Vol.14 宮緒葵先生
―語彙や表現の磨き方、言葉選びのポイントなどはありますか?
宮緒先生:語彙や表現は、様々なジャンルの本を読むことによって自然と増えていくので、あとは意識して他人の話し方を聞き取るようにしています。テレビ番組のタレントさんとか、外に出ればお店の店員さんとか、お客さんとか。自分とは違う立場や年代の方々の話し方を覚えておくと、キャラの表現に深みと説得力が出ます。
あとは、時々、今の自分の状況を三行以内の文章で説明する練習をしています。
たとえば買い物へ行ったら、
『このスーパーに来たのは久しぶりだ。平日の昼間だから空いているだろうと思ったのに、家族連れで混み合っていて驚いた。特売品のコーナーには美味しそうなお弁当がいつもよりたくさん並び、「夏休みのお昼に」とポップが立てられている。そうか、もう夏休みに入っていたのか。』
みたいな感じで。適切な長さの説明が出来るようになっていきます。
言葉選びについては、BLはファンタジーや時代ものなども多いのですが、その世界観に合わない言葉や表現は使わないように心がけています。たとえばファンタジーの世界では『一回り上』という表現を使わないとか(ファンタジー世界に干支は存在しないので)。現代もの以外のお話を書く際には特に、語源を調べてから使うようにしています。
―世界観によって地の文も変わってくるというのは、非常に目から鱗でした!
宮緒先生:そうおっしゃって頂けると嬉しいです。
世界観によって地の文を変える、というより、世界観に地の文を合わせる、という方が正しいかもしれません。世界観にそぐわない文章だと、読者さんをお話の世界に引き込めなくなってしまいますから。
―読む側として今まであまり意識したことがなかったので、とても新鮮でした。
宮緒先生:いえ、読む側は意識する必要は無いんですよ。読者さんはあくまで、物語の世界に招待されたお客様ですから、お客様が居心地よく過ごせるようおもてなしをするのは書き手の役割なので。
お上手な書き手さんほど、読者さんに意識させず、物語の世界に引き込めていると思います。たとえばファンタジーでも、独特の設定をいちいちくどくどと行数を割いて説明することなく、お話を読み進めていくうちに自然と理解出来るようになっているとか。
―BLってファンタジーからSF、エンタメ系など本当に幅が広くて、いろいろな世界観を楽しむことができる夢のようなジャンルですよね。
宮緒先生:これほどたくさんの世界観を楽しめるジャンルはBLくらいだと思いますよ。いくら読んでも飽きません。
―ジャンルと言いますと、先生は最近時代ものを書かれることが多いとのことですが、こちらはもともとお好きだったのですか?
宮緒先生:はい。うちは共働きで、母が居ない間は祖母が来てくれたのですが、その祖母が時代劇大好きだったので、よく一緒に見ていたので自然と好きになりました。
あとはご先祖様が旗本だったので、時代ものに親近感を抱いていたのもありますね。
―幼い頃に吸収したものって、成長してからもずっと自分の核の部分に残っていたりすることが多いですよね。
宮緒先生:さすがに幼い頃はまだ腐っていなかったのですが、暴れ○坊将軍を見ていた時に、上様モテモテだな……と思っていたのが、今の創作に繋がりましたからね(笑)。
―(笑)。ちなみに、先生がBLを知ったきっかけやBLをお好きになったきっかけは何だったのでしょうか?
宮緒先生:最初のきっかけは、母の本棚にあった木原敏江先生の『摩利と新吾』です。それでなんとなく下地が出来ていたところに、中学生の頃にタクミくんシリーズと巡り会い、開眼しました。
―『摩利と新吾』はこちらのインタビューでもよく名前の挙がる、お馴染み白泉社さんの作品ですよね。
宮緒先生:白泉社さんの『ツーリング・エクスプレス』や『パタリロ!』、『闇の末裔』などで染まってしまった方は多いと思います(笑)。
小説でも、花丸ノベルズさんがかなり早い時期からありましたし(斑鳩サハラ先生の『危ない修学旅行』シリーズをよく読んでいました……)。
―本日は、貴重なお話をありがとうございます!
宮緒先生:あまりこういった機会を頂くことが無いので、とても新鮮な気持ちでした。あまり面白いことが言えずに申し訳ありませんが、とても楽しかったです!
―最後に、読者さんやBL小説を書かれている方へのメッセージをお願いします。
宮緒先生:読者さんへ。いつも私の書くお話をお読み下さり、ありがとうございます!
私が色々と好き勝手に書かせて頂けるのも、応援して下さる皆さんのおかげです。これからも楽しんで頂けるよう精進しますので、どうぞよろしくお願いします。
また、このインタビューをご覧になり、私に興味を持って下さった方は、ぜひ拙著もお手に取って頂けると嬉しいです。
BL小説をお書きになっていらっしゃる方々へ。BLは男同士のラブさえあればどんな設定でも許される、夢と希望に満ち溢れたジャンルだと私は思っています。
「こんな設定許されるんだろうか……」と思う前に、まず書いてみて、自分の萌えを作品にぶつけてみて下さい。私もいつもそうしています!
―宮緒葵先生、ありがとうございました!
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