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生意気な年下にうっかり惚れられまして。2年目!

「……珍しいな、白井さんがそういうこと口にするなんて」

いつも通り黙って聞いているだけかと思っていた澤村がふいに反応する。

「そんな珍しいかな。俺もたまには愚痴とか言うけど。……お前のことも口には出さないけど、いろいろ思ってはいたしな」

ニヤリと思わせぶりな顔つきを浮かべる。
澤村のことについて誰かに話したことはない。
というのも、対等に話せてかつ環境を共有できる相手がいなかっただけだ。
そう考えるとあまり仕事のことを話す相手はいないんだなと椋太は思う。

考え事をしていると、澤村がそのまま黙ったっきりなことに気づき、視線を合わせると、無言でやや視線を下ろし気味にこちらを見る目にぶつかる。

「…………」

なんとなくしょんぼりと項垂れるような空気が澤村を覆っていることに気づく。

「……っ」

(真顔なのに、見える、見えるぞ!澤村の犬耳がへんにょりして、しっぽが垂れているのが……)

心なしかしょんぼりとした様子に、笑うのは流石に悪いと椋太は吹き出すのを堪える。

(生意気な事言うけど、こういうところがかわいいんだよなあ……)

「なんだ……そんなにニヤニヤ笑って」
「あれ、顔に出てた?」

思わずふふっと思い出したように笑ってしまう。
澤村は眉を顰めながら不審そうにこちらを見ている。

「ごめん……っ。なんか、澤村がかわいくて」
「……!」
「露骨にしょんぼりしてるの、犬っぽいなあって。主人に怒られてしょんぼりしている大型犬っていうか」

想像すればするほど面白くなってくる。

「犬じゃない」
「犬だよ」
「じゃあ夜は俺に噛みつかれてるんだな」
「っ……」

意味ありげに視線を絡ませられる。
挑戦的な視線に唇の端だけ意味ありげに上げた表情は、男の色気を漂わせた。

突然の夜を匂わせるような発言に勝手に頬が火照るのを感じる。

(くそ……やっぱコイツ……)

平静を装っているのを悟らせないように小さく息を吐いた。

「まぁ最後までできてねーけどな」
「次はきちんと完遂しよう」
「優しくしろよ」

語尾にハートマークを付けんばかりのおちゃらけた口調で減らず口を叩くが、内心はまだ心臓がドクドクと鼓動している。

(はぁ……心臓にわりぃ。てか最後までできてねーのも恥ずかしいし………)

椋太はその後、頼んだ寿司の味をしっかりと味わうことができなかった。
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