Vol.2 吾妻香夜先生
―続いて、創作に関するご質問です。先生が漫画を描く際の手順をお伺いできますか?
吾妻先生:メモ書きやプロット~仕上げまで全てデジタルでの作業なので、作業工程で紙に残るものはありません。
①担当さんに提出したプロット(おおまかなプロットだったり起承転結詳細だったり作品によっていろいろ)をもとに、メモ帳ツールに全セリフを打ち込む
②コマ割りと絵を想像しながら先にだいたいの場所にセリフを配置
③セリフに合わせてコマ割り、ラフを描き込む(ネーム)
④下描き、ペン入れ、仕上げ
おおまかな流れは変わりませんが、ネーム~下描きの間でセリフの訂正やコマ運び等は結構変わります。
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―はじめにセリフを配置していくって、珍しいですよね。
吾妻先生:このやり方は今までも人に話すと「意味が分からん」と言われてきたのですが、私の場合、全体のページ数を把握するには全セリフを配置してからのほうが手っ取り済むんです。
これは尺が足りなくなったらドラッグでページを移動してテキストコピペして…という具合に修正が利くデジタルでしか出来ない方法だと思います。なので、アナログで1本描けと言われたら掛かる時間が今の倍どころじゃなくなると思います…。
―漫画を描く上での先生なりのこだわりは何ですか?
吾妻先生:読んでいて躓かないテンポ、全体の絵の見やすさ、読みやすさを重視することです。
―その点について、作業中に意識していることはありますか?
吾妻先生:1ページ仕上げるごとに頭から読み返すことです。コマ割りのテンポに関してはネームの時点で大体決まっているのですが、フキダシの位置とかは後で調整することもあります。あと絵のノリがあってるかどうかとか。
決めゴマはそれなりの絵(主に顔)を描きますが、それ以外のちょっとコメディっぽいところなんかは簡単な顔(なんていえばいいのか…)にして描くじゃないですか?あの簡単な顔が続きすぎないようにするとか…。
―ページの中でのメリハリも都度読み返して確認するというような。
吾妻先生:そうですね!何度も読み返すことです。読み返し過ぎて面白いのかどうかわからなくなってくる弊害もあるんですが…。
―参考にすることの多い資料などはありますか?
吾妻先生:現在連載中の『ラムスプリンガの情景』では海外の民族史に触れるので、書籍や海外の写真集を資料にしています。
―『ラムスプリンガの情景』はそうした資料からインスピレーションを受けストーリーが出来上がったのでしょうか?
吾妻先生:アーミッシュのラムスプリンガという風習を知ったその時に「これはアツい」と思いそこから…という流れなので、同時に決まったようなものだと思います。
―1年だけ俗世を経験する件の風習、確かにアツいですよね…(笑) でもそこからBLで物語がひとつできるってすごい!
吾妻先生:アツイです。(笑) それをすぐBLに変換してしまうところが腐女子の業でしかないのですが。
話を作る上で、アーミッシュの子の方に焦点を当てすぎるとあまりよくないと思ったので、主にもう一人の受けの子の方が主人公になってます。