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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

(そんなことはない、と言っても。今現に目をそらしてンじゃねーか)

気持ちは晴れぬまま、二人は会社に戻った。

戻ってからプロジェクトメンバーを集めて緊急会議を開き、事の経緯を報告する。
企画、システム、デザインとそれぞれの意見をもとに擦り合わせる。

「追加分の仕様書は今日明日にはたたき台を作れると思います」
「問題はシステムだな。今他のチームも忙しいから、ひっぱれて一人がいいところだな……あとは俺達がなんとかするしかない」
「デザインは前倒しで進んでるし、コーディングなら他のチーム引っ張ってきちゃうからページ増えてもデザインはなんとかなりそうよ」

すでに半年以上はこのプロジェクトに費やしてきたメンバーは、共通の敵にたいして、それぞれが今出来ることをとにかくやるという気持ちは一つだった。
その上で、スケジュールは要調整となるものの、クライアントからの要望はできるだけ実現する方向で調整することが決定した。

「……俺たち営業は出来ることは正直今は少ない。けど、こういう話になった原因の一旦は俺にもあるし、デバッグとかできるとものは手伝うからなんでも言ってくれ」

今必要なのはそれこそ澤村たちプログラマがあと1、2人は……欲を言えばあと3人欲しいといったところだった。
営業に出来ることなぞたかが知れているのはわかっている。
でも何もできずにただ澤村たちの作業を指を咥えて見ているだけではいられなかった。

「もちろん、白井さんたちにもがんばってもらうわよ」
「正直自分たちでのチェックも間に合わなくなると思うから、ガンガンデバッグしてもらったりしたいしね~」

からかう様に答えるデザインの佐東女史、システムの井村も笑顔でサムズアップする。

(いろいろと外部要因には悩まされるが……恵まれたメンバーで、本当によかった)

澤村とのことはまだ気重ではあったが、今はそうも言ってられなかった。とにかく目標に向かって突き進むしかない。

(忙しければ、気にならなくなるさ)

遠くで話している澤村の後ろ姿を見ながら、椋太は少し物憂げな笑顔を浮かべたのだった。
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