Vol.9 栗城偲先生
―続いて、先生の原稿が出来上がっていく過程について教えてください。
栗城先生:プロットを立てます。それから必要に応じて部屋の間取りなどを作り、本編を書きます。
栗城先生:そういえば、投稿作を作ったときと商業一作目からでは作り方が全然違いました。デビュー前の段階では、そもそもプロットがなかったです。
―プロットなしで投稿作を一本書きあげたのですか……?
栗城先生:そうなんです、プロットなしで書きました(笑)。恐ろしい話です。
書きたいシーンや科白がいくつかあって、それを頭の中で繋ぎ合わせて、その書きたいシーンに向かってとにかく話を書いていく、という感じでした。無謀ですね。
―デビュー後とデビュー前で、その部分が変わったのには何か理由があったのでしょうか?
栗城先生:デビュー後とデビュー前で変わった理由は単純で、単にお仕事ではプロットが不可欠だからです。
そもそも「プロット」という概念がなかったので、まずその立て方がわからないんですよ……(笑)。
担当さんは本当に苦労されたと思います。未だに担当さんと当時の話をすると、「すごいものが送られてきましたね、あのときは」と仰います。
プロット(らしきもの)が四行くらいしかなかったので。
―四行ですか……!
栗城先生:短すぎますよね(笑)。しかも別に起承転結じゃないんですよ。
―(笑)。でも先生の頭の中ではきっときちんとお話が成立していたんですよね。
栗城先生:そうなんです。そのはずなんです(笑)。
―少しお話は戻りますが、部屋の間取りを考えるってすごく面白いアイデアですよね!
栗城先生:ありがとうございます!間取りを見るのが趣味なのです……。
―何だか生活感が出ると言いますか、キャラクターが一気にグッと身近に感じられそうです。
栗城先生:間取りがあると、書くときに便利なんです。自分が書きやすくなるのも勿論なのですが、煩雑な書き方をしてしまったり、矛盾のある部屋の構造にしてしまうとイラストレーターさんを困らせてしまったりするので、そのためにも作ります。
ただ、特にイラストを起こすのに必要のない場合は担当さんのところで止まります(笑)。
―(笑)。ほかに、キャラや設定を詰めるために先生が行っていらっしゃる作業などはありますか?
栗城先生:あとはキャラ表を作ってます。一人称、身長体重、髪の色、目の色・形などを書きこんだものです。
最後までその通りにいかないこともありますが(特に眼鏡設定はよく消失します)、わかりやすくなるので作っています。
―小説の場合、キャラクターの容姿は常に読者さんに伝わっているわけではないですもんね。
栗城先生:そうなんですよね。それと私はよく初稿で人物の外見描写を怠るので、戒めのためにも作っています。
―ストーリーやキャラクターのアイデアの源泉は何かありますか?
栗城先生:特にないです。担当編集さんと相談して決めたり、「新作を考えよう」と思って考える、という感じなので。
場合によってはテーマが決め打ちのときもありますし。モデルがいたこともないです。
―キャラクターが先にできることもあれば、ストーリーが先のことも?
栗城先生:それも時と場合によります。あと編集さんの方針とかでも変わったりするので。
たとえば、「ヘタレ×オカンにしましょう」と言われるときがあったりとか。その場合はキャラから考える、という感じです。
―担当さんと一緒に作品を作っていくという部分は、やはりプロならではですよね。
栗城先生:そうですね、そこが一番の違いかもしれないです。好き勝手させてくれる編集さんもいらっしゃいますが(笑)。
―物語を考えるにあたっての先生なりのこだわりなどはありますか?
栗城先生:基本的にはゆるふわハッピーエンドです。多分私の小説で共通しているのはそれくらいだと思います。
ご都合主義でも予定調和でも、幸せな話を書こうとは思っています。
―「BL小説」というジャンルだからこそ気を付けていることは何かありますか?
栗城先生:これは読み手の方の主観にもよるところだと思うのですが、私なりに「女の子」にはならないようにしています。
私は割と「少女漫画っぽい」と評して頂くこともあるのですが、登場人物はあくまで「男子」にしようと思って書いています。
それから「リアルなゲイの方のあれこれ」に拘りすぎないようにはしています。いわゆる「やおい穴」というやつですね。
ゲイ小説やゲイのハウトゥー本を書いているわけではなく、あくまでファンタジーのBL小説を書いています。
―「男子」として表現する上で、何か留意している点などありますか?
栗城先生:うーん……感覚的なことなので上手く説明できる気がしないです(笑)。
すごく即物的な面で言うなら、「受けでも凄くエロに対して意欲的である」とかですかね。私の書く話はどちらかというと攻めが恥じらっている気がします。
実際どうかはおいておくとして、男性は女性のようにベッドで「装う」ということをあまりしないイメージがあるんです。勿論そういう(装う)キャラならありだと思いますが。