▶︎ 森田 田村
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ー 日が沈むん早くなったなぁ、
ー ひぃちゃん!見て!たんぽぽ!
ー春の風や、気持ええなぁ、なぁ、ひぃちゃん。
松田「…る、ひかるー、おーい!」
「ん、ごめん、なん?」
松田「だーかーらー、身体もう大丈夫?」
「うん。大丈夫。」
松田「記憶もほぼも戻ったんやっけ?」
「うん。ちゃんと思い出しよるよ。」
松田「良かった。本当さ、ひかるが事故にあったって聞いた時は心臓飛び出るかと思ったんだから。」
「ふふ、ごめんね。」
松田「1ヶ月も目覚まさないし、目覚ましたと思ったら、誰?なんて言われてさぁ、本当きつかったなぁ。」
「それは、ごめんじゃん。」
松田「ま!今こーやって話せてるから良いんだけどね。」
事故にあって3ヶ月、後遺症として記憶障害を発症してしまったけれど薬と、まりなや夏鈴、友達の支えによってほぼほぼの記憶を取り戻した。
けれど、あの人だけは、思い出せん。
ひぃちゃんっち、可愛くて柔らかい声で私を呼ぶ、関西弁が良く似合う彼女。
「…、」
松田「ひかる?」
「ねぇ、私の事ひぃちゃんっち呼ぶ人知らん?」
松田「っ…、ひかる、その人のこと思い出せてないの、?」
「やっぱり知り合いなん?」
松田「…その人は、ひかるにとって1番大切な人だよ。」
「…、」
ー ん!虹や!!見て!ふふ、綺麗やなぁ。
ー ひぃちゃ〜ん、一緒にアイス食べへん?
ー 桜、綺麗やな。
彼女の言葉が好きやった。変わらない毎日の中でほんの小さな幸せを見つけるのが得意な人、私は、彼女が好きやった。
「誰、なん、思い出せん、なぁ、誰なんよ、」
松田「…、その人の名前は、」
ピンポーンパンポーン
〜「面会終了のお時間です。」〜
松田「…また明日、来るわ。」
「うん、待っとる。気を付けてね、」
松田「うん、また明日。」
思い出せるのは、彼女の言葉や、やんわりとした容姿だけ、薄い紙を光に透かしながら記憶を見ているようで、顔も、声も、はっきりとは思い出せん。
「はぁ…、」
看護師「でっかいため息やなぁ、幸せ逃げちゃうで?」
「…逃げる幸せもないですよ、」
看護師「…体調どう?どっか痛いところとかあったりせえへん?」
「はい。大丈夫です。」
いつもカーテン越しに喋り掛けてくる看護師さん。姿は見た事ないし、知っているのは、関西のイントネーションと意外とお世話焼きな人ということだけ。名前すら、知らない。
看護師「ひかるちゃん、もうすぐで退院やな?」
「そうですね、やっと、散歩に行けます。」
看護師「…散歩好きなん?」
「はい。看護師さんは、散歩好きですか?」
看護師「好きやで。特に春の散歩が。」
「なんでですか?」
看護師「桜が綺麗で、雲がゆったり流れるから、かな。」
あれ、この会話、どこかでした記憶がある。
ー ねぇ、ーーちゃんは、なんで春が好きなん?
ー 桜が綺麗で、雲がゆったり流れるから、かな。
「っ…、」
看護師「ほな…、また夜来るわ。」
「待って、、」
「カーテン、開けてもいいですか?」
看護師「…、」
答えなんて、待っていられなかった。
カーテンに手をかけて、ゆっくりと開いた。
看護師「まだ、良いって、言ってないやん、」
「保乃、ちゃん、」
ー なぁなぁ、ひぃちゃん!保乃、看護師さんになんねん。
ー ひぃちゃんになんかあった時は保乃が一生懸命手当するな?
私が目を覚ました時、保乃ちゃんは最初っからそばに居てくれたんだ。それなのに、私ずっと思い出せんかった、ずっと、ずっと、
「ごめんっ、ごめん、保乃ちゃんっ、」
田村「遅いよ、ずっと、思い出してくれるん待ってたんやで?」
「全部、思い出した。」
「ごめん、保乃ちゃんの誕生日お祝い出来んかった。」
そう、私が事故に遭った日、10月21日は、保乃ちゃんの誕生日やった。誕生日プレゼントを買った帰りに、居眠り運転の車に跳ねられたんだ。
田村「おかえり、っ、ひぃちゃん。」
そう言って、泣きながら笑った保乃ちゃんは、凄く綺麗で、可愛くて、愛おしかった。
「ただいま、保乃ちゃん。」
彼女の手を引き腕の中にとじこめる。もう二度と離さないように、強く、強く。
「保乃ちゃん。」
田村「ん、?」
「桜が咲いたらさ、また一緒に見に行こう?」
田村「うんっ。」
「夏は、一緒にアイス食べて、秋はイチョウの木を見に行こう、冬はコタツに入りながら沢山ゴロゴロしてさ、そんな毎日を保乃ちゃんと過ごしたい。」
田村「うん、っ、」
「だから、私と結婚しよう?」
田村「っ…、」
変わらない毎日の中で、小さな幸せを見つけるのが上手な保乃ちゃんを、私は大きな幸せで守っていきたい。当たり前なんてない、明日が必ず来るなんて限らない。身をもって知ったから、私は、後悔しない人生を歩みたい。
田村「保乃で、いいん?」
「保乃ちゃんがいいんよ。」
「もう二度と、保乃ちゃんと離れたくない。」
田村「っ…、保乃もひぃちゃんと結婚したい。」
「ふふ、しよう、結婚。」
洒落た場所でも、格好良いプロポーズでもなかったけれど、それでいい。
窓から見える雲が指輪の形に見えて、そんなちょっとした奇跡に背中を押されたのだから。
-fin-
ー ひぃちゃん!見て!たんぽぽ!
ー春の風や、気持ええなぁ、なぁ、ひぃちゃん。
松田「…る、ひかるー、おーい!」
「ん、ごめん、なん?」
松田「だーかーらー、身体もう大丈夫?」
「うん。大丈夫。」
松田「記憶もほぼも戻ったんやっけ?」
「うん。ちゃんと思い出しよるよ。」
松田「良かった。本当さ、ひかるが事故にあったって聞いた時は心臓飛び出るかと思ったんだから。」
「ふふ、ごめんね。」
松田「1ヶ月も目覚まさないし、目覚ましたと思ったら、誰?なんて言われてさぁ、本当きつかったなぁ。」
「それは、ごめんじゃん。」
松田「ま!今こーやって話せてるから良いんだけどね。」
事故にあって3ヶ月、後遺症として記憶障害を発症してしまったけれど薬と、まりなや夏鈴、友達の支えによってほぼほぼの記憶を取り戻した。
けれど、あの人だけは、思い出せん。
ひぃちゃんっち、可愛くて柔らかい声で私を呼ぶ、関西弁が良く似合う彼女。
「…、」
松田「ひかる?」
「ねぇ、私の事ひぃちゃんっち呼ぶ人知らん?」
松田「っ…、ひかる、その人のこと思い出せてないの、?」
「やっぱり知り合いなん?」
松田「…その人は、ひかるにとって1番大切な人だよ。」
「…、」
ー ん!虹や!!見て!ふふ、綺麗やなぁ。
ー ひぃちゃ〜ん、一緒にアイス食べへん?
ー 桜、綺麗やな。
彼女の言葉が好きやった。変わらない毎日の中でほんの小さな幸せを見つけるのが得意な人、私は、彼女が好きやった。
「誰、なん、思い出せん、なぁ、誰なんよ、」
松田「…、その人の名前は、」
ピンポーンパンポーン
〜「面会終了のお時間です。」〜
松田「…また明日、来るわ。」
「うん、待っとる。気を付けてね、」
松田「うん、また明日。」
思い出せるのは、彼女の言葉や、やんわりとした容姿だけ、薄い紙を光に透かしながら記憶を見ているようで、顔も、声も、はっきりとは思い出せん。
「はぁ…、」
看護師「でっかいため息やなぁ、幸せ逃げちゃうで?」
「…逃げる幸せもないですよ、」
看護師「…体調どう?どっか痛いところとかあったりせえへん?」
「はい。大丈夫です。」
いつもカーテン越しに喋り掛けてくる看護師さん。姿は見た事ないし、知っているのは、関西のイントネーションと意外とお世話焼きな人ということだけ。名前すら、知らない。
看護師「ひかるちゃん、もうすぐで退院やな?」
「そうですね、やっと、散歩に行けます。」
看護師「…散歩好きなん?」
「はい。看護師さんは、散歩好きですか?」
看護師「好きやで。特に春の散歩が。」
「なんでですか?」
看護師「桜が綺麗で、雲がゆったり流れるから、かな。」
あれ、この会話、どこかでした記憶がある。
ー ねぇ、ーーちゃんは、なんで春が好きなん?
ー 桜が綺麗で、雲がゆったり流れるから、かな。
「っ…、」
看護師「ほな…、また夜来るわ。」
「待って、、」
「カーテン、開けてもいいですか?」
看護師「…、」
答えなんて、待っていられなかった。
カーテンに手をかけて、ゆっくりと開いた。
看護師「まだ、良いって、言ってないやん、」
「保乃、ちゃん、」
ー なぁなぁ、ひぃちゃん!保乃、看護師さんになんねん。
ー ひぃちゃんになんかあった時は保乃が一生懸命手当するな?
私が目を覚ました時、保乃ちゃんは最初っからそばに居てくれたんだ。それなのに、私ずっと思い出せんかった、ずっと、ずっと、
「ごめんっ、ごめん、保乃ちゃんっ、」
田村「遅いよ、ずっと、思い出してくれるん待ってたんやで?」
「全部、思い出した。」
「ごめん、保乃ちゃんの誕生日お祝い出来んかった。」
そう、私が事故に遭った日、10月21日は、保乃ちゃんの誕生日やった。誕生日プレゼントを買った帰りに、居眠り運転の車に跳ねられたんだ。
田村「おかえり、っ、ひぃちゃん。」
そう言って、泣きながら笑った保乃ちゃんは、凄く綺麗で、可愛くて、愛おしかった。
「ただいま、保乃ちゃん。」
彼女の手を引き腕の中にとじこめる。もう二度と離さないように、強く、強く。
「保乃ちゃん。」
田村「ん、?」
「桜が咲いたらさ、また一緒に見に行こう?」
田村「うんっ。」
「夏は、一緒にアイス食べて、秋はイチョウの木を見に行こう、冬はコタツに入りながら沢山ゴロゴロしてさ、そんな毎日を保乃ちゃんと過ごしたい。」
田村「うん、っ、」
「だから、私と結婚しよう?」
田村「っ…、」
変わらない毎日の中で、小さな幸せを見つけるのが上手な保乃ちゃんを、私は大きな幸せで守っていきたい。当たり前なんてない、明日が必ず来るなんて限らない。身をもって知ったから、私は、後悔しない人生を歩みたい。
田村「保乃で、いいん?」
「保乃ちゃんがいいんよ。」
「もう二度と、保乃ちゃんと離れたくない。」
田村「っ…、保乃もひぃちゃんと結婚したい。」
「ふふ、しよう、結婚。」
洒落た場所でも、格好良いプロポーズでもなかったけれど、それでいい。
窓から見える雲が指輪の形に見えて、そんなちょっとした奇跡に背中を押されたのだから。
-fin-