Vol.8 綾ちはる先生
綾ちはる先生インタビュー
―綾ちはる先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
綾ちはる先生:綾ちはるです。2013年『イエスタデイをかぞえて』(心交社)でデビューいたしました。
いわずもがなBLが大好きです。どうぞよろしくお願いします。
―商業BL作家としてデビューするまでの経緯やきっかけを教えてください。
綾ちはる先生:当時私は修士論文を抱えた院生でした。難解な資料を手に討論し合う日々に少し疲れてしまっており、なにかクリエイティブなことをしてストレスを発散したいと考えるようになりました。
BLを選んだのは、単純に好きだったからです。
書いてみたら誰かに読んでもらいたくなり、友人に押し付けました。友人は手放しで「面白い」と褒めてくれました。あまりお世辞は言わないタイプの友人だったので、その言葉が言葉が「もしかしたら多少でも面白いものが書けているのかもしれない」という自信に繋がりました。
そのまま数作書いていくつかの新人賞に送ってみたところ、心交社さんが拾ってくださった、という感じです。
―それ以前にも、創作活動はされていたのですか?
綾ちはる先生:高校時代、文芸部に入ったことを切っ掛けに創作するようになりました。その頃は男女物の短編ばかり書いていました。
大学生になって二次創作をするようになってから、男性同士のお話を書くようになりました。
―創作BLを書かれるにあたって、先生がぶつかった壁などはありましたか?
綾ちはる先生:おそらくこれは二次創作からオリジナルに移った多くの作家さんがぶつかったことのある壁なのではないかと思うのですが、キャラクター作りです。
先ほど述べたように高校時代にオリジナルの短編を書いたことはあったのですが、短い中でどれだけのインパクトを出すかというストーリー作りに始終していて、キャラクターを疎かにしていたんです。
いざ、それなりの長さのオリジナルを書こうと思った時に、「キャラクターとは……?」となりました。
―キャラクター作りのための突破口は?
綾ちはる先生:私がやっているのは、色んなことを細かく想像して書き出すことです。髪型、体系、顔つき、口調など。
そして、それを絵の描ける友人に描いてもらうと自分の中でかなり固まってきます。友人にも都合があるので、もちろん毎回頼めるわけではないですが……。
―ストーリーやキャラクターのアイデアの源泉を教えてください。
綾ちはる先生:読書が好きでなんでもかんでも読むので、そうしてインプットされたものが源泉になっているんだと思います。文学、推理、SF、時代物、恋愛物、ファンタジー、なんでも好きです。
小説だけでなく、漫画も読みますしゲームもします。映画や舞台も大好きです。
今はあまり時間が取れずに見れていませんが、以前はドラマやアニメも見ていました。
―様々な作品から得たエッセンスをご自身の作品に活かすためのポイントなどはありますか?
綾ちはる先生:ポイントと言えるか分かりませんが、面白いと思う設定やストーリーがあったら「自分ならその設定をどう生かすだろうか」あるいは、「私ならここをこうするかもしれないな」ということをよく考えます。それが小さなヒントになって創作に生きてくるということは多い気がします。
―インプットとアウトプットの両立といったような。
綾ちはる先生:そうですね。むしろインプットの方が多いかもしれません。創作を始める前からずっと大好きです。
―物語を考えるにあたってのこだわりは何ですか?
綾ちはる先生:こだわりと言えるか分かりませんが、設定、ストーリー、キャラクターの三点の相性は意識しています。
例えば『サンドリヨンの指輪』の千尋は、最初のプロット段階では「裕福な家の子供で、なんでも持っているけど周りの人に愛されずに生きてきた」という設定でした。
決定稿の千尋が捨て猫なら、最初の千尋は血統書付きで気位の高い飼い猫という感じだったと思います。
魔法の指輪という設定と、そこから幸せになっていくというストーリーであることを考えると、最初はなにも持っていない方がいいだろうということになり、今のような設定、キャラクターにしました。
私は穏やかで優しい攻めを好んで書きがちで、赤枝も最初はそのタイプだったのですが、千尋を変えたことにより、こちらももっと相性のいいタイプがあるだろうと変更になりました。
―「BL小説」というジャンルだからこそ気を付けていることはありますか?
綾ちはる先生:恋愛を中心に据える、ということでしょうか……。ボーイズ『ラブ』なのだから、当たり前のことなのですが(笑)。
恋愛と同じくらい家族や友情を書くのが好きなので、気を抜くとそちらに比重が行ってしまうことがあります。
その度に担当さんに「恋愛を、恋愛を……!」と言われて、ハッとします。
―そのあたりの兼ね合いは、読者さんの好みもありますよね。
綾ちはる先生:そうですよね。私は恋愛関係とそれ以外の関係が同等に交じり合っている話が好きで好きで仕方ないのですが、BL小説を買われている以上、読者さんが一番求めているのは恋愛だと思うので、自分の気持ちだけで突っ走らないように気を付けいる、……つもりです。