それぞれ既存メンバーも自己紹介をし、その後はいつもの進捗報告をした後に解散となった。

椋太が席を立つと、タイミングを見計らったかのようにいつのまにか小原が背後に立っていた。

「小原、さん」
「小原でいいですよ、白井さん」

（いや、確か……小原さんのほうが年上だったか？）

「同い年ですし」
「はあ……」

こちらの考えを読んだかのような言葉に、少したじろいだ。

「それであれば俺のことも白井で」
「いえ、僕は“癖”でさん付けしてしまうので」
「……では、小原さん呼びでいいんじゃないでしょうか」

妙に引っかかる言い方に調子を崩され、どういうトーンで話していいのか戸惑う。

（うーん、なんというか……リズムが違うというか。……嫌味ってほどではないんだけど。あまり触れないタイプだ）

何を考えてるのか解りづらいのは、椋太が苦手とするタイプだった。

「気にされず、お好きなように。ところで、早速現状を把握したいので小一時間ほどお時間を頂きたいのですが」

小原の切り返しの速さに、ペースに飲み込まれかけていた椋太も我に返る。

「ええ、準備は既にしていますのでいつでも問題ないです。スケジュールの空いているところを押さえてもいいですか？」
「問題ないです。何なら今からでも。……あ、2号室が空いてますね」

その場でサクサクとスマホで場所を予約する様をみると、やはり仕事ができるなと感じさせられる。

（スピード感が早いのは仕事ができる第一条件……さすがだな、開発営業部のエースは。気をうっかり抜くともっていかれそうだ）

ただでさえペースが掴みづらい相手で、かつ同じ営業とはいえ他部署のエース。
おちおちしていられない、と気を引き締めるのだった。