Vol.8 綾ちはる先生
―先生の原稿ができあがっていくプロセスを教えてください。
綾ちはる先生:以下のような形になります。
①アイデアノートにアイデアをランダムに出していく。
②使えそうなものを絞って、アイデアを纏める。
③簡易プロットを作って担当さんに提出する。
NOなら②に戻る。YESなら詳細プロットを作る。(修正が出た場合は、赤字で修正して変更部分を担当さんに確認してもらいます)
④詳細プロットを元に初稿を書き上げる。(プロットとは違うエピソードを入れたり、設定を変えたりすることもあります)
⑤担当さんの意見を参考にしながら改稿する。
―ノートに書き込むアイデアのベースは何ですか?
綾ちはる先生:その時々によって違いますが、多いのはA×Bの組み合わせを書いてみたい、というパターンと、こういう流れの話を書いてみたい、というパターンです。
今回掲載して頂いているノートの場合は前者のパターンで、「愛したくない攻め×愛されたい受け」ですね。
―プロットの作り方をお伺いできますか?
綾ちはる先生:最初に出来事を冒頭からエンディングまでずらーっと書き出します。
そこから、その時、受けはどう思っていただろう、攻めはどう思っていただろう、ということを考えて追記していきます。
綾ちはる先生:以前は出来事を並べて書くだけだったのですが、担当さんに「受け(あるいは攻め)はどう思っていますか?」と聞いていただくことが多いので、この形になりました。
こうして感情の流れを書いておくと自分の頭の中も整理できて便利です。
―先生の作品にはファンタジー要素が含まれるものも多いですが、そうした要素はどうやって盛り込まれていくのでしょうか?
綾ちはる先生:最初に、非ファンタジー要素とファンタジー要素の配分を決めます。
あくまで私の中の配分ですが、『サンドリヨンの指輪』はだいたい7:3か8:2(少ない数字の方がファンタジーの配分です)ぐらいです。
一通り書いてみて、ファンタジーと非ファンタジーの間に違和感があれば様子を見ながら調節していく、という感じです。
―まず比率から考えるという発想はなかったので、とても驚きました……!
綾ちはる先生:そう言っていただけると、インタビューを受けさせていただいた甲斐があって嬉しいです!(笑)
私が書くファンタジーは全てローファンタジーで、日常の中にどれくらいの非日常を混ぜるかが問題になってくるので、まず配分を考えてます。
―参考にすることの多い資料などはありますか?
綾ちはる先生:資料はその時に執筆している物語によって様々ですが、辞書は必ず傍らに置いていつでも確認できるようにしています。写真に写っている2冊の辞書は、どちらも語彙を増やすために見ています。
綾ちはる先生:例えば、文章を書く人間に共通する悩みだと思うのですが、「こいついつも笑ってるな!」とか「他に言い方ないのか!」というようなことがよくあります。そういう時に、この辞書を引っ張り出して、なにかいい表現がないかな~と探します。
―語彙って、いくら増やそうと思ってもやはり自分の力だけでは限界もありますよね。
綾ちはる先生:ですよねー……。本を読んでいても、気になる表現があるとメモっておいて後で調べます。
私のスマホのメモ帳には「使いたい単語一覧」というメモがあって、すごい長さになってます(笑)。