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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

「ここの仕様、途中で確認画面を挟んだほうがいいと思うんだが」
「あー……確かになァ。ついポポンって勢いで押しちゃいそーだしな人によっては」

澤村のもっともな指摘と提案に納得していると、ふ、と息を漏らすように笑われた。

「なんだ、おかしいこと言ったかよ」
「いや、あんたたまに変な効果音挟むよな」

顔が一気に熱くなる気がしたが平静を装う。

(余計なトコつっこむなっつーの、恥ズいだろーが……)

椋太が顔をこすると、ブー、ブーというバイブ音が響いた。
つい仕事に熱中しがちな椋太が仕掛けたランチの時間をしらせるアラームだ。

「あーもうこんな時間か。昼メシでもいくか?」

腕時計を見ながら顔をあげると、澤村は静かに答えた。

「いや、もう買ってあるから」
「そうか、残念。まあまた今度」
「続きは1時間後でいいか、またあとで来る」
「ああ、悪いな。じゃあちゃっちゃと飯ってくるわ」
「ああ」

未練の欠片も見えないあっさりとした態度で澤村は自分のデスクに戻っていく。

あの告白の後も澤村は仕事上ではそこそこ打ち解けた同僚としての態度は変わらなかった。
ただこうして食事に誘っても断られたりと何となしに壁が作られている気がする。

エレベータのボタンを押すと浮遊感を伴いながら滑らかにすべり降りていく。
ランチタイムをずらしたせいか閑散としたボックス内は静かで、思考がするすると流れていった。

(やりにくいから壁作ってる、って感じでもないんだよな……。どちらかというと……興味が、ない)

結論を導き出すと、ちくりと胸に刺さる棘のような痛みと、不明瞭な哀感に覆われた。

(って、なんでがっかりしてンだよ)

そう自分を茶化してみても、罪悪感のような鬱々とした気持ちが消えずに浮遊する。
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