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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

いつも降りる駅に小原がいるというのは妙な気分がした。
あまり降りる機会がないのか、周りを興味深げに見回している。

「繁華街のイメージがあると思うんですけど、ちょっと歩けば案外静かなんですよ」

椋太の住むマンションは、他の路線含む3駅の丁度真ん中あたりに位置し、公園などもあるような少し静かな場所だ。
駅方向へ歩けば洒落たカフェ兼飲み屋や、ちょっとした居酒屋などもあって便利な立地だった。

「さっき言ってた見せはここです。わりと何食べてもうまいんですよ」

駅からほど近い、シックで落ち着いた一軒家の居酒屋にたどり着いた。

「チェーン店で何店舗かあるんですけどね、どこも美味しいんですけど、他はあまり落ち着かなくって」
「そういうの大事ですよね」

プライベートな時間がそうさせるのか、にこりと小原も珍しく優しげに微笑む。

引き戸を開けると、いらっしゃいませ~とうるさくない程度の元気な声がかかる。
指で2人なんだけど、と表すと、すぐに二階の席に案内された。

「混んでるみたいだったから入れてよかった。ちょっと席あるか心配だったんですけど」
「それは運がいいですね。運命の女神は僕達に味方をしている」

気障な物言いは普段は癇に障るが、酒の席となるとそこまで気にならなかった。

急遽飲みになったということもあり、念のため椋太は澤村にLINEで連絡をする。

(訪問さっき終わった。直帰になったから、そのまま小原さんと飲むことになった、と。これでいいか)

送信終わると、相変わらずそっけなく、わかったと一言だけ返ってくる。
いつも通りと気にせずスマホをテーブルに伏せて置くと、席にあるメニューを開いた。

「ここは何食べても美味しいんですけど、やっぱ最初は馬刺しの盛り合わせかな」

メニューを指しながら温かいお絞りで手を拭うと、ようやく仕事が終わったと一息着けた気がした。

「いいですね。やはりおすすめは焼酎ですか?」

同じようにお絞りで優雅に手を拭いながら小原はメニューを眺めた。

「ええ、やはり馬ですから。嫌いでなければ」
「焼酎は好きですよ、家でも飲みますし」
「……意外ですね」

小原の焼酎を飲みなれてそうな雰囲気に、椋太は少し驚く。

「どう意外なんですか」

その反応に小原は苦笑するが、椋太は素直に暴露する。

「なんとなく小原さんて、ワインのイメージでした」

一つ一つの所作が嫌味なほど優美で、不思議な雰囲気を醸し出している彼にあまり庶民っぽい焼酎のイメージはなかった。

「ふふ、どんなイメージですか」

失礼ともとれるような発言にも気にせずに笑う小原に、椋太は少しだけ好感が持てるなと感じた。
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