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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

「……」

沈黙が降りる。
コンピューターの機械音って案外大きいんだな、と思うほどには数十秒ほど声どころか身動ぎする音すらなかった。

(あーあ、固まってる)

椋太が呆れてしまうほどに、澤村は目を少し開いて微動だにしない。

「あのー……」

ぴく、と澤村の眉が動く。

(あ、生きてた)

「ごめん、いきなり」
「……いや」

(いや、で止めるなよっ。って俺のせいとはいえ、案外手間が焼けるな)

そう思うと面白くなってくる。

「あ、もうお前、俺のこと好きじゃない?」

そう問うと、無言でぶるぶるっと顔を横に振った。

「くっ。犬かよ」
「犬じゃない」
「そーいうことは突っ込むんだ」

混乱しているんだろうな、と思いつつもからかいたくなってくる。

(とまあ、ちっとかわいそうかな)

「男同士でのオツキアイっていうのがどういう感じなのか俺にもわからないけど、恋人にならね?ってこと」
「からかってるのか?」

間髪入れずに言われる。
先程よりはすこし睨むような視線。少し遊びすぎたか。

「いや、至って真剣。結構真面目に語ったとおもうんだけどなあ、って今が胡散臭いか」

うんうん、と頷く。

「まあ今のタイミングじゃあ、この修羅場越えないとなんにもならないけどさ。
とりあえずコレ終わったらお前んち遊びにいっていい?」
「はあ……」

今度は無表情の中にも呆れたような顔。
わかりづらいとはいえ、意外と表情豊かなんだな、と椋太は思った。

「あ、うちに来てもいいぜ、うち会社から近いしワリト、こっから地下鉄で2駅。住宅手当でないとキツイけどな」
「はあ……まあ、アンタんちは行ってみたい、けど」

狐につままれたような表情だが、少しは慣れてきたのかもしれない。

「ま、とりあえず改めてよろしくな彼氏サン」

無理やり澤村の大きな手を取って、握手する。
ひんやりとした手がすこししっとりとしていて、緊張しているのかなと思った。

「彼氏……」
「そうだろ?」
「まあ……」
「決まりっ。ダーリンって呼んでいいからな。って嫌そうな顔するな、嘘だよ」
「……」

いまいち腑に落ちていないような表情だったが、これから理解らせてやるからな、と椋太は澤村が困惑しそうな決意をしたのだった。
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