毎日会えるBLノベルができるまで。「なまほれ」編
#6 表紙イラストの発注から制作まで
こんにちは、“なまほれ”こと『生意気な年下にうっかり惚れられまして。』の柚木ちとせです。
前回のメイキングでは、「#5 10話までを振り返って」についてお話しました。
今回は「表紙イラストの発注から制作まで」についてお話したいと思います。
いよいよ、満を持してというテーマです。
小説のメイキングもずっとやっていると飽きてくるころでしょう、ここは華やかなイラストを見たいところです(特に私が)。
本作の表紙は、イラストをまちや真智先生、デザインをまるいハコ先生に担当していただきました。
急な連載となったため、あまり工数が避けられない中にも関わらず、イメージ通りのとても素晴らしい表紙となりました。
この場をお借りして、改めてありがとうございますと感謝の気持ちを述べたいと思います。
さてさて、どういった流れでお願いしたかというと、下記の手順となります。
これは、書籍の表紙、挿絵とはまた異なる形ですので、アマチュアで作品を発表している方が依頼するときの参考などにはなるかもしれません。
どちらかというとノウハウと言うよりは裏話として聞いていただけますと幸いです。
- イメージをわかりやすくまとめ、伝える
- ラフ作成、確認
- 線画作成、確認
- 着彩、確認
- デザインイメージを伝える
- デザイン、確認
ポイントとして一番大事なのは、「相互のイメージ共有」です。
自分の脳内にあるイメージを他人に伝えるというのは大変です。
また、受け取る側も同じイメージをすることは大変難しいです。
お互いに可能な限り同じものを想像できる状態にするため、しっかりとイメージを伝える資料を用意することが大切です。
イメージをわかりやすくまとめ、伝える
今回、キャラクターや絵のタッチが分かるような依頼書を作成しました。
ただし今回はとにかく時間がなかったので、かなり端折った内容になっていますが、ポイントは押さえているかと思います。
また、依頼書をPowerPointで作成していますが、手書きでもWordでも、自分が作りやすい方法で作って頂ければ問題無いかと思います。
とにかく伝わればよいので……
ここで伝えたのは下記ポイントです。
すべてテキストだけでも構いませんが、可能ならイメージに沿ったイラストなどを添付するとよりわかりやすいです。
- 画像サイズや解像度などの仕様
- バストアップか、顔は正面むけるのなどキャラのポーズの仕様
- キャラクター表、プロット
- キャラの外見のイメージ
- イメージする絵柄や塗り
モザイク部分はイメージの共有をするため、実際に販売されているBLコミックスの表紙などのイメージ画像を貼り付けており、著作権上の関係でモザイクをかけさせていただきました。
実はこのイラストが重要で、考えているイメージが一発で伝わりやすいのです。
※丸ごと構図や絵をパクれという意図(だめですよ!)ではなく雰囲気を伝える為ですので、イメージに沿ったものを複数枚共有しています。
また、今回は私が落描き程度に絵も嗜むため、キャラデザの傾向を軽く絵に落として、こちらも添付しました。
お陰でイメージがしやすかったとのことで良かったです。
キャラ表を添付しているのは、イラストレーターさん側も、どういう性格をしているのかがわかると、イラストのイメージが掴みやすいからです。
実際にラフ作成時には、キャラの性格を考えながらポーズを作成していただけました。
依頼書を受け取った時の印象を、まちや真智先生にお伺い致しました。
―依頼書を見てどう感じたか、キャラデザを作る時どうしていったかを教えてください。
まちや真智先生:タイトルをうかがって、これはラブコメ風……!と自分の中の方向性はすぐに決まりました。
キャラデザに関しても、もともと依頼書に外見の特徴について細かく記載があり、キャラのイメージラフも用意して頂いていたのでほぼ決め撃ちで(笑)迷わず描きましたし、リテイクも出ず大変ありがたかったです…!
受け取ったイメージを崩さないようにというのを第一に心掛けつつ、リーマンBLを意識して面長な印象を加えながら自分の絵柄に落とし込んでいった感じです。
髪型や目の印象、表情のつけ方まで見事に真逆な設定の2キャラでしたので、そこはぜひ生かしていきたいな~と思いながら描いた記憶があります。
ラフ作成、確認
今回イラストを担当してくださっているまちや真智先生より、ラフを2つイメージ頂きました。
こちらも私が話すよりはとお伺いしました。
―ポーズはどういうイメージで2種類作ったか、どういう部分を出したかったか等を教えてください。
まちや真智先生:ポーズラフ1案目はタイトルをそのまま表現したいな、と作成しました。
攻のまっすぐで鋭い視線に、受くんはたじたじだけど笑顔を貼りつけて余裕ぶってる、という……!
攻の子の「失礼っぽい雰囲気」「何考えてるかわからない」を出せたらと思い、無表情の割には腰を抱いて好意全開!にしました。
2案目については、イラストを使って登場人物紹介のアイコンも作成するとうかがっていたので、二人とも正面のパターンです。ネクタイを引っ張ってフフンと優位に立っている受、無表情でガン見する攻です。
2案を提出したところ、1案目が通ったので自分としてもワーイと思いました(笑)。
(のちに攻くんはスーツを着ないということが判明したので、2案はどちらにしろお蔵入りだったかもしれません……!)
イメージ通りを超えて、「これだよこれ!」というポーズを出してもらえてとても興奮しました。
やはりこうしてイメージを膨らませてくれるイラストレーターさんは本当に素晴らしいと思います。
線画作成、着彩
ラフはどちらかというとポーズの雰囲気メインでしたので、線画にてガッツリとキャラデザインを固めて頂きました。
また、伝えそびれていましたが、今回は横長の「BaLoon」表紙画像などの他に、もしかしたら縦でも使うかもということで、イラスト自体はすこし大きめに描いてもらっています。
手元までしっかり見える絵は今回が初だしになるかと思います。
大型わんこに懐かれて困っている感じがとても良く出ています……。まちや真智先生は、表情やポーズからキャラクターの行動が想像できる絵を描かれるので、自分が生み出したキャラなのに大変萌えさせて頂きました。
線も大変美しく、ものすごいスピードで描いたとは思えない仕上がりでした。
というわけで文句なく一発OKでしたので、そのまま着彩に進んで頂きました。
着彩では、時間短縮のためアニメ塗り基本かつ、パキっと今風の、でもいかにもボーイズラブっぽい感じにしてもらいました。
小説の作風もそうですが、イラストでも星野しの先生×嘉瑞チカ先生の表紙とはあえてイメージががっつり異なる形にして頂いています。
それぞれの個性をより強調した形という方向性です。
もともとそれぞれイメージする雰囲気が近いイラストレーター様にお願いしてはいるのですが、より伝えたい部分を明確化することは大切かと思います。
―線画、塗りについて、どういうところを意識したかを教えてください。
まちや真智先生:線画に入る段階で攻の澤村くんがスーツを着ないと知りまして、Tシャツではリーマン感が薄いかなと思い、同じ職場で働いている雰囲気を出すために首からさげる社員証を追加しています。
塗りはパッと目に留まるようなコントラストと透明感を意識しました。
かなり時間がない中での制作でしたので詳細を描き込むことは難しかったのですが、全体的な印象としてメリハリがついているように見えればいいなと思っております……!
表紙・バナー・登場人物紹介などのデザイン
ここからは、デザイン担当のまるいハコ先生の出番です。
イメージ通りのイラストが仕上がった後、ロゴデザインや背景などデザインを入れて頂きました。
デザインの依頼については、イラストを依頼する時の依頼書内に同じくデザインについても書いていますので画像を参照いただきつつ、ロゴのイメージや雰囲気をお伝えして作って頂きました。
今回は古き良きBLらしいBLかつ、王道ジャンル、王道カップリングを意識しているので、表紙の印象としては、今風にオシャレでかっこいい感じとお伝えし、その方向性でまとめて頂いています。
さて、ここでもまるいハコ先生にデザインについてお伺いしました。
デザイナーさんのお話はなかなか珍しいと思うのですが、デザインについてもイメージやかっこよさなどだけでなく、キャラや物語を意識したデザインを考えておられ、とても感慨深かかったです。
―ロゴデザインする時に意識したことを教えてください。
まるいハコ先生:ちょっとコミカルなタイトルなのでカラーで目にガツンと入ってくるように意識しました。
でもリーマンなちょっと大人な雰囲気だけは残したかったので、フォントはあまり派手すぎないものを採用しました。
―ロゴを配置したときの構図で意識したことを教えてください。
まるいハコ先生:ロゴより先にイラストが出来ていたので見た瞬間、配置は決まりました。
受けはやはり壁側に押し付けられて欲しいという願望を表現できていればうれしいです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
こうして素晴らしい表紙イラストは作られました。
最後に、改めてイラストレーターのまちや真智先生、デザイナーのまるいハコ先生からコメントを頂いているのでご紹介します。
まちや真智先生:小説は隔日の更新ということで、個人的にも楽しみにチェックしています。がんばれ澤村くん……!
表紙(?)のイラストで、視覚的に萌えのサポートが出来ていたら嬉しく思います。
まるいハコ先生:最初は白井くんの世界なのが、どんどん澤村くんの世界がずぶずぶと入っていく感じが好きです。
楽しみにしています!
お二人による表紙がなかったら、読み手側もすんなりと作品には入れなかったのではないかと思います。
それだけ表紙イラストには、伝わるイメージと大切な要素がたくさん詰まっています。
改めてまちや真智先生、まるいハコ先生、ありがとうございました。
次回は「オフィスラブというジャンル」について話したいと思います。