このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

ボーイズ・イン・ブルー

「俺、なんていうか、千尋とこれからも一緒にいられたらなって思ってる。けど、それが千尋とちゃんと同じ気持ちかどうかは分からない。好きだなんて、そんなに簡単に言えない」

千尋は何も言わず、見守るようにまっすぐに静の瞳の奥を覗いていた。

「だから、千尋と一緒に探したい。自分の気持ちを、ちゃんと伝えられるように」

窓の外の景色はいつの間にか暮れかかって、西の空には茜色が滲み始めている。やわらかな橙の陽が薄く射しこむ教室で、二人は夕風が互いの髪に触れるのを見つめていた。
静の声を聞き届けた千尋は、ふっとその双眸を細めて、ゆるく微笑んだ。

「なかったことにしないでくれてありがとう。オレも、シズと一緒に考えるよ」

子どものように笑う仕草に、胸がじんと震える。この感覚も、もう何度目だろうか。

――そうだ、千尋はきっと自分よりもたくさん悩んで、その上で打ち明けてくれたんだ。

同性の友人に気持ちを伝えるということ。それがとても勇気のいる行為であるということくらいは、疎い静にも容易に想像できる。
やはり千尋には敵わないな、と静はきゅっと唇を引き結ぶ。

「ごめん、俺、いつも自分のことばっかりで。千尋がどんな気持ちで話してくれたのかとか、気付こうともしないで」
「シズってさ、変な詮索とか、人の裏を暴くようなことをしないじゃん。見えてる部分だけを見てくれるっていうかさ」
「それは何て言うか、良くも悪くも人に興味がないから」
「んー、まあ、そういう捉え方もあるよって話じゃん?オレ、シズのそういうところがすごく好き」

千尋はそう言うと、膝の上に抱えていたギターを降ろして立ち上がる。それから静の垂れた長い前髪を掬って耳に掛け、静の耳朶にそっと唇を寄せた。
近い、と思った時にはもう遅く、直後、耳元に熱を帯びた吐息を感じて、静は思わずぎゅっと目を瞑る。

「……オレ、絶対諦めないから」
「……っ!」

至近距離で響いた千尋の声は、いつも聞いているものとは比べ物にならないほど真っ赤に熟れていた。耳を通して、千尋の発した一文字一文字が絡むように体内へ流れ込んでくるような感覚に、静の喉がひゅうと鳴り、背筋が震える。

「じゃ、オレ練習戻るね」

千尋は抱えていたギターを椅子の上に寝かし、静に背を向ける。やがて、隣の音楽室の扉が閉まる音がして、電子のサウンドが僅かに流れ込んできた。

「……なに、今の」

ばくばくと加速する心臓がうるさくて、頭の中でいくつもの星がちかちかと弾けているようだった。静は首から上を真っ赤に染め上げてひとりごちると、力の抜けた体でへたりと床へ蹲った。
27/50ページ
スキ