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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

「あのさ、気にならないの」

意を決して椋太は澤村に話しかける。
さっきの行動を咎めるでもなく淡々とマイペースに過ごす澤村に疑問を呈する。

「なにがだ」

視線すらあわせず、もうもくと朝食を食べている澤村に少しづつ苛立ちが募っていく。

「いや、俺、小原さんと一緒に寝てたし」
「セックスでもしたのか?……違うだろ」

いかにもわかっているかのような、同様の欠片もない口調に加え、小さくため息までつかれる。
その様子にまるで自分だけが空回りしているみたいに感じてカッと怒りがこみ上げた。

「シたっていったらどーすンだよ」

つい感情のまま喧嘩腰に吐き出す。
はっと我に返るが出てしまった言葉は元には戻らない。

その時、はじめて澤村は椋太の目を見た。

「アンタが小原さんを選ぶなら、それでいい」

温度の感じない言葉が澤村の口から漏れる。
目は何の感情も写していない、いやむしろ呆れたような表情にも見えた。

何を考えているのかもわからないような言葉で返されるとは露も思わず、苛立ちが爆発する。

「それが答えか」

冷水を被せられたような気分に声を荒げる。

「わかった。じゃあ一緒にいる意味ねェな、食べ終わったら帰れ。パン、ありがとう」

それだけの言葉を辛うじて引き出すと、椋太は財布から朝ごはん代だ、と1000円札を突きつけて、踵を返した。

「どこにいくんだ」

それ以上冷静に返せる自信もない。
澤村の問いかけにも答えず、ベッドルームのドアを大きな音を立てて締めた。



レースのカーテンから溢れる日差しがベッドの白いシーツをキラキラと輝かせる中、怒りに沸騰したまま椋太は乱暴に寝転がる。

「なんなんだよ、あいつ」

ただひたすら怒りがこみ上げる。
でも何に対して怒っているのか、冷静になれない自分がいる。

ただムカつく。そんな小学生みたいな思いに囚われ、冷静ではない自分を客観的に理解しつつも、どうしようもなれない自分を持て余す。

こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。
仕事で自分が関係ないところでやってきたことを目の前で潰された時くらいなものだ。

それだけ澤村に対して感情的になれる自分もよく分かっていなかった。

起きていてもイライラするだけだ。

「ふて寝すっか」

ブランケットを顔まで引っ張り上げ、引きこもるように目を瞑る。
ベッドの暖かさにうとうとしはじめた時、パタンと遠くでドアが閉まる音が聞こえた。
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