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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

顔合わせの翌日から、プロジェクトは本格的にスタートをした。

クラウドでのシフト管理システムの構築と、販売。
実際に使うであろうクライアントの希望する機能や、彼らが本当に使ってくれるのかが重要ということもあり、企画とともに、営業である椋太たちもプロジェクトの主軸となって動いていた。

ある程度仕様を企画・営業にて固め、システム・デザインで検討を繰り返す。
その間に何度も椋太と澤村は衝突を繰り返しながらも、良いシステムにしようとそれぞれが一つの目標に向かって走っていった。

そうして事業部からの承認をもらい、あとは開発するだけとなった頃――。

「どうしてもこの機能を入れたいんだよ。そりゃあ要件がほぼ確定している状態でねじ込むのはホント申し訳ないンだけどさ……」

本当に申し訳ない、と椋太が土下座レベルの深いお辞儀をすると、それを見ていた澤村が薄くため息をついた。

「ほぼじゃなくて、確定」

(今そこ突っ込むところかよ……っ)

「すでに設計ははじめている」
「重々承知していますし、システムの皆さんにはご迷惑かけて本当に申し訳ないと思ってます。
けどどうしても必要な理由がありまして……ちょっとだけ説明させてください」

澤村の無意識に煽るような態度に苛立ちが募る。
しかし、自分たちが悪いのはわかっていたため、懸命にぎくしゃくとしながらも笑顔を作った。

プロジェクトメンバーはいつものやり取りだなあと苦笑しながらも、自分たちの業務範囲にも関わる部分ということでなんとなく聞き耳を立てているようだった。

「前回出ていた懸念点について、気になってクライアントからのアンケートを再取得したところ……」

どういった理由で必要なのか、クライアントからのアンケートの結果などを並べながら説明を続ける。
5分ほど説明したところで、澤村が口を挟んだ。

「これだけ結果は出てるし、おそらく主要取引先になるメルサイトさんがそういってるのであればそうなんだろ。これも設計に含められるかすぐに検討する」

詳細の仕様書をすぐ頼む、と続ける。

「恩に着るッ本当にすまない……。マジ助かる!!!!」

イヤッホー、と声を上げながら椋太が澤村の腕をつかむと、彼の腕がビクりと震えた。

「あ、ごめん……つい嬉しくって。どうしてもこれだけは……あるとないとじゃ、クライアントの反応も全く違うと思って」

(やべ、馴れ馴れしすぎたか……?
とはいえ、振り払われるわけでもないし、こんくらいのスキンシップはこいつもOKなのかな)
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