Vol.5 三七十先生
―続いて、ストーリーやキャラクターのアイデアの源泉について教えてください。
三七十先生:自分の中に溜まっている日々の好きなもの(マンガや映像、音楽などなど)と、自分の感情や周囲の出来事が上手い具合に化学反応を起こしてくれた時に妄想がぶわっと広がることが多いです。
あと、担当さんとの打ち合わせの何気ない雑談の中から「それですよ!!」とお互いが膝を叩くこともたくさんあります。
「あ、何かに使えそう」と思ったことがあったり思い浮かんだらすぐにメモするようにしています。
―物語を考えるにあたってのこだわりは何ですか?
三七十先生:読者さんへの良い意味での裏切りを仕掛けられたらいいなぁ、と思っています。
―そのこだわりの中で、先生が意識していることなどを教えてください。
三七十先生:ラピスの中でワクワク仕掛けていたことは、伏線を張ることやちょっとしたミスリードの他に、電子の単話配信だった為に「え!ここで終わるの!続きどうなんの!」と思っていただけるような『引き』ですね。
あとは、鉱石ラピスラズリに関係する単語を作品の中に登場させたりしています。
また、「読者さんはきっとこんな風に今後を予想するだろうから、ちょっと逸れたルートも通ってみたいなぁ」という思いも随所で反映させました。
―そうした仕掛けのために、自身の作品を客観的に(読者の目線で)見るコツなどはありますか?
三七十先生:私自身も客観的に自分の作品を見るということはとても苦手だったのですが(感情で描くタイプなので)、『どの情報を読者さんに伝えるべきか』『分かっていただくべきポイントはどこか』を押さえられるようになってからはグンと客観的に見られるようになったと思っています。
キャラクターや演出ももちろんとても大事なのですが、『情報整理』という感覚でストーリーの各所をとらえていくと自分の伝えたいこともグッと伝えやすくなるのではないかなぁと。
あとは、映像作品などを観る時に、「あ、今のシーンはこの情報のターンだ」とどういった意味を持ったシーンなのか考えるようにしています。
―先生の作品が出来上がるまでの過程を教えてください。
三七十先生:粗筋→プロット(シナリオ)→ページ割→ネーム兼下書き→ペン入れ→ベタ・トーン処理(同時)という感じで、ペン入れからデジタル、それより前の工程はアナログです。
Copyright © eBOOK Initiative Japan Co.,Ltd.
―プロットを立てる上で気を付けていることは何ですか?
三七十先生:セリフのリズムやニュアンスでしょうか。同じ意味合いでも自分の中でしっくりこなかったら何度も書き直しています。
あとは、担当さんにお見せするものなので、担当さんにも分かっていただけるようにというのはすごく気を付けています!
自分の頭の中のイメージを出来る限りお伝えする作業でもあるので。
―漫画を描く上での先生なりのこだわりは何ですか?
三七十先生:下記のように、いくつかあります。
・キャラクターの表情
・キャラクターの動きの流れ
・そのキャラらしい仕草になっているか
・テンポ
・話に合わせて画面の明るさを調整
キャラクターの表情は特に意識して描いています。
一番感情が入り込みやすいネームから表情は描きこんでいて、仕上げの時に更に調整しています。
テンポも個人的にこだわっているものの一つでして、ネームを描いてちょっと前から読んで違和感があったら直しています。
コマ割りだったりフキダシの位置だったりセリフのリズムだったりと、説明しづらいのですが。