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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

椋太、澤村たちが所属する新規プロジェクトにて、1年かけて作り上げた企業向け勤怠管理システムのベータ版がリリースされてから2ヶ月。
細かな修正は随時くわえているものの、少し大きめの追加機能、改善要望が少しづつ出揃い始めていた。

そろそろ通常版としてリリースし、さらに多くのクライアントを誘致しても問題ないとの決定が下り、システム改善に追われるシステムチームだけでなく、椋太たち営業も本格的に動き出しはじめることとなった。

そんな動きがあるさなか、週一の定例ミーティングを前に、事業部長より内々にと椋太へミーティングの依頼があった。



「資料の修正も問題ないようだし、そろそろ動き始めようと」

事業部長の神崎は、黒塗りのボールペンを手に持ち、馴染んだ青いコードバンの手帳を広げた。
いつも通り少し白髪の混じったオールバックの髪はつい昨日にでも散髪したかのように整っている。

6人ほどが座れる小さなミーティングルームのテーブルで椋太と神崎が向かい合っていた。

「はい。こうして呼ばれたということは、前に打診した人事の件、検討していただけたということでしょうか」

そう切り出したのも、プロジェクトの営業チームをまとめている椋太は、今後の動きから、もう少し営業メンバーをアサインしたいと考え、神崎に伝えていたのだった。

「ああ、察しが良いな。システムチームも追加開発の応援でメンバーを増やす必要があったから一緒に話を通したんだ」

おもったより追加機能開発のボリュームが大きそうなことは言葉少ない澤村の眉間の皺からも察しており、まずはそこから人事異動を着手するだろうな、と薄々感じていた。
それだからこそ、営業はとりあえず椋太と水瀬の二人で回せと言われるのではないかと少し危惧していたのだったが、良い方向に進みそうで安堵する。

「丁度別のプロジェクトが落ち着きそうで、次のアサイン先を検討しているのが一人いてな」
「タイミングがいいですね」
「ああ。とはいえすぐに専属というのは厳しいから、しばらくは二足のわらじにはなりそうだが」

分かってくれるとうれしいというように神崎は苦笑する。

「もちろんですよ、引き継ぎして頂きつつこちらも手伝ってもらえると助かります。正直しばらくは二人で回さないと厳しいかなと思ってたので、0.5人月分でも追加されるなら大分助かります」
「白井たちは協力的で助かるよ」
「いえ。いつも事業部長には便宜はかってもらっていますし。上がしっかりしていないと動くものも動かないですからね」

笑いながら半分本気な冗談を言うと、神崎は破顔する。

「おいおい、何時もながらプレッシャーだな。イケメン王子な営業のエースは切れ者だな」
「誰ですかそれ」
「白井しかいないだろう?」

若い女性社員たちの視線を一身に浴びる椋太だったが、遊び相手としては最高という名誉だか不名誉なのかわからない言われ方をしているのを揶揄しているのであることはわかっていた。

「神崎さんみたいなイケオジの方がいいですよ。で、肝心のメンバーは誰がアサインされるんですか?」
「はは、褒め言葉は半分くらいで受け取っておこう。で、だ」

意味ありげに神崎は一息を置く。

「開発営業部の小原くんだよ」
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