「ていうか、白井さんは。何考えてるのかわからない」
「お、酔っ払ってる？」

いつもと違うだいぶ砕けた口調に、椋太も緩んだ頭で反射的に答える。

「いや、酔っ払ってはいない」
「……酔っぱらいってそういうよな、軒並み」
「そんなことはない」

澤村は手にした缶をじっと見つめている。

「うーん、まあ。解説すると……一つ、告白した割にはツレない態度に業を煮やしたから」
「はあ」
「一つ、生意気な年下にずっと言われっぱなしは癪だから」

好きな相手に嘘ついても仕方ないし、今更取り繕ってもどうなんだろうというごく合理的な考え方で椋太は何の衒いもなしに気持ちを伝える。
澤村小さく笑った。

「なんだよ」
「いや、そういうところが好きだなって」
「ぶー、どういうところだよ」

不満げに椋太が頬をふくらますと、また小さく笑った。

「案外子供っぽいな、あんた。――なんていうか、腹が据わったあんたは、開き直るというか。繕わずにきちんと伝えてくるところが好きなんだ」
「そうか？……あんま意識してないけどな」
「そうなんだよ。俺意外と白井さんマニアだからな」
「そうなんだ」
「そうなんだよ」

何時もより少し饒舌で、すこし甘い口調。
自分が思っても見なかった部分を見られているのは少しくすぐったくて、でも嬉しい。

「あんた、かわいいんだよ。そういうところが」

突然目の前が暗くなる。
唇にふわりと柔らかい感触を感じる。

（案外、澤村ってなんつーか、慣れてるよな……）

部屋にはいるときはドキドキと高鳴っていたのに、今は妙に冷静さを保ちながら口付けを受け止めている自分に驚く。

角度を変えて、幾度と無く触れる。
導かれるように薄く口を開けると、するりと舌が入り込んだ。

「ん……」

ごく自然に、同性なのに、キスをしている。
そう思いながら、でも二度目だしな、と椋太は素直に受け入れる。

「っ」

ゾクリと下半身に直結しそうな衝撃が背筋を伝って感じる。

（俺、コイツとヤリたいんだ）

椋太は素直にそう理解した。