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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

「……なんでもない」

少しふくれっ面で椋太が返すと、澤村はくしゃりと顔を崩すように笑った。

「――なんだ、そういう顔もできンじゃん」
「あー……変な顔してたか」
「いや、笑った顔かわいーよ」

素直に薄く微笑みながら返すと、澤村は少し困った顔をする。

「あんたも……そういう素の笑顔、あんま見せんな」
「お。俺もかわいかった?」

茶化しながら言うと、澤村はもっと困ったように顔をしかめた。

「……アンタにはかなわないな」

苦笑しながら、澤村は手に持っていたパンと牛乳の入ったグラスを手渡した。

「これでよかったか?」
「ったく、せめて皿に乗せろ」
「どれかわからなかった」
「はいはい、そうですね」

初めて愛し合った翌日とは思えない減らず口だったが、いつもどおりの空気にむしろ椋太はほっと息をついた。

雑にベッドの上にあぐらをかきながら、袋に入ったパンをくわえる。
ブランケットをかけてはいるが、全裸のままでだらしなく食べている姿は、適当のわりには気だるげで色っぽい。

「はー生き返る。ホントはサラダとかベーコンエッグとか食べたいけど」
「コンビニ探して買ってくるか?」
「別にいいよ、待つのも面倒だし、それなら作るほうが早いけどそれも面倒」

案外と澤村はまめまめしく世話をやく。
だが調理は思いつかないあたり、そこまではまめではないようだった。
いいようにされた腹いせに、椋太はそのまま特に指摘もせず身を任せる。

「あのさー聞きたかったんだけど。俺のどこが好きなん」
「ぶっ……」

思わぬ質問だったのか、澤村は吹き出す。

「ちょっと、汚いな。食べ物飛ばすなよ?」
「……大丈夫だ」

あまり変なこと言うなと小さくつぶやきが漏れる。

「そんな変なこといってないし。そもそもさあ、ホント好きっていったくせに放置するしさ」
「仕方ないだろ、アンタはノンケだし、あまり気持ちを押し付けたくなかったしな」
「まあ、それは聞いたけどサ」

パンに埋め込まれたコーンをつまみ出して食べる。
たまには自堕落な休日もいいかな、と椋太はパンを小さくちぎって口に押し込んだ。
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