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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

「あっ、俺もういかなくちゃっ」
「ああ、リアライザ様訪問だったか。……慌てて転ぶなよ?」

落ち着きのない仕草で腕時計を見る後輩に、心持ち心配になって声をかける。

「子供じゃないッスよ~~!きっちり取ってきますッ」
「水瀬なら大丈夫だよ、がんばれ~~」

慌てて飛び出していく後輩に小さく笑いながら手を振る。
すると、強い視線を感じて振り返った。

「……澤村?」

上から睨みつけるような視線に、何か怒らせるようなことがあったかと怪訝な顔で椋太は澤村を見つめる。

「白井さん」
「ん?」

ふう、とため息をつかれる。

「……水瀬さんと、距離が、近い」
「ぶっ」

相変わらずな無表情ながら、拗ねたように少し横を向く姿は図体の大きさとギャップがある。

付き合い始めてから澤村は、こうして少しだけ椋太に対しては甘えのようなものが見えるようになった。
とはいえ、相変わらずの強面なためあまり周りには気づかれていないようだったが。

「まあ、水瀬は新卒で入ってきた頃から俺が指導してきたからな。可愛がるのは当たり前だ」

プロジェクトでも同じ営業畑からは水瀬と椋太の二人だけというのもあり、密に仕事をしていて思い入れも深い。
さらに人懐っこい性格は誰にも好かれ、椋太を慕いながらぐんぐん吸収して成長していく後輩は他の後輩と平等にと気をつけつつも、どうしても贔屓目で見てしまうのは否めない。

「……そうか」

澤村は納得したように、あっさりといつもの表情に戻る。
こういうときは合理的だなと思いつつも、もう少し可愛いところを見せてもいいのに、とややがっかりする。

(って……なに甘えた事考えてるんだ)

澤村と話していると、つい気が緩んでしまう。
自分に喝をいれるため、パンっと一回頬を両手で叩くと、よし。と声に出して気持ちを切り替える。

「さて、仕事するぞ。澤村もさっさとバイク止めてこい。俺も朝飯買ってオフィスいくわ。お先~」

振り向かずに手をふりながら行く予定だったカフェへと向かう。
取り残された澤村は、その後姿をずっと見つめていた。

(ちょっち気合い入れ直さないとな。まじ気ィ緩んでるわ……職場ではあんまべったり見えないようにしないと)

つい恋人モード的な思考に陥ったことを恥じつつ、気合を入れ直す椋太だった。
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