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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

新しくアサインされた小原もようやく椋太たちのプロジェクトに合流し、本格的に動き始めた。
水瀬には既存のクライアントを任せ、小原とは新規当たり先を模索する。

「とりあえずこの前お話頂いた方向性で、軽く顧客リストを作成してみたので確認してもらえますか?」

同じフロアに引っ越ししてきたと同時に、すでに仕事に着手しているというスピード感に椋太も舌を巻く。

「早いですね、ありがとうございます。少し水瀬と部長も含めて3人で打ち合わせしましょうか」
「では空いているところどこでも構いませんのでお願いします」
「はい」

小原は自分なりの資料の確認や修正、必要なものの洗い出しをしているらしい。

(無駄がないな……付き合いづらそうとはいえ、これは異論も何もない)

たまに二人で話していると妙に絡んでくる時があることは気になったが、仕事はきっちりとこなしてくれるどころか、かなり椋太の手も楽になりそうな雰囲気でありがたかった。

「水瀬、聞いていたな。チャットで部長にも連絡いれるから、とりあえず資料をノートに入れた状態で来て欲しい」
「了解っス~」

後輩の大げさに敬礼する姿は微笑ましく、小原との重い空気感の間にある一服の清涼剤とも言えた。

(本当は苦手意識を持ってはいけないんだけどな、まだまだだな俺も)

明らかに緊張感が抜けない自分に、少し苦笑する。

リリース後、本格的に始動してからはチームもフロアの異なる澤村と触れ合う機会も大分減ってしまった。
そんなのに影響を受けていてはサラリーマンとしては如何なものかとは椋太も自覚していたが、とはいえテンションが上がりきらないのは否めなかった。

(それだけ……なんだかんだで、澤村の存在に助けられていたんだな)

未だに会えば互いに減らず口も多い仲だったが、不在かつ苦手な人物と密に接しているからこそ感じる。

(仕事として頼り切ったり、人として甘えるつもりも毛頭ないが、心の支えにはなっていたんだな……)

ふと椋太の心に寂しさが吹き抜ける。
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