01
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この物語は、私の居ないところで始まっていて……私の意志も感情も記憶も全部、やがて飲み込まれていく物語。
「おはよー……」
ムックルの鳴き声で目を覚ます。
起きてすぐ見るのが家の天井なのは久しぶりだ。ずっと旅をしていたから、外で寝るのが癖になってて一瞬びっくりしてしまった。
フラフラと階段を下りていくと、お母さんがキッチンから顔を出して私を手招きしてる。
「はいはいおはよ。ほら顔洗って、ご飯ももうできてるから皆も出してさっさと食べちゃってー!」
「んー」
言われるがまま目をこすりながら顔を洗って、ポケモン達とご飯を食べて、身支度を整える。
久しぶりに柔らかいベッドで寝たからなんだか体が変な感じだ。
「おばあちゃんのお墓参り行くんでしょ?しゃきっとしなさい」
「わかってるー」
そう、久しぶりに旅から帰ってきたのは、今日がおばあちゃんの命日だから。
私が生まれる前に死んじゃってたから会ったことはないんだけど……ここ、シンオウ地方の神様に仕える「アルセウスの巫女」の次期……なんだっけ?とにかく次に巫女になる人間として、先代に挨拶をしなきゃならないんだ。
ちなみに今の巫女はお母さん。普通の人に見えるけど、儀式用の服を着ると別人みたいになる。
「まったく。旅の最中でもあんまりだらしない生活してちゃダメよ?きちんと朝は起きて、夜更かしせずに寝る。日ごろから習慣に……」
「んー」
「立ったまま寝ないの!」
ほっぺをペシペシ叩かれて、さっさと行けと背中を押されて玄関へ向かわされた。
見かねたのかボールから飛び出してきたゾロアークが先導するように手を引いてくれる。
「頼んだわよ。どーせお墓参りが終わったらまたどっか行くんだろうし、お花とかは私が供えに行くからお掃除だけしてあげてね」
「はぁーい……いってきまぁす」
「キャウ!」
「……もー、トレーナーよりポケモンがしっかりしてどうするのよ」
ため息を後ろ背に聞きながら、久しぶりに帰ってきた家から出てお墓へと向かう。
家から少し歩いた先にある豪奢なお墓、というかもはや城。
昔アルセウスを呼び出してパートナーにしたっていうおばあちゃんの功績を称えて建てられた、特別なお墓。
「久しぶり、おばあちゃん。お掃除させてもらうね」
挨拶もそこそこに掃除を始める。
いつも誰かしらが掃除してるからそんなに汚れてはいないけど、気持ち的にすっきりした。
「キュ?」
「も―ちょっとで終わるから待っててねー」
キョロキョロするゾロアークに声をかけながら墓石の前に膝をつく。
一通り昔から教わっていた作法での先代へのあいさつも終わり、ふと目を開いた。
「……これ、何なんだろう」
いつもは気にならない、小さな違和感に気が付いてしまった。
あんまり触らないように言われてるけど、好奇心が先行してつい墓石の横にある何かのマークに手を触れさせてしまう。
「うわっ」
その瞬間、カタンと音がしてお墓の前の部分が開いた。
バネ仕掛けになってたみたいで、勢い良く動いたことにびっくりした私は尻もちをつく。
「キュ?」
「大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」
心配そうに手を差し出すゾロアークが差し出した手を握って立ち上がる。
改めてお墓を確認してみると、開いた場所の中に何かが入っていた。
「……?」
専用に作られたくぼみにはめ込まれているのは、細長い棒。いや、笛だ。
「てんかいのふえ」?いやでも儀式に使う物とも別だし、おばあちゃんの私物かな?
考えながら何気なくそれに手を伸ばす。
指先が触れたその瞬間。
「まぶしっ!」
すさまじい光が放たれたかと思うと甲高い音が耳を支配する。
パニックになったゾロアークの絶叫がかろうじて耳に届いた。
目を開けられないほどの光の中、どうにか無理やりに目を開く。
(なに……?かい、だん?)
目に入ったのは光でできた階段のごく一部。
もっとよく見ようとしたけど、光はさらに増し、まぶしさに再び目を閉じると今度は何かの気配が一瞬で目の前に現れた。
「……ぇ」
一瞬だけ収まった光の中で、まだ明るさの調整ができていない私の眼球がとらえたのは。
「―――」
何かの声と、同時に振り下ろされた鋭い何かだった。
「かくして次期アルセウスの巫女、なまえの人生は幕を閉じたのだった」
「……」
「不慮の事故、触れてはならぬものに触れた罪、はたまた神の気まぐれか……とにもかくにもお前は死んだ。これにて終わり、さぁ目を閉じて眠るといい」
「な……に?」
心地いい声が鼓膜を震わせる。
……鼓膜?あれ、音ってどうやって聞いてたの?……鼓膜って、どこ、耳ってどこ……。
「俺への返事はいらん。よいよい、そのまま溶けていけ……死者がもう考える必要もないだろう、穏やかに終わりなさい」
そうだ、私は死んだ。ならこのまま、きえて、なくなる。
「…、……」
もうこえも、しない。
全身が解けて消えていく感覚に身を任せようとした瞬間。怒号と言い表すのは生ぬるいほどの怒りの感情とともに、私の意識は何かに猛烈な勢いで引っ張り上げられた。
「……あ、……ぅ」
「喋るな、舌を噛むぞ。あぁ噛む舌もなかったな。では好きにしていろ」
「ん……」
何かに引きずられる感覚は気持ち悪いけど、どうにもできないので身を任せる。
薄れゆく意識の中で見たのは、何だったか。
考えたのはほんの数秒だけ、あっという間に意識は消えていった。
「おはよー……」
ムックルの鳴き声で目を覚ます。
起きてすぐ見るのが家の天井なのは久しぶりだ。ずっと旅をしていたから、外で寝るのが癖になってて一瞬びっくりしてしまった。
フラフラと階段を下りていくと、お母さんがキッチンから顔を出して私を手招きしてる。
「はいはいおはよ。ほら顔洗って、ご飯ももうできてるから皆も出してさっさと食べちゃってー!」
「んー」
言われるがまま目をこすりながら顔を洗って、ポケモン達とご飯を食べて、身支度を整える。
久しぶりに柔らかいベッドで寝たからなんだか体が変な感じだ。
「おばあちゃんのお墓参り行くんでしょ?しゃきっとしなさい」
「わかってるー」
そう、久しぶりに旅から帰ってきたのは、今日がおばあちゃんの命日だから。
私が生まれる前に死んじゃってたから会ったことはないんだけど……ここ、シンオウ地方の神様に仕える「アルセウスの巫女」の次期……なんだっけ?とにかく次に巫女になる人間として、先代に挨拶をしなきゃならないんだ。
ちなみに今の巫女はお母さん。普通の人に見えるけど、儀式用の服を着ると別人みたいになる。
「まったく。旅の最中でもあんまりだらしない生活してちゃダメよ?きちんと朝は起きて、夜更かしせずに寝る。日ごろから習慣に……」
「んー」
「立ったまま寝ないの!」
ほっぺをペシペシ叩かれて、さっさと行けと背中を押されて玄関へ向かわされた。
見かねたのかボールから飛び出してきたゾロアークが先導するように手を引いてくれる。
「頼んだわよ。どーせお墓参りが終わったらまたどっか行くんだろうし、お花とかは私が供えに行くからお掃除だけしてあげてね」
「はぁーい……いってきまぁす」
「キャウ!」
「……もー、トレーナーよりポケモンがしっかりしてどうするのよ」
ため息を後ろ背に聞きながら、久しぶりに帰ってきた家から出てお墓へと向かう。
家から少し歩いた先にある豪奢なお墓、というかもはや城。
昔アルセウスを呼び出してパートナーにしたっていうおばあちゃんの功績を称えて建てられた、特別なお墓。
「久しぶり、おばあちゃん。お掃除させてもらうね」
挨拶もそこそこに掃除を始める。
いつも誰かしらが掃除してるからそんなに汚れてはいないけど、気持ち的にすっきりした。
「キュ?」
「も―ちょっとで終わるから待っててねー」
キョロキョロするゾロアークに声をかけながら墓石の前に膝をつく。
一通り昔から教わっていた作法での先代へのあいさつも終わり、ふと目を開いた。
「……これ、何なんだろう」
いつもは気にならない、小さな違和感に気が付いてしまった。
あんまり触らないように言われてるけど、好奇心が先行してつい墓石の横にある何かのマークに手を触れさせてしまう。
「うわっ」
その瞬間、カタンと音がしてお墓の前の部分が開いた。
バネ仕掛けになってたみたいで、勢い良く動いたことにびっくりした私は尻もちをつく。
「キュ?」
「大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」
心配そうに手を差し出すゾロアークが差し出した手を握って立ち上がる。
改めてお墓を確認してみると、開いた場所の中に何かが入っていた。
「……?」
専用に作られたくぼみにはめ込まれているのは、細長い棒。いや、笛だ。
「てんかいのふえ」?いやでも儀式に使う物とも別だし、おばあちゃんの私物かな?
考えながら何気なくそれに手を伸ばす。
指先が触れたその瞬間。
「まぶしっ!」
すさまじい光が放たれたかと思うと甲高い音が耳を支配する。
パニックになったゾロアークの絶叫がかろうじて耳に届いた。
目を開けられないほどの光の中、どうにか無理やりに目を開く。
(なに……?かい、だん?)
目に入ったのは光でできた階段のごく一部。
もっとよく見ようとしたけど、光はさらに増し、まぶしさに再び目を閉じると今度は何かの気配が一瞬で目の前に現れた。
「……ぇ」
一瞬だけ収まった光の中で、まだ明るさの調整ができていない私の眼球がとらえたのは。
「―――」
何かの声と、同時に振り下ろされた鋭い何かだった。
「かくして次期アルセウスの巫女、なまえの人生は幕を閉じたのだった」
「……」
「不慮の事故、触れてはならぬものに触れた罪、はたまた神の気まぐれか……とにもかくにもお前は死んだ。これにて終わり、さぁ目を閉じて眠るといい」
「な……に?」
心地いい声が鼓膜を震わせる。
……鼓膜?あれ、音ってどうやって聞いてたの?……鼓膜って、どこ、耳ってどこ……。
「俺への返事はいらん。よいよい、そのまま溶けていけ……死者がもう考える必要もないだろう、穏やかに終わりなさい」
そうだ、私は死んだ。ならこのまま、きえて、なくなる。
「…、……」
もうこえも、しない。
全身が解けて消えていく感覚に身を任せようとした瞬間。怒号と言い表すのは生ぬるいほどの怒りの感情とともに、私の意識は何かに猛烈な勢いで引っ張り上げられた。
「……あ、……ぅ」
「喋るな、舌を噛むぞ。あぁ噛む舌もなかったな。では好きにしていろ」
「ん……」
何かに引きずられる感覚は気持ち悪いけど、どうにもできないので身を任せる。
薄れゆく意識の中で見たのは、何だったか。
考えたのはほんの数秒だけ、あっという間に意識は消えていった。
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