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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

食事休憩の後、原因不明のバグは澤村の粘り勝ちでみごと原因を解明し、てっぺんは越えたものの、椋太もできるかぎりデバッグに付き合うことによって修正することができた。

終電はとうに終わっていて、始発待ちをして一旦家に着替えに戻ることにする。

「あーーーなんか眠さふっとんだわ」
「わかる」

仮眠、といいながらただ地べたに二人で寝転がる。
修羅場の開発ではパイプ椅子を3つ並べてベッド、などと言うものもいるようだったが、実際寝心地もわるく、汚れを無視してカーペットに転がることを選んだ。

「なんか合宿みたいだな、好きな子の話とか告白しあったりとかさ」

くくくく、と椋太は思い出し笑いをする。

「俺はすぐ寝るが」
「あーそう、マジレスあんがとな。真面目か」
「……あまりそういう奴らと馴染みがなかっただけだ」

澤村は真っ暗な天井を見上げる。

「まー俺も実際人に言わせて自分が言わないとかけっこう姑息なことしてたな。実際は恥ずかしいしな」

椋太の雑な告白に、ふふ、と澤村が笑うような吐息が漏れる。

「白井さんらしい」
「んだよー。でも今聞かれたら俺、ちゃんと“好きなのは澤村”って答えるよ」

信じてほしくて、最後の言葉は真摯な音を発する。
ふいに澤村がこちらを振り返った。その大きな黒い瞳を椋太はじっと見つめる。

「好きだよ、澤村」
「……」

椋太は澤村の顎を強引に引き寄せると、その唇に自分の唇を重ねた。
ちゅ、と小さな音を立ててすぐ離れる。

さすがの不意打ちに澤村の目も大きく開かれた。
切れ長の目がきれいだな、と椋太は瞳の縁を見つめる。

息を呑む音がしたのち、そのまま気がつくと椋太は澤村の腕の中に抱き込まれていた。

「っ……いてぇ、優しく、しろ」

苦情はそのまま澤村の唇に吸い込まれた。
薄く開かれた唇に甘く濡れた膚触を感じる。

そのまま何もかも奪われる感覚にぞくりと背筋に震えが走るが、理性からか優しくなんども口付けられるだけで焦らされる。

「今は、だめだ」

椋太の気持ちを察したように澤村はすこし意地悪そうに答えた。

「……生意気」
「ああ」

お互いにくすりと笑うと、二人はそのまま抱き合うように眠りにおちた――
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