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ボーイズ・イン・ブルー

 まだ自分の中でもはっきりとはまとまっていない考えを吐き出すことは、少し怖い。けれど、他の誰よりも先に千尋に聞いてもらいたかった。

「……ちょっと迷ってるんだよね。絵、というかデザインの勉強とか、してみたくて。もちろん、今から美大とかは無理だけど……」

 筆を持ったままの右手をじっと見つめながら、静は秘密を打ち明ける時のようにそっと声をひそめた。別に何もやましい話をしている訳ではないのだけれど、内緒話をするような気持ちだったからかもしれない。
 静の言葉を聞いた千尋の顔が、朝日が昇る時のようにぱっと笑顔に変わる。

「へー、いいじゃん!シズ絵うまいし、やってみたいって思うなら、全然アリだと思うけどな」
「ありがと。もうちょっと考えてみる」
「なんかさー、センセーたちは自分の進路くらい自分で決めろって言うけど、結局は親の言い分とかもあって、そんな簡単にいかないよな~~」

 千尋の言い分は全くもってその通りで、進学先は自分の意志だけで簡単に決定できるものでもない。近いうちに両親にはきちんと話してみようと考えてはいるし、そうはっきりと反対されることもないだろうな、とは思いつつも、やはり進路の話題となるとやや尻込みしてしまう部分もある。
 これから先、今回のような選択を迫られることがどんどん増えていくのだろうと思う。先日のホームルームの時にも思ったことだが、先の見えない未来を自分自身で選んでいかなくてはならないのだと考えると、やはり頼りない気持ちになる。

「先のことを考えるのって、難しいよね。俺、今まで何となくで生きてきたから……」
「あー、それは分かる。将来のことなんてさあ、今決めろって言われて決められる訳ないしね」

 ため息交じりに天井を仰いだ千尋に、今度は静が尋ねる。

「千尋はどうするの?」

 千尋にはスキルがあるし、何よりあれだけ楽しそうに演奏するのだ。どんな形であれギターは続けるだろうと思っていたが、実際のところ、千尋はどんな将来を思い描いているのだろう。
 こんな風に改まって未来の話をするというのも何だか面映ゆい。静はそれを紛らわすように再び作業の手を動かし始めた。
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