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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

3階で降りると、フロア内にあるカフェのカウンターへと並ぶ。
あまり食欲が無いときの定番にしている、スピナッチのサンドウィッチとカフェラテを頼んだ。

顔見知りの店員が笑顔でラテアートを見せてくれるのに作った笑顔を貼り付けると、受け取って席につく。

(仕事はちゃんとやってくれてるだろ?それでいいはずだ)

言い聞かせるように思うこと自体、何かを誤魔化しているようで自分で気持ち悪くなる。
本当は何をしたいのか。

あの時、その場で考えうる精一杯の気持ちを伝えたつもりではあったが、改めて考えてみてもいかんとも言いがたい返事だったと後悔の念がじわじわと椋太の心を蝕む。
「よくわからない」という言葉は答えとして適切ではなく、たんなる回答を先延ばしにしただけなのではないかと思い悩む。

(よくわかんないってなんだよ、な……そりゃ、澤村だって、微妙だよな)

手にしたサンドウィッチを大口を開けてかじる。
きのこの香りとカリカリのベーコンがほうれん草と調和して相変わらず好すきな味だと心は少しだけ浮上するが、思考の流れはむしろ濁流となって椋太に押し寄せる。

誠意が足りなかったんじゃないのか、ちゃんと考えて答えをあとからでも出すべきではないのか。
でも今更、澤村は明確な答えが欲しいとは思ってないかもしれない。後から考えてあれこれ伝えられても困るのではないか。

恋愛は一通りいろいろな経験をして慣れているはずなのに。男も女も恋には変わらないはずなのに。
うまくコントロールできない自分にイライラとする。

(でも今まで、本当に彼女たちにこうして真摯に向かい合えていたのか……?)

今まで付き合ってきた恋人たち。とても好きだったし、その恋に嘘はないと思う。
けど、ここまでしっかりと考えたことはなかったんじゃないかと思う。

正直なところ同性同士というのは、通常よりハードルが高いし、考えても見なかったことだった。
それだからこそ深く周到にこのインシデントについて考えているのではないかと思う。

そうであれば、差別をしたくないという自己満が多分に含まれるのではないかという疚しい気持ちも拍車をかけ、さらに自分という人間の小ささに慙愧の念に堪えなくなる。

普段あまりネガティブに考える方ではなかったが、それは単に楽な方へうまく舵を切りやすかっただけだとぼんやり思う。

じゃあどうすればいいのか。
まだその答えは出なかった。
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