生意気な年下にうっかり惚れられまして。
1000人以上を擁するこの会社で当然ながらすべての社員を覚えられるわけではなかったが、人付き合いが得意な椋太は顔見知りも多い方だ。
それにもかかわらず、初見で強い印象を残したこの男を覚えていないことが少々癪に思える。
だが今はそれを気にしている場合じゃない、と気を取り直してノートPCを開いた。
メンガー全員が揃うと、今回のプロジェクトリーダーである事業部長がモニターの前に立つ。
集まったのは、統括の事業部長の他は、椋太のいる営業・企画が2人、システムエンジニアが3人、デザイナーが1人と最低限の人数。
「――今日からこのメンバーが協力してやっていく仲間たちだ。
若手メインにアサインしているからといって、気を抜かずにしっかり頑張ってほしい。
なにかわからないことがあったらいつでも聞いてもらっていいから」
事業部長が口火を切ると、そのまま今回のプロジェクト概要を話し始めた。
システム、デザイン、営業とそれぞれ違う部署同士がそれぞれの担当分野を遂行していくのは今までとは変わりはなかったが、企画・営業側が受発注するスタイルではなく、企画時点からそれぞれがアイディアを持ち寄ってサービスを作るという形は椋太にとっては初めてだった。
新しい試みを任されるということに身が引き締まる思いで、これから共に戦う仲間たちを見つめる。
「まあ今回始めて絡むメンバーも多いだろうから、軽く自己紹介でもしようか。
名前、部署名、そうだな……趣味とか、簡単に人柄がわかるようなことを含めてくれるといいかな。
……そうだな、営業からいこうか」
ちらりと事業部長は椋太の顔をみる。
営業からというのは暗に空気を暖めろという意味ととり、椋太は緊張感を高めた。
「法人営業部のリーダー、白井椋太です。今回このプロジェクトにアサインされて、まず大変そうだなと思いました」
少しおちゃらけた口調で言うと、くすくす、と企画のあたりから笑い声が漏れる。
「やり甲斐がありそうなプロジェクトで、今から楽しみです。
クライアントを100社つれてくるつもりでがんばりますので、よろしくおねがいします!
――あと、人と話すことが好きなのでどんどん声かけてください。ランチでもお酒でも、いつでお誘いお待ちしてます」
まだまだ硬い空気を払拭するように、明るく声を発すると、緊張がほぐれるようにメンバーが笑顔になっていくのがわかる。
しかし、相変わらず一点からの鋭い視線を感じ、直視しないようにしつつもその方向を見やるとやはり先程の男だったことに気づく。
(何か変な噂でも回ってるのか……?)
人懐っこい笑顔とトークに、大抵の人からは好印象を抱かれる方であることは自他ともに認める椋太としては、なんとなくモヤモヤする。
素行には気をつけているつもりだったが、不安がよぎる。
極力社内では女性と仲良くはしても、恋愛にまでは発展しないように気をつけているつもりだった。
とはいえ、プライベートではそれなりには遊んでいたので、元カノの彼氏等、知らずうちになにか恨みを買っているということは否定できない。
とりあえず笑って誤魔化すか、と視線の方向に顔を上げて、笑顔を浮かべると、ますますその男の眉間にシワがよった。
(うーん、失敗したかな……まあ、喋ったら意外となんとかなるかもしれないし)
仕方なく視線を戻し、他メンバーの自己紹介を聞くことに頭を集中させた。
それにもかかわらず、初見で強い印象を残したこの男を覚えていないことが少々癪に思える。
だが今はそれを気にしている場合じゃない、と気を取り直してノートPCを開いた。
メンガー全員が揃うと、今回のプロジェクトリーダーである事業部長がモニターの前に立つ。
集まったのは、統括の事業部長の他は、椋太のいる営業・企画が2人、システムエンジニアが3人、デザイナーが1人と最低限の人数。
「――今日からこのメンバーが協力してやっていく仲間たちだ。
若手メインにアサインしているからといって、気を抜かずにしっかり頑張ってほしい。
なにかわからないことがあったらいつでも聞いてもらっていいから」
事業部長が口火を切ると、そのまま今回のプロジェクト概要を話し始めた。
システム、デザイン、営業とそれぞれ違う部署同士がそれぞれの担当分野を遂行していくのは今までとは変わりはなかったが、企画・営業側が受発注するスタイルではなく、企画時点からそれぞれがアイディアを持ち寄ってサービスを作るという形は椋太にとっては初めてだった。
新しい試みを任されるということに身が引き締まる思いで、これから共に戦う仲間たちを見つめる。
「まあ今回始めて絡むメンバーも多いだろうから、軽く自己紹介でもしようか。
名前、部署名、そうだな……趣味とか、簡単に人柄がわかるようなことを含めてくれるといいかな。
……そうだな、営業からいこうか」
ちらりと事業部長は椋太の顔をみる。
営業からというのは暗に空気を暖めろという意味ととり、椋太は緊張感を高めた。
「法人営業部のリーダー、白井椋太です。今回このプロジェクトにアサインされて、まず大変そうだなと思いました」
少しおちゃらけた口調で言うと、くすくす、と企画のあたりから笑い声が漏れる。
「やり甲斐がありそうなプロジェクトで、今から楽しみです。
クライアントを100社つれてくるつもりでがんばりますので、よろしくおねがいします!
――あと、人と話すことが好きなのでどんどん声かけてください。ランチでもお酒でも、いつでお誘いお待ちしてます」
まだまだ硬い空気を払拭するように、明るく声を発すると、緊張がほぐれるようにメンバーが笑顔になっていくのがわかる。
しかし、相変わらず一点からの鋭い視線を感じ、直視しないようにしつつもその方向を見やるとやはり先程の男だったことに気づく。
(何か変な噂でも回ってるのか……?)
人懐っこい笑顔とトークに、大抵の人からは好印象を抱かれる方であることは自他ともに認める椋太としては、なんとなくモヤモヤする。
素行には気をつけているつもりだったが、不安がよぎる。
極力社内では女性と仲良くはしても、恋愛にまでは発展しないように気をつけているつもりだった。
とはいえ、プライベートではそれなりには遊んでいたので、元カノの彼氏等、知らずうちになにか恨みを買っているということは否定できない。
とりあえず笑って誤魔化すか、と視線の方向に顔を上げて、笑顔を浮かべると、ますますその男の眉間にシワがよった。
(うーん、失敗したかな……まあ、喋ったら意外となんとかなるかもしれないし)
仕方なく視線を戻し、他メンバーの自己紹介を聞くことに頭を集中させた。