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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

「……困らせてしまいましたね」

戸惑いが顔に見えたのか、少し淋しげな笑顔を浮かべる。

「いや……どうすればいいのかわからんくなってしまって、うまい事いえなくてすみません」

丁寧に諭すように言われ、冗談ではなく本当なんだなとわかる。
しかし、それを押し付ける気もないという優しさも見て取れた。

(正直、意外だ。ほんと嫌われているんじゃないかとおもってたし、それはまあ向こうもそうなんだろうけど)

「お酒もなくなってきましたし、そろそろ寝ますか?……あ、私はそこのソファででも寝かせて貰えれば問題ないので」
「あ、すみません。このソファ、ベッドにもなるんで……何かかけるものもってきます」

このままではぐだぐだと悩んでしまいそうな椋太の心を見越してなのか、普通の会話に戻る。
ソファを広げ、掛け布団を持ってくる間に先程よりは少し落ち着いてくる。

「この部屋、乾燥しやすいんで」

先程除けたテーブルの上に水差しとグラスを置く。

「そういうさりげない心遣いができるところも、気に入っているところです」

気障にウインクをされると、笑ってしまいあまり重く感じさせない。
真っ直ぐな好意に恥ずかしさもあるが、椋太が気をつけている部分を褒められたようでただ素直に嬉しかった。

「では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」

椋太もベッドルームへ向かうと、程よいアルコールにすぐに眠りに落ちていった。



翌日。

ドアを開く音で目が覚める。
寝ぼけた頭で澤村かな、となんとなく感じる。
今何時だろう、と思いながらうとうとしていると、上から声が聞こえた。

「白井さん……?」

怪訝そうな声にゆっくりと覚醒していく。
ふと手をのばすと、温かくて柔らかいものが触れた。

(澤村……?)

抱きつこうとして違和感を感じる。

(柔らかい?)

もっと澤村はゴツゴツしているはず……

「えっ?」

はっきりと覚醒して気づいたのは、ソファベッドで自分が寝ている小原に抱きついているような格好で寝ていることだった。

「え?!あっ」

パニックになりながらも、思い返す。

(そういえば、明け方お手洗いに起きて……小原が寝ているのを見てたら……)

のんきに寝てても上品な寝方だな、と悪態をついていたのまでは覚えていたが。
そこからの記憶がない。

「えっと澤村……」
「小原さんと飲みでもいってたのか」
「あ、うん」

特になんの感情も感じさせない、ごく普通の口調で問われて呆気にとられる。

「まだ朝ごはん食べてないのなら何かかってくるが」
「あ、ありがとう……でも」

そう言っているうちにもすでに澤村は玄関に向っている。
まだ混乱している椋太は、何もいえずにその背中を見つめるしかできない。
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