吹も皆とおんなじ事言うー』
伊「えー、じゃありません
お庭で遊んでください」
『ぶー、けち』
伊「……」
次の日も
『ねぇー伊吹』
伊「何でしょう?」
『外に出たいでごさる』
伊「駄目です、あと10分でレッスンです」
『レッスンなんか知らない、なにそれ美味しいの?』
次の日も
『いーぶきっ』
伊「まーきのっみたいに呼ばないでください、何ですか?」
『メントス増し増しコーラ、口で受け止められるか選手権したい』
伊「駄目です」
次の日も
『伊吹さんやぁ』
伊「何でしょう、お嬢様」
『リアルス☆ッシュブラザ○ズがしたい』
伊「お屋敷破壊する気ですか?止めてください」
次の日も……
そんな攻防戦が続いた
そして出会って2ヶ月が過ぎた
『HEY,伊吹』
伊「何でしょう」
『三階の窓から脱出する方法を教えて!』
伊「それはお答えいたしかねます」
『えー、じゃあいいもん
私一人でやっちゃうもんねー
…えっと、ロープ!ロープ、ロープ』
伊「………」
この人は本当に王家の家系の貴族の令嬢なのだろうか
王家の家系の、しかも一人娘となれば相当な教養を身に付けさせられるだろう
『あ、あった!あった!』
伊「…お嬢様は何故、」
『んー?』
伊「何故そんなにも自由に振る舞われるのですか?」
『んー、そうしてないとやってらんないから?…できた!できた!』
伊「そうですか…あと執事の前で脱走しようとするのは無理があると思います」
『?伊吹も一緒に行くんだよ?…ってか、下プールだからロープ要らないか」
伊「なに言ってるんですか、行くわけ無いじゃないですか…飛び込むのは危ないので止めてください」
『えー…それにさ、お母さんが言ってくれたからさ』
伊「…?」
『自由に自分の道を進みなさいって』
そういうとお嬢様は窓から飛び降りた
伊「!?お嬢様!!」
窓から下を見ると
『ぷはぁ、なにこれ超楽しい!!
伊吹もおいで!!』
お嬢様はプールでプカプカ浮いていた
良かった
これで何かあったら、俺の首が物理的に飛びかねない
伊「…はぁ、危ないから止めてくださいって言いましたよね?」
『えー?聞こえなーい!』
伊「大声だしたらバレますよ…」
『はーやーく!おいでよ!!』
伊「早く上がってきてください、風邪引きます」
『あー!もしかして怖い?怖いんだったら普通に階段で降りてきてもいいよ!』
伊「…怖くなんかありませんよ」
『えー?何ー?』
伊「怖くなんかない!!」
俺は窓から飛び出した
その浮遊感はまるで、今までの苦しみから解放されるようだった
ザッブン!!
伊「ぷはっ、」
お嬢様は俺が突然飛び降りたので驚かれたのか、目を零れ落ちそうなくらい大きく見開いていた
伊「怖いわけ…無いじゃないですか…」
『…ぷっ、あははははは』
伊「…何笑ってるんですか」
『だって、伊吹の髪…ぺっちゃんこ…あははははははは』
伊「それなら、お嬢様だって、ふっ、ふふふふふふふ」
何故か、笑いが込み上げてきた
『まって、何その笑い方wwww』
伊「んふふふふふふふふふふ」
久しぶりだ
久しぶり過ぎて笑い方が可笑しすぎる
『止めてww』
伊「ふふふふふふふふふふ」
『もういいってww
…はー、こんなに笑ったの久しぶりかも』
伊「…俺もです」
『あ、俺っていった!』
伊「!失礼しました」
『いいよ!むしろウェルカムだよ!
あ、敬語も止めよ?』
伊「しかし、私は執事ですので、」
『やーだ、これは命令!
これからは私の友達兼執事!!』
伊「分かりました…」
『ほら、敬語!!』
伊「わ、分かった…」
『うん!その方がいい!
それに、仏頂面よりさっきみたいに笑ってた方がいいよ!!』
伊「…善処する」
「「「お嬢様!!!」」」
『げ』
伊「…こっちだ」
『伊吹…いいの?』
伊「…今は友達の俺だ」
『ふふっ、流石私の友達兼執事!』
その日は1日中、屋敷の者たちから逃げた
帰ったとき、大勢の執事やメイドに叱られたのは言うまでもない
ーー