生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!
「うぅん……」
人の声に気づいて眠りが浅くなったのか、小原が寝返りをうつ。
(呑気に寝て……)
混乱からか、椋太は小原に怒りを覚え始める。
「小原さん、起きて下さい」
「ん……?あ、おはようございます、白井さん」
目が冷めてからは早かった。さっきまで寝ていたのが嘘かのように姿勢を正していた。
「おはようじゃないです、そのっ、澤村が……」
「なるほど。もう10時ですね、寝すぎたようです。申し訳ない」
小原は要領を得ない言葉にも、すぐ察して反応する。
すぐに立ち上がり、帰り支度をし始める。
「澤村さんは?」
「……ごはんを買いに行きました」
椋太はやや呆れながら項垂れる。
「とりあえず私は席を外したほうが良いでしょうね」
「えっ」
「私が何か話したほうがよければ残りますが」
「……いえ、いいです」
そうしている間にもすべて綺麗に身なりを整え終わった小原は、じゃあ。と一言を残して部屋を立ち去った。
「さて、どうするか……」
やましいことはしていないが、自分が同じような場面に出くわしたら、憤慨しそうなものだ。
しかし澤村は、ごく普通に状況を確認した上で席を外した。
(あまり……気にならないのか……?まあむしろ俺は澤村に小原の愚痴を言っていたくらいで、急激に同僚どころか友情を越えたような関係になるようには思えないかもしンないけど)
考えれば考えるほど理解できずにいると、ドアが開く音が聞こえた。
「あ、おか、えり……」
考えあぐねて普通に返してしまう。
「小原さんは?」
「っ……、さっき、帰った」
「小原さんの分も買ってきたんだが」
何が好きなのかわからなかったから適当に買ってきたと、塩バターフランスとカレーパンとクリームパンという珍妙な取り合わせを袋から出して見せる。
「まあ、余っても明日食べればいいか」
淡々といつも通りのどこ吹く風といった澤村が理解できなくなる。
「なあ、気になンないの?」
「小原さんが帰ったことか?」
「いや、違くて……」
その表情になにも疑問はない。
「とりあえず、俺もなんも食べてないから。ごはんにしよう」
気がつくとテーブルの上には買ってきたパンと牛乳が用意されている。
椋太と違い、おかず等をまめまめしく用意するタイプではないが、きちんとお皿に出しているところは評価できる。
(……じゃなくて……)
うっかり澤村のペースに乗ってしまい、苦虫を噛み潰したような顔になる。
とりあえず席について、向かい合うことにした。
「いただきます」
「いただきます」
椋太がお気に入りのミルクパンが目の前に置かれている。
「他のが良かったか?」
「いや、これがいい。ありがと」
「ん」
クリームもなにもはいっていない素朴なパンだが、ほんのり生地自体が甘い。
牛乳と一緒に食べると、蕩けるような食感になるのが好きで、たまにコンビニで買ってきて食べる定番商品だった。
「あのさ、小原さんとその、寝てたの気にならない、の」
「あ、そうだ。終電でもなくしたのか?」
「まあ、そうなんだけど……駅の小路にある、馬肉の店で飲んでて」
外出先から直帰して飲んでて、終電なくして。と軽く事の経緯を伝える。
「そうか。あそこ美味いしな、また行きたい」
「あ、うん、行こっか」
「ああ」
勇気を出して切り出しても、澤村の態度は暖簾に腕押し、糠に釘といった風情で何ら態度は変わらなかった。
(まあ、変に騒がれても困るけど……ってまあ、澤村はそんな騒ぐタイプでもないけど。なんか、腑に落ちない)
なんでモヤモヤしているのかもわからなかったが、なんとも言えない気分が椋太の胸を掠る。
人の声に気づいて眠りが浅くなったのか、小原が寝返りをうつ。
(呑気に寝て……)
混乱からか、椋太は小原に怒りを覚え始める。
「小原さん、起きて下さい」
「ん……?あ、おはようございます、白井さん」
目が冷めてからは早かった。さっきまで寝ていたのが嘘かのように姿勢を正していた。
「おはようじゃないです、そのっ、澤村が……」
「なるほど。もう10時ですね、寝すぎたようです。申し訳ない」
小原は要領を得ない言葉にも、すぐ察して反応する。
すぐに立ち上がり、帰り支度をし始める。
「澤村さんは?」
「……ごはんを買いに行きました」
椋太はやや呆れながら項垂れる。
「とりあえず私は席を外したほうが良いでしょうね」
「えっ」
「私が何か話したほうがよければ残りますが」
「……いえ、いいです」
そうしている間にもすべて綺麗に身なりを整え終わった小原は、じゃあ。と一言を残して部屋を立ち去った。
「さて、どうするか……」
やましいことはしていないが、自分が同じような場面に出くわしたら、憤慨しそうなものだ。
しかし澤村は、ごく普通に状況を確認した上で席を外した。
(あまり……気にならないのか……?まあむしろ俺は澤村に小原の愚痴を言っていたくらいで、急激に同僚どころか友情を越えたような関係になるようには思えないかもしンないけど)
考えれば考えるほど理解できずにいると、ドアが開く音が聞こえた。
「あ、おか、えり……」
考えあぐねて普通に返してしまう。
「小原さんは?」
「っ……、さっき、帰った」
「小原さんの分も買ってきたんだが」
何が好きなのかわからなかったから適当に買ってきたと、塩バターフランスとカレーパンとクリームパンという珍妙な取り合わせを袋から出して見せる。
「まあ、余っても明日食べればいいか」
淡々といつも通りのどこ吹く風といった澤村が理解できなくなる。
「なあ、気になンないの?」
「小原さんが帰ったことか?」
「いや、違くて……」
その表情になにも疑問はない。
「とりあえず、俺もなんも食べてないから。ごはんにしよう」
気がつくとテーブルの上には買ってきたパンと牛乳が用意されている。
椋太と違い、おかず等をまめまめしく用意するタイプではないが、きちんとお皿に出しているところは評価できる。
(……じゃなくて……)
うっかり澤村のペースに乗ってしまい、苦虫を噛み潰したような顔になる。
とりあえず席について、向かい合うことにした。
「いただきます」
「いただきます」
椋太がお気に入りのミルクパンが目の前に置かれている。
「他のが良かったか?」
「いや、これがいい。ありがと」
「ん」
クリームもなにもはいっていない素朴なパンだが、ほんのり生地自体が甘い。
牛乳と一緒に食べると、蕩けるような食感になるのが好きで、たまにコンビニで買ってきて食べる定番商品だった。
「あのさ、小原さんとその、寝てたの気にならない、の」
「あ、そうだ。終電でもなくしたのか?」
「まあ、そうなんだけど……駅の小路にある、馬肉の店で飲んでて」
外出先から直帰して飲んでて、終電なくして。と軽く事の経緯を伝える。
「そうか。あそこ美味いしな、また行きたい」
「あ、うん、行こっか」
「ああ」
勇気を出して切り出しても、澤村の態度は暖簾に腕押し、糠に釘といった風情で何ら態度は変わらなかった。
(まあ、変に騒がれても困るけど……ってまあ、澤村はそんな騒ぐタイプでもないけど。なんか、腑に落ちない)
なんでモヤモヤしているのかもわからなかったが、なんとも言えない気分が椋太の胸を掠る。