▶︎ 森田 田村
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なんでやろ。
なんで保乃は誕生日直前、外に居るんやろ。
ほんまなら、暖かい部屋で彼と一緒に笑い合って、プレゼントなんか貰っちゃったりして、それなりに幸せな空間に居たはずやのに。
殴られた頬が痛い。
いつから保乃は道を踏み間違えちゃったんかな。
いつから彼はあんな風に変わり果ててしまったのかな。
全部、保乃のせいなんかな。
森田「保乃、ちゃん?」
「…?ひぃ、ちゃん?」
森田「ほんとに保乃ちゃんなん?」
「久々やね。元気しとった?痩せたね、更に綺麗に…その傷どうしたと、誰にやられたん?」
高校時代の元恋人ひぃちゃんに、数年ぶりに再会して、胸が高鳴ってしまっているのは今でも保乃の中での1番が彼女で、こうして保乃に優しさを向けてくれる彼女が好きで仕方ないから。
「これは、その、」
森田「付き合っとる人?」
「…うん、今日別れた、けど、」
森田「そっか、取り敢えず、寒いやろ、私ん家近いけ、行こう?」
「良いん?その恋人とか、居らんの?」
森田「ふふ、居らんよ。」
「風邪引いちゃう前に、ほら、行こ。」
久々に繋いだ彼女の手。小さくて、暖かくて、ちょっと骨張ってる、保乃の大好きな手。
頬の痛みもひぃちゃんを前にしたらどうでも良くなってしまった。
数分歩いて、辿り着いたのはそれはそれは大きなマンション。ほんまに合ってるん?なんてドギマギしながらも、ひぃちゃんについて行けば部屋に通されて、動物やキャラクターのぬいぐるみで溢れ返ってる室内が目に入る。
ほんまにひぃちゃんの住んでいる所なんや。
森田「座っとって。飲み物と消毒用意するけ、」
「そんな気使わんで、保乃は大丈夫やから。」
森田「大丈夫な訳ないやろ。」
「保乃ちゃんは、お姫様なんよ、大事に扱われなきゃいけない存在なの、ちゃんと自覚して。」
保乃のプリンセス好きを加速させたのは間違いなくひぃちゃんやと思う。過保護で、王子様気質な所は今も変わってないんやな。
「ふふ、ありがとう。」
森田「ん、って、あ!もうすぐ保乃ちゃん誕生日やん!どうしよ、後15分で誕生日になっちゃう。ケーキない、空いてるお店も、分からん。」
「そんなええよ、今更やし、それにひぃちゃんが保乃の誕生日覚えててくれただけで嬉しいで?」
森田「そんなん、覚えとるよ。忘れるわけなか、朝起きたら一緒にケーキ買いに行こう?」
「嬉しい、行きたい。」
森田「ん、じゃあそうしよう、」
「って、久々の再会にしては緊張感無さすぎやね、」
「ふふ、ほんまやなぁ、」
森田「よいしょ、ん、保乃ちゃんこっち向いて。」
「ん?」
森田「消毒、ちょっと痛いかもやけど、我慢してね。」
「ん…、ったぁ、」
森田「赤くなっとる、ほんとにもう大丈夫なん?」
「うん、一応もう別れようって言ってきたし、彼もなら出てけって感じやったから。」
森田「そっか、でも別れて正解やね。」
「保乃ちゃんを傷つけるような男なんかに価値ないけ、」
「ふふ、ひぃちゃん保乃の事大好きやん。」
森田「当たり前だよ。卒業式の日さ、保乃ちゃんが2人とも忙しくなって自然消滅しちゃうのは嫌やから別れたいって言ったやん?」
「うん、」
森田「本当は止めたかった。嫌だっち言いたかった。けど、それで保乃ちゃんを縛る方が嫌やったけ、あの時は頷いた。」
卒業式の日、保乃が別れを告げた時、ひぃちゃんは鼻を真っ赤にしながら涙を沢山流しながら、言いたいことを全て飲み込んだような笑顔で、分かったと、頷いてくれた。
ほんまはずっと後悔してた。
別々の大学に進んで、ひぃちゃんが他の人を好きになってしまう未来が怖くて、逃げるように、ひぃちゃんを振ったんだ。
好きなのに、大好きなのに、来るかも分からない未来に怯えて、弱くなってしまった。
森田「でもやっぱり、保乃ちゃんに会っちゃったら、駄目だった。今でも好きだよ。保乃ちゃんの事が、好きで堪らん。」
「っ…、」
森田「馬鹿な事言いよるのも分かっとる、でも、保乃ちゃんを大切にするのは私がいい。私じゃなきゃ嫌だ。」
ぎゅぅっと抱き締められた身体はずっとこの温もりを求めていたと言わんばかりに高揚して、気が付けば、ひぃちゃんの背中に腕を回して、保乃もずっと好きやった、なんて言葉を零していた。
森田「っ…、ほんとに?」
「うん、ひぃちゃんを忘れようって思って彼と付き合ったけど、駄目やった。保乃、ひぃちゃんじゃないと幸せになれへん。」
森田「保乃ちゃんのこと、幸せにしてもいい?」
「はい、幸せにしてください。」
そんなやりとりを交わし、時計を見れば、針は丁度12時を指していて、最高の誕生日プレゼントやなぁなんて思う。
森田「へへ、幸せ、」
「保乃も。」
ソファーに2人並んで、離れていた長い間の話をお互いに交わす。
保乃を追いかけて上京してきた事、いつか見つけて貰えるようにと会社を立ち上げたら、それが大成功した事、野良猫を追い掛けていたら保乃を見つけた事、最初からついさっきの事まで、嬉しそうに話すひぃちゃんは、あの時と何も変わっていなくて、でも、やっぱり何処か大人になっていて、好きな人の変化を近くで感じられなかったことに寂しさを覚えた。
「なぁ、ひぃちゃん?」
森田「ん?」
「これからはたくさん、色んなひぃちゃんを見せてな?」
森田「ふふ、もちろん。保乃ちゃんこそ、沢山見せてね。」
「当たり前やん。」
森田「改めて、誕生日おめでとう。」
「生まれてきてくれて、本当にありがとう。」
-fin-
なんで保乃は誕生日直前、外に居るんやろ。
ほんまなら、暖かい部屋で彼と一緒に笑い合って、プレゼントなんか貰っちゃったりして、それなりに幸せな空間に居たはずやのに。
殴られた頬が痛い。
いつから保乃は道を踏み間違えちゃったんかな。
いつから彼はあんな風に変わり果ててしまったのかな。
全部、保乃のせいなんかな。
森田「保乃、ちゃん?」
「…?ひぃ、ちゃん?」
森田「ほんとに保乃ちゃんなん?」
「久々やね。元気しとった?痩せたね、更に綺麗に…その傷どうしたと、誰にやられたん?」
高校時代の元恋人ひぃちゃんに、数年ぶりに再会して、胸が高鳴ってしまっているのは今でも保乃の中での1番が彼女で、こうして保乃に優しさを向けてくれる彼女が好きで仕方ないから。
「これは、その、」
森田「付き合っとる人?」
「…うん、今日別れた、けど、」
森田「そっか、取り敢えず、寒いやろ、私ん家近いけ、行こう?」
「良いん?その恋人とか、居らんの?」
森田「ふふ、居らんよ。」
「風邪引いちゃう前に、ほら、行こ。」
久々に繋いだ彼女の手。小さくて、暖かくて、ちょっと骨張ってる、保乃の大好きな手。
頬の痛みもひぃちゃんを前にしたらどうでも良くなってしまった。
数分歩いて、辿り着いたのはそれはそれは大きなマンション。ほんまに合ってるん?なんてドギマギしながらも、ひぃちゃんについて行けば部屋に通されて、動物やキャラクターのぬいぐるみで溢れ返ってる室内が目に入る。
ほんまにひぃちゃんの住んでいる所なんや。
森田「座っとって。飲み物と消毒用意するけ、」
「そんな気使わんで、保乃は大丈夫やから。」
森田「大丈夫な訳ないやろ。」
「保乃ちゃんは、お姫様なんよ、大事に扱われなきゃいけない存在なの、ちゃんと自覚して。」
保乃のプリンセス好きを加速させたのは間違いなくひぃちゃんやと思う。過保護で、王子様気質な所は今も変わってないんやな。
「ふふ、ありがとう。」
森田「ん、って、あ!もうすぐ保乃ちゃん誕生日やん!どうしよ、後15分で誕生日になっちゃう。ケーキない、空いてるお店も、分からん。」
「そんなええよ、今更やし、それにひぃちゃんが保乃の誕生日覚えててくれただけで嬉しいで?」
森田「そんなん、覚えとるよ。忘れるわけなか、朝起きたら一緒にケーキ買いに行こう?」
「嬉しい、行きたい。」
森田「ん、じゃあそうしよう、」
「って、久々の再会にしては緊張感無さすぎやね、」
「ふふ、ほんまやなぁ、」
森田「よいしょ、ん、保乃ちゃんこっち向いて。」
「ん?」
森田「消毒、ちょっと痛いかもやけど、我慢してね。」
「ん…、ったぁ、」
森田「赤くなっとる、ほんとにもう大丈夫なん?」
「うん、一応もう別れようって言ってきたし、彼もなら出てけって感じやったから。」
森田「そっか、でも別れて正解やね。」
「保乃ちゃんを傷つけるような男なんかに価値ないけ、」
「ふふ、ひぃちゃん保乃の事大好きやん。」
森田「当たり前だよ。卒業式の日さ、保乃ちゃんが2人とも忙しくなって自然消滅しちゃうのは嫌やから別れたいって言ったやん?」
「うん、」
森田「本当は止めたかった。嫌だっち言いたかった。けど、それで保乃ちゃんを縛る方が嫌やったけ、あの時は頷いた。」
卒業式の日、保乃が別れを告げた時、ひぃちゃんは鼻を真っ赤にしながら涙を沢山流しながら、言いたいことを全て飲み込んだような笑顔で、分かったと、頷いてくれた。
ほんまはずっと後悔してた。
別々の大学に進んで、ひぃちゃんが他の人を好きになってしまう未来が怖くて、逃げるように、ひぃちゃんを振ったんだ。
好きなのに、大好きなのに、来るかも分からない未来に怯えて、弱くなってしまった。
森田「でもやっぱり、保乃ちゃんに会っちゃったら、駄目だった。今でも好きだよ。保乃ちゃんの事が、好きで堪らん。」
「っ…、」
森田「馬鹿な事言いよるのも分かっとる、でも、保乃ちゃんを大切にするのは私がいい。私じゃなきゃ嫌だ。」
ぎゅぅっと抱き締められた身体はずっとこの温もりを求めていたと言わんばかりに高揚して、気が付けば、ひぃちゃんの背中に腕を回して、保乃もずっと好きやった、なんて言葉を零していた。
森田「っ…、ほんとに?」
「うん、ひぃちゃんを忘れようって思って彼と付き合ったけど、駄目やった。保乃、ひぃちゃんじゃないと幸せになれへん。」
森田「保乃ちゃんのこと、幸せにしてもいい?」
「はい、幸せにしてください。」
そんなやりとりを交わし、時計を見れば、針は丁度12時を指していて、最高の誕生日プレゼントやなぁなんて思う。
森田「へへ、幸せ、」
「保乃も。」
ソファーに2人並んで、離れていた長い間の話をお互いに交わす。
保乃を追いかけて上京してきた事、いつか見つけて貰えるようにと会社を立ち上げたら、それが大成功した事、野良猫を追い掛けていたら保乃を見つけた事、最初からついさっきの事まで、嬉しそうに話すひぃちゃんは、あの時と何も変わっていなくて、でも、やっぱり何処か大人になっていて、好きな人の変化を近くで感じられなかったことに寂しさを覚えた。
「なぁ、ひぃちゃん?」
森田「ん?」
「これからはたくさん、色んなひぃちゃんを見せてな?」
森田「ふふ、もちろん。保乃ちゃんこそ、沢山見せてね。」
「当たり前やん。」
森田「改めて、誕生日おめでとう。」
「生まれてきてくれて、本当にありがとう。」
-fin-