Vol.9 栗城偲先生
栗城偲先生インタビュー
―栗城偲先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
栗城先生:よろしくお願いいたします、栗城偲と申します。BL小説を書かせて頂いております。
―早速ですが、商業BL作家としてデビューするまでの経緯やきっかけを教えてください。
栗城先生:私は投稿デビューなのですが、実は二社からほぼ同時にデビューさせて頂いています。
ふと「投稿してみよう」と思い立ち、同時進行で二本書きました。二つ書き上がって、そのとき自分が購読していたBL雑誌をいくつか見て、新人賞の締め切りが近かった二誌に、ひとつずつ送ったんです。
もしそのとき、作品を逆に送っていたら多分デビュー出来ていなかったと思います(笑)。
未だに当時の担当さんにはお世話になっているのですが、「多分逆なら通らなかったでしょうねー」と言われています。
そういう思いつきの初投稿がきっかけだったので、ネタのストックがなくて困りました。
―投稿前にも、BL小説自体はたくさん書いていらしたんでしょうか。
栗城先生:いえ、殆ど書いていませんでした。長い文章の小説だと、投稿したものが初めてでした。
大体デビューされている方は長編のストックがあるものらしいのですが、私にはそれがなくて。
デビューした後に「なにかストックは……ないですか、そうですか」という感じで、ある意味担当編集さんも困ったと思います。
―もともとBLはずっとお好きだったのですか?
栗城先生:ずっと好きでした。はっきりと目覚めたのは、多分中学生くらいだと思うのですが、私の場合、母が腐女子だったので、幼少期から家にBLが沢山ありました(笑)。
―では、好きなBLでとにかく書いてみようという感じで……。
栗城先生:投稿は完全に思いつきでした。
―でも、その思いつきから実際に長編を書きあげて投稿されるって、実行力がすごいですよね。しかも二本同時……!
栗城先生:ありがとうございます。多分、暇だったんだと思います……(笑)。
だから投稿するときには結構気持ちに余裕があった気はします。成績発表のページ、後ろから見ましたし(笑)。
―(笑)。投稿者さんの中には、「長編を最後まで書き上げる」ということ自体のハードルが高いと感じていらっしゃる方も多いかと思います。
栗城先生:なるほど……。確かにそういう方も多いかもしれません。そういう意味では、私の場合は特に目標を立てなかったのが功を奏したのかもしれないです。
締め切りまでに書き上げようとか、何枚書かなきゃいけないとか、デビューしたい、とかそういう気持ちが希薄だったのでのんびり無理なく書けたのだと思います。
―あまり気負わずに書いていらしたということですが、受賞やデビューが決まったときはどんなお気持ちだったのでしょうか。
栗城先生:一社目のお電話を受けたときは単純に嬉しかったです。友人(非オタ)にすぐ電話しました(笑)。
それから間もなく二社目も頂いて、次も嬉しかったのですが、戸惑いました。「なにが起きてる……?」という感じで。
―二社同時に受賞の電話を受けるって、本当に稀なケースですよね。最終的にデビューを決められたきっかけなどはあったのでしょうか?
栗城先生:普通に「デビューです」「ありがとうございます」でデビューしちゃいました。
―(笑)。もうトントン拍子な感じで。
栗城先生:そうですね(笑)。でもその後は雑誌で一本ずつくらい書いて、五年くらいお仕事はしてませんでした。よく次のお仕事頂けたなあ、と思います(笑)。
―そこはやはり、その五年の間に先生の作品が読みたいと待っていらした読者さんもたくさんいらっしゃったのではないでしょうか。
栗城先生:うーん……どうでしょうか(笑)。
でも覚えてくださっていた方はいましたね。雑誌で「デビュー十周年」というお知らせをして頂いた際に「デビュー作を読んだのですが、あれから十年経ったんですね」とアンケートに書いてくださった方がいらして、凄くびっくりしました。とても幸せなことだなあ、と思いました。