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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

「その前までは遊んでそうだし、あまりいい印象はなかった」
「随分ないわれようだな」

椋太が苦笑すると、澤村は決まりの悪い顔をした。

「仕方ない、白井さんは仕事はできるけど、女関係は……と」
「濁さなくていいよ、噂は知ってる。それ、嘘だからな」

以前、同じ人を好きになった同僚が、最終的に椋太が選ばれた事を恨んで変な噂を流されたことがあったのだった。

「まあ言っても仕方ないけど、俺は一人しか付き合わないし、浮気もしたことないよ」
「ああ。そういうことができるとは今は思っていない。白井さんは案外義理堅いし、筋は通す人だ」
「案外、は余計だろ」

静かにお互いに笑みをこぼす。

「でも、ありがとう」
「別に……」

澤村は少し照れたように顔をしかめた。

「話は戻すが。企画コンペで見直したというか……正直びっくりした」
「うん」

椋太は手に持ったミルクに口をつける。

「それで、実際にプロジェクトに所属して、一緒に働けば働くほど……俺がこうしたいなっていう働き方をしてるなって」
「買いかぶり過ぎだろう」
「いや。俺は白井さんみたいに臨機応変にには動けないし、プログラマ視点ですぐものを考えてしまう」

(澤村って、そんなこと考えてたんだな……)

「いつも憎まれ口叩いてばかりなのにな」
「……あまり人と話すのは得意じゃない」
「知ってる」

無愛想な態度とは裏腹に、仲間やクライアントのことを思って仕事をしているのはこの1年で心得ていた。

「うん、知ってる。言葉は悪いけど、澤村がいろいろ考えてるって」
「……」

澤村はその言葉に、静かに視線を向ける。
朝の光がキラキラと輝く中、沈黙が降りる。
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