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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

澤村は深くため息を吐き出すと、続けた。

「……アンタは女性が好きなんだろう、不思議に思うかもしれないが。俺は恋愛対象として、アンタのことが好きだ」

身体を少し起こすと、はっきりと椋太の目を見つめながら言い切る。

「好きなのは男女関係ないだろ」
「そ、だけ、ど……」

強く射抜くような眼差しに、ごくりと息を飲み込む。
妙に冷静な澤村に対して、椋太は怯まないように答えるのが精一杯だった。

椋太は自分が異性に好かれる自覚はあり、女性には思いを告げられることに慣れていたが、男から口説かれるようなことはもちろん初めてだった。

突然自分よりも体格の良い同性に好かれることは、少しだけ恐怖を覚える。
なぜ、自分が、どうして、という言葉が頭のなかで過っては落ちていく。

「怖がらせるつもりは、なかった。いきなり言われたら、怖い、よな」

じっと息を殺すようにしていると、澤村が何時もより瞬きが多く、椋太を掴んだ手に汗が滲んていることに気づいた。
時折震えるように目が揺れる様子から、澤村なりに椋太を慮り、緊張しているのかと思うと、少しだけ緊張が解ける。

(……俺のこと、好き、なのか……)

じわじわと実感が湧いてくると、恐怖感はすっかり鳴りを潜め、少しづつ落ち着きを取り戻してくる。

(澤村は……真面目な、やつだ。澤村なりに、色々考えた上で――伝えてくれたんだろう)

そう考えると、少しだけ可愛く思えてくる。

(でも……俺は………恋愛対象は、女性だ。
そりゃあ恋人には振られたばかりだけど……。ああ、今はそんなことどうでもいい。
なんだ、その。セックスの相手としても考えているってことだろう?)

改めて考えてみると、そういう綺麗事ではないのだと思い知らされる。
しかし、そういうことに対して嫌悪感があるのかと聞かれたら、あまり実感がないというほうが正しかった。

女性とは当たり前に肌を合わせていたのだったが、まるでイメージができないのだ。
当たり前といえば当たり前と言えたが。

その後も澤村が何も言わないことをいいことに、いろいろと椋太は考える。
しかし、考えても考えても、答えはわからなかった。
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