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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

システム開発も佳境へと進みつつあるある日。
すでに契約を結ぶことが確定している会社へ、進捗報告のために椋太は相手方のオフィスへと訪れていた。

普段椋太一人または後輩を伴っての訪問となるが、今回はシステムに関する突っ込んだ話が必要となるため、開発リーダーである澤村も同席することとなった。

「………と、いいますと……」
「白井さん達には本当に迷惑をかけるとは思うが……どうしてもこの機能が初期リリースで実装されていないと困るという話になりまして」

進捗を報告してすんなりと帰れる、打ち合わせの後のランチは何にしようとまで考えていた矢先に、爆弾を投げ込まれたのだった。

「正直今の納期では実現は厳しいと思います」
「お、おいっ……」

澤村が言葉を濁さずストレートに突き放すのを慌てて遮る。
もちろん椋太とて、この無茶な状況をすんなりと受け入れるわけにはいかなかったが、訪問中の会社はかなりの大口の顧客。
へそを曲げられても困るため判断は慎重を期す必要があった。

とはいえ、クライアントに頭を下げる事が主軸となる営業にとっては言いづらいことを、ストレートに代弁してくれたというのは少しだけありがたかった。

「いや、澤村さんの言うこともわかりますよ、私も無茶だなとは思っています」
「浅岡さん……」

先方の人材管理担当である浅岡も、心底申し訳なさそうな表情を浮かべている。

「とりあえず、どういった状況かおきかせ頂いても問題ないですか」

隣りにいる澤村も頭をこくりと下げる。

「ええ、もちろんです」

少しだけ安堵したような顔をすると、浅岡は話し始めた。

小1時間ほど話を聞くと、先方のどうしようもない事情の把握から、ある程度は納期を調整すること等の相談もありつつ、明確な回答については一旦会社に持ち帰って検討することになった。

「ふう……さっきは焦った。でも、サンキューな。やっぱ開発担当が言ってくれたほうがわかりやすいから」

先方のオフィスを出て駅へと歩く道すがら、軽く礼を言う。

「いえ、別に」

ストンと会話を切られる。
まるで最初に会ったばかりの頃のようだった。

目を見て話すこともしない澤村に、椋太はもやもやを通り越して焦れはじめる。

「――あのさ」
「はい」
「俺のことムカつくでもなんでもいーけど、仕事のことはもうちっとうまく話さないか?」

思わず言ってしまってから、これでは逆ギレだと一瞬で青ざめる。

「ってごめん、何いってんだろ。仕事がヤバいからちょっと当たった、スマン」
「いや……そんなことは、ない」
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