✣琴弾の女✣
女は、傍目から見ても異様な雰囲気を醸していた。
血の気のない青白い肌に 濃紺の着物。
長く伸ばされた黒髪は紙縒で緩く結ばれ、余った毛束は床へと長く散らばっている。
閉じられた唇は 肌と同じく血色が悪く、か細い指先で器用に琴を奏でていた。
そして、一際その異様さを 引き立てているものは、女の目だ。
包帯で二重にも三重にも巻かれたその目は、陽の光すら通していないように見える。
「それで、何故、薬売りのお人が化け物などを求めてこの山奥へ?」
「斬りに、来たんです。モノノ怪を、ね。」
「ほぅ。モノノ怪、とな。」
女はあいも変わらず 弦を弾き続けている。
「ええ。この世ならざるモノを、そのままにしては置けない、のでね。」
突然、弦を強く弾いた方思うと 女はピタリと琴を弾く手を止めた。
「御言葉ですが、薬売りのお人よ。此処にはその様なモノは憑いておりませぬ故。今日はもう 遅い。さぁ、日の暮れぬうちに、どうぞ、お引き取り願いたく存じます。」
空を見ると、先程まで澄んだ青色をしていた空がすっかり暗くなり 紫色へと変わっていた。訝しむ様に それを睨みつけ 「そうですかい、では。」と 浅く頭を下げて、屋敷を後にした。
暗く、ぬかるんだ山道を下駄が跡をつけながら下っていく。 _______退魔の剣が 反応しなかった。やはり只の噂話に過ぎなかったのだろうか。 いや、そんなはずはない。あの琴弾きの女は、何かを隠している。
「こいつぁ少々、面倒な事になりそうだ。」
血の気のない青白い肌に 濃紺の着物。
長く伸ばされた黒髪は紙縒で緩く結ばれ、余った毛束は床へと長く散らばっている。
閉じられた唇は 肌と同じく血色が悪く、か細い指先で器用に琴を奏でていた。
そして、一際その異様さを 引き立てているものは、女の目だ。
包帯で二重にも三重にも巻かれたその目は、陽の光すら通していないように見える。
「それで、何故、薬売りのお人が化け物などを求めてこの山奥へ?」
「斬りに、来たんです。モノノ怪を、ね。」
「ほぅ。モノノ怪、とな。」
女はあいも変わらず 弦を弾き続けている。
「ええ。この世ならざるモノを、そのままにしては置けない、のでね。」
突然、弦を強く弾いた方思うと 女はピタリと琴を弾く手を止めた。
「御言葉ですが、薬売りのお人よ。此処にはその様なモノは憑いておりませぬ故。今日はもう 遅い。さぁ、日の暮れぬうちに、どうぞ、お引き取り願いたく存じます。」
空を見ると、先程まで澄んだ青色をしていた空がすっかり暗くなり 紫色へと変わっていた。訝しむ様に それを睨みつけ 「そうですかい、では。」と 浅く頭を下げて、屋敷を後にした。
暗く、ぬかるんだ山道を下駄が跡をつけながら下っていく。 _______退魔の剣が 反応しなかった。やはり只の噂話に過ぎなかったのだろうか。 いや、そんなはずはない。あの琴弾きの女は、何かを隠している。
「こいつぁ少々、面倒な事になりそうだ。」
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