▶︎ 森田 田村
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幸せな暮らしが終わるのはいつだって突然だった。
「ただいま〜〜。」
田村「おかえり、ひぃちゃん。」
付き合って3年になる彼女。
可愛くて、優しくて、暖かい人。
そんな保乃ちゃんの様子が今日はほんの少し違っていた。
「…なんかあった〜??」
冷蔵庫からジュースを取り出しながらそう聞けば真剣な声で話さなきゃいけないことがある。なんて返ってきて、スマホもジュースも全て机に置いて、保乃ちゃんの隣に座った。
「どうしたと、」
田村「…最近ずっと腰が痛いって言っとったやろ?」
「うん、」
田村「それで、今日病院に行ってん、」
「…、」
田村「そしたらな、膵臓癌やって、」
「…え?」
田村「だから、明日からすぐ入院して治療を始める、ひぃちゃんには寂しい思いさせちゃうと思うけど絶対治すから、やから、ほんの少しだけ1人で待ってられる?」
「…待つよ、いくらでも待つ、」
「でも、その、本当に治るの?保乃ちゃんいなくなっちゃったりせんよね?」
田村「せえへんわ、保乃やで?体は最強なんやから。」
「っ…ん、分かった、準備手伝うけ、一緒にやろ。」
こうして保乃ちゃんの闘病生活は幕を開けた。
そしてこの日から約3ヶ月。
お見舞いできた私をお医者さんが引き止めて、狭い病室に通され、次に紡いだ言葉は、"持って1ヶ月でしょう"。
嘘だ、だって保乃ちゃんは、保乃ちゃんは絶対治すっち言いよった、1人なのもほんの少しだけって、なんで、なんでよ。なんで神様は保乃ちゃんを選んだと、なんで、保乃ちゃんなんよ。
そんな気持ちのまま病室に通って、3日が経った日。
田村「なぁひぃちゃん。」
「ん〜、」
田村「保乃、旅行に行きたい。」
「旅行?」
田村「うん。そうやなぁ、沖縄もええけど、敢えて雪国なんかもええなぁ。」
「何言っとんの、お医者さんから許可おりんよ、」
田村「うん、降りんかってん、だからな、」
「2人で抜け出そう?」
「っ…、そんなことしたら、保乃ちゃんは!!」
田村「分かってる、自分の最後くらいわかるよ、」
「…、じゃあ、なんで、」
田村「そこまでしてでも、ひぃちゃんと旅行に行きたいの、思い出を作りたいねん、」
「っ…、」
ここで頷いてしまったら保乃ちゃんとはもうそう長く一緒に居られなくなってしまう。でも、ここで頷かなかったら大好きな保乃ちゃんを見れなくなってしまう、どうしたらいいん、
田村「なぁ、お願い、旅行に行こう??」
「……分かったよ、その代わりちょっとでも体調が悪くなったらすぐ戻るけ、約束して?」
田村「うんっ。決行は明日!保乃が全部予約しとくからひぃちゃんは荷物の準備だけしといて?」
「ん、分かった。明日、朝迎えに来るね。」
田村「うん、待ってるな。」
私と保乃ちゃんの最期の旅行が始まった。
「…うわぁ、真っ白、」
田村「ふふ、さすが雪国やなぁ。」
「大丈夫?寒くない?」
田村「ん、大丈夫やで。」
「へへ、えいっ…!!」
「うわっ…!!!やったなーー!」
田村「うわぁーー!!」
社会人にもなって雪合戦をするなんて思わなかったな。あぁ、やばい、超楽しい。
田村「次はー、ご飯屋さん!!」
「おぉ〜、何処行くと?」
田村「海鮮丼屋さんやで〜。」
「ふふ、いいね、」
1秒でも長く保乃ちゃんを感じれるように、目に焼き付けるように見つめて、写真を撮って、手を繋いで、ご飯屋さんに着けばお互い交換し合ったりして、本当に楽しい時間やった。
「んーーー、楽しかったね、」
田村「やなぁ、凄く凄く楽しかった。」
小さな山の麓にあるロッジを借りて、2人で椅子に腰をかけながらそんな会話をしていれば、保乃ちゃんが、あ!!なんて声を上げた。
「なん?」
田村「星、見に行こう?」
「…外は寒いよ。」
田村「大丈夫やって!!行こう!!」
「分かったよ笑笑」
保乃ちゃんの勢いに負け上着を羽織り外に出る。ほんの少しだけ山を登れば辺り一面が広がって、それはそれは綺麗な景色やった。
「…星、綺麗やね。」
田村「見に来てよかったやろ?」
「ふふ、うん。」
見上げた星はどれも一つ一つ綺麗で、手を伸ばしても届きそうになくて、それが何故か保乃ちゃんのようで、不安になって隣にいる保乃ちゃんに目を向ければ顔を歪ませていた。
「どうしたと、保乃ちゃん!!!どっか痛いん?救急車…、」
田村「っ…待って、待ってひぃちゃん、」
「でも、早く呼ばんと、」
田村「お願い、はぁっ、話を聞いてっ、」
ゆっくり私の方に倒れ込んできた保乃ちゃんを受け止めて座りながら腕の中にいる保乃ちゃんに顔を向ける。
田村「ごめんな、ひぃちゃんっ、多分保乃は、ここで終わりや、」
「っ…何でそんなこと言うん!嫌だよ、まだ、もっと保乃ちゃんと居たいよ、」
田村「泣かへんで、保乃な、ひぃちゃんと付き合ってから、んーん、ひぃちゃんを好きになってから今日までずーっと、幸せやった、」
「っ…、」
田村「朝起きるのが苦手なひぃちゃんも、お仕事から帰ってきてすぐ保乃に抱きついてくるひぃちゃんも、保乃を優しく愛してくれるひぃちゃんも、全部全部大好き、で、」
「もう良か、良いから、喋らんでっ、救急車呼ぼう?なぁ、まだ、っ、まだっ、私、一人になる準備、できとらんよ、」
田村「っ…はぁっ、しっかりして、森田ひかる。」
「ひぃちゃんは保乃が居らんくても毎日ちゃんと生きていくの、保乃の分まで、楽しんでよ、」
「っ…保乃ちゃんが居らんと!何も、たのしくないよ、」
田村「ひぃちゃん、」
「っ…、」
田村「ひかる、」
「んっ…、」
重なった唇は、記憶よりも冷たくて、本能的にこれが本当に最後なんだと悟ってしまう。
田村「幸せになって、ひぃちゃん、っ、」
保乃ちゃんが流した一筋の涙が雪に落ちると同時に目を閉じた保乃ちゃん。
「待って、待ってよ、保乃ちゃん!!行かんで、まだ、間に合うから、」
救急車に連絡をして、保乃ちゃんをおぶりながら、必死に山を降りた。
「なぁ、今日のデートコース、私が保乃ちゃんに告白した時と同じやろ?修学旅行で、ここに来た時、回ったところと全部一緒やった、なぁ、保乃ちゃん!!私はまだ、保乃ちゃんに伝えてないことが多いんよ、伝えなきゃいけないこと、まだ、あるんよ、」
返事も、温かさもない保乃ちゃんにずっと話しかけて、山を降りればすぐ救助隊の人が駆け付けてくれて、そのまま、近くの病院に運ばれた。
"1/18 22:21 お亡くなりです"
「っ…あぁっ、保乃ちゃんっ!!!保乃、ちゃん!!!」
眠っているように、ベッドの上で、息をすることもなく横たわっている保乃ちゃんを抱きしめても、手を握っても、何も返ってこない。
そのうち先生たちは居なくなっていて、保乃ちゃんと二人きりの病室。
「ぐすっ…、ねぇ保乃ちゃん、っ、私は、1人で待ってられるよ、家事やって出来る、だからっ、帰ってきてよ!!」
「1人に、せんでっ…、」
冷たい手のひらをぎゅぅっと強く握りしめてそう言葉を紡いでも保乃ちゃんからの返事は無くて、そしていつの間にか、私は手を繋いだまま眠ってしまっていた。
「保乃、ちゃん、」
田村「もう、ひぃちゃんがしっかりしてくれれんかったら保乃成仏出来ないやん。」
「保乃ちゃんっ…!!!」
夢の中で、夢だとわかっていたのに、何故か凄く現実感があって、直ぐに保乃ちゃんに抱きついてしまった。
田村「ごめんな、1人にして、約束、守れんくて、」
「っ…私は、1人じゃなんも出来ん、保乃ちゃんが居らんと出来んよ、」
田村「出来るよ、ひぃちゃんなら、1人でもやっていける。」
「っ…、」
「保乃、ちゃん、」
田村「ん〜?」
「ずっと、渡そうと思ってた、」
田村「っ…、」
「今日で、4年記念日、っ、」
「っ…、指輪、お揃いなんよ、」
この日のためにずっと前から用意していたもの。
こんな形で渡すなんて思っていなかったけれど、それでも嬉しそうに笑ってくれた保乃ちゃんの薬指に通して、指を絡めた。
田村「っ…はぁ、ほんまひぃちゃんは狡い人やな、」
「…ごめんね、」
田村「生まれ変わって、またひぃちゃんの所に必ず帰るからっ、やから、それまで待っててくれん?」
「…必ず帰ってくる?」
田村「うん、必ず帰るよ。」
「分かった、それまで、ひとりで待っとるから、絶対、帰ってきてね。」
田村「ふふ、うん、じゃあ、またな、ひぃちゃん。」
「っ…うん、保乃ちゃん!」
田村「ん?」
「今日までずっと、幸せやった。今までも、これからも保乃ちゃんを愛しとるよ。」
田村「っ…保乃も、愛してんで、」
「っ…、」
目が覚めて、ふと繋いでいた手に視線を落とせばしっかりと指輪が嵌められている薬指。
あぁ、夢やなかったんだ。
「…保乃ちゃん、待っとるから、ちゃんと帰ってきてね、行ってらっしゃい。」
こうして、私と保乃ちゃんの長くて一瞬だった物語が幕を閉じた。
その日から2年。
「くっしゅ…、うぅ、寒。」
ピーッ パタパタパタ
「うわぁぁあ、びっくりした、って、い、インコ?」
お家に帰る途中、突然肩に何かが止まったかと思えばピヨ??なんて首を傾げてるセキセイインコ。どっかのお家から逃げ出したのかな、なんて思ったけれど、ふと4年前の保乃ちゃんの言葉を思い出す。
"ん〜、生まれ変わるならひぃちゃんの好きな鳥かなぁ"
"ふふ、鳥?"
"うん、ピヨピヨって、ひぃちゃんに会いに行くからちゃんと気づいてな?"
"分かったよ笑笑"
「っ…保乃、ちゃん?」
ピヨピヨ
きっとまぐれだ。こんなことあるわけない。
それでも、私は保乃ちゃんが帰ってきたのだと思った。
だから、
「…おかえり、保乃ちゃん。」
ピヨッ パタパタ
「あっ…、っ、星、」
大きく羽ばたいて、飛んでいってしまったインコを目で追えば、空には満天の星が散りばめられていて。
保乃ちゃんを好きになった日、付き合えた日、そして、あの日を思い出す。
「…愛しとるよ、保乃ちゃん。」
また何処かで会えるのを願って今日も1人お家に帰る。
-fin-
リクエスト付き合ってる森田村。
2人でささやかな幸せを日々感じながら過ごしていたある日田村さんの病気が見つかってしまう。
しかも既にだいぶ進行しており、余命宣告をされてしまう。森田さんは泣きそうになる気持ち
を抑えながらも毎日病室に通う。
そして時が経ち田村さんはある日自分の死期がもうすぐだと悟ってしまう。なので最後に森田さんとずっと行けていなかった旅行に行きたいと思った。しかし主治医からの許可は降りない。そして田村さんは決意する。「2人で病院を抜け出そうと」この提案をした時初めは田村さんの身体を心配し反対した森田さんだが田村さんの硬い意思には負けてしまう。そして2人は病院を抜け出し、旅行に行った。(ちなみに旅先はなるべく雪国がいいです
ね....それか雪の降ってるシチュエーションで) そして2人は思う存分楽しんだ。脱出劇も終わりを迎える夜、田村さんの様態が一変。急いで森田さんは救急車を呼ぼうとするが田村さんはそれを止める。周りには誰もいない完全に2人だけの空間。田村さんは死期を悟り、最期の言葉をの森田さんに必死に残そうとしていた。泣きながら聞く森
田さん。そして田村さんの声がついに途切れた。話している途中から雪が降り始めていた。田村さんの体温がどんどん下がっていくのを森田さんは雪のせいにした。まだ間に合う。そう自分に言い聞かせながら森田さんは田村さんの体温が下がっていくのを雪が降っているせいにしていた。自分よりも大きい田村さんを必死に背負いながら病院へ歩き出す。田村さんに思い出話などをしきりに話しかける。大丈夫まだ保乃ちゃんは生きてるんだと思い込ませながら。その小さな身体で鼻を真っ赤にし、目に涙を浮かばせながら必死に歩いていく。
病院に着き、田村さんの死を改めて知らされた森田さんは放心状態。だがその時田村さんの声が聞こえてきた。そこで田村さんが何を言うのかはばけさんに丸投げしますね^長くなりましたがばけさんなら書いてくれると信じてます!
某最近卒業した中学生より。
「ただいま〜〜。」
田村「おかえり、ひぃちゃん。」
付き合って3年になる彼女。
可愛くて、優しくて、暖かい人。
そんな保乃ちゃんの様子が今日はほんの少し違っていた。
「…なんかあった〜??」
冷蔵庫からジュースを取り出しながらそう聞けば真剣な声で話さなきゃいけないことがある。なんて返ってきて、スマホもジュースも全て机に置いて、保乃ちゃんの隣に座った。
「どうしたと、」
田村「…最近ずっと腰が痛いって言っとったやろ?」
「うん、」
田村「それで、今日病院に行ってん、」
「…、」
田村「そしたらな、膵臓癌やって、」
「…え?」
田村「だから、明日からすぐ入院して治療を始める、ひぃちゃんには寂しい思いさせちゃうと思うけど絶対治すから、やから、ほんの少しだけ1人で待ってられる?」
「…待つよ、いくらでも待つ、」
「でも、その、本当に治るの?保乃ちゃんいなくなっちゃったりせんよね?」
田村「せえへんわ、保乃やで?体は最強なんやから。」
「っ…ん、分かった、準備手伝うけ、一緒にやろ。」
こうして保乃ちゃんの闘病生活は幕を開けた。
そしてこの日から約3ヶ月。
お見舞いできた私をお医者さんが引き止めて、狭い病室に通され、次に紡いだ言葉は、"持って1ヶ月でしょう"。
嘘だ、だって保乃ちゃんは、保乃ちゃんは絶対治すっち言いよった、1人なのもほんの少しだけって、なんで、なんでよ。なんで神様は保乃ちゃんを選んだと、なんで、保乃ちゃんなんよ。
そんな気持ちのまま病室に通って、3日が経った日。
田村「なぁひぃちゃん。」
「ん〜、」
田村「保乃、旅行に行きたい。」
「旅行?」
田村「うん。そうやなぁ、沖縄もええけど、敢えて雪国なんかもええなぁ。」
「何言っとんの、お医者さんから許可おりんよ、」
田村「うん、降りんかってん、だからな、」
「2人で抜け出そう?」
「っ…、そんなことしたら、保乃ちゃんは!!」
田村「分かってる、自分の最後くらいわかるよ、」
「…、じゃあ、なんで、」
田村「そこまでしてでも、ひぃちゃんと旅行に行きたいの、思い出を作りたいねん、」
「っ…、」
ここで頷いてしまったら保乃ちゃんとはもうそう長く一緒に居られなくなってしまう。でも、ここで頷かなかったら大好きな保乃ちゃんを見れなくなってしまう、どうしたらいいん、
田村「なぁ、お願い、旅行に行こう??」
「……分かったよ、その代わりちょっとでも体調が悪くなったらすぐ戻るけ、約束して?」
田村「うんっ。決行は明日!保乃が全部予約しとくからひぃちゃんは荷物の準備だけしといて?」
「ん、分かった。明日、朝迎えに来るね。」
田村「うん、待ってるな。」
私と保乃ちゃんの最期の旅行が始まった。
「…うわぁ、真っ白、」
田村「ふふ、さすが雪国やなぁ。」
「大丈夫?寒くない?」
田村「ん、大丈夫やで。」
「へへ、えいっ…!!」
「うわっ…!!!やったなーー!」
田村「うわぁーー!!」
社会人にもなって雪合戦をするなんて思わなかったな。あぁ、やばい、超楽しい。
田村「次はー、ご飯屋さん!!」
「おぉ〜、何処行くと?」
田村「海鮮丼屋さんやで〜。」
「ふふ、いいね、」
1秒でも長く保乃ちゃんを感じれるように、目に焼き付けるように見つめて、写真を撮って、手を繋いで、ご飯屋さんに着けばお互い交換し合ったりして、本当に楽しい時間やった。
「んーーー、楽しかったね、」
田村「やなぁ、凄く凄く楽しかった。」
小さな山の麓にあるロッジを借りて、2人で椅子に腰をかけながらそんな会話をしていれば、保乃ちゃんが、あ!!なんて声を上げた。
「なん?」
田村「星、見に行こう?」
「…外は寒いよ。」
田村「大丈夫やって!!行こう!!」
「分かったよ笑笑」
保乃ちゃんの勢いに負け上着を羽織り外に出る。ほんの少しだけ山を登れば辺り一面が広がって、それはそれは綺麗な景色やった。
「…星、綺麗やね。」
田村「見に来てよかったやろ?」
「ふふ、うん。」
見上げた星はどれも一つ一つ綺麗で、手を伸ばしても届きそうになくて、それが何故か保乃ちゃんのようで、不安になって隣にいる保乃ちゃんに目を向ければ顔を歪ませていた。
「どうしたと、保乃ちゃん!!!どっか痛いん?救急車…、」
田村「っ…待って、待ってひぃちゃん、」
「でも、早く呼ばんと、」
田村「お願い、はぁっ、話を聞いてっ、」
ゆっくり私の方に倒れ込んできた保乃ちゃんを受け止めて座りながら腕の中にいる保乃ちゃんに顔を向ける。
田村「ごめんな、ひぃちゃんっ、多分保乃は、ここで終わりや、」
「っ…何でそんなこと言うん!嫌だよ、まだ、もっと保乃ちゃんと居たいよ、」
田村「泣かへんで、保乃な、ひぃちゃんと付き合ってから、んーん、ひぃちゃんを好きになってから今日までずーっと、幸せやった、」
「っ…、」
田村「朝起きるのが苦手なひぃちゃんも、お仕事から帰ってきてすぐ保乃に抱きついてくるひぃちゃんも、保乃を優しく愛してくれるひぃちゃんも、全部全部大好き、で、」
「もう良か、良いから、喋らんでっ、救急車呼ぼう?なぁ、まだ、っ、まだっ、私、一人になる準備、できとらんよ、」
田村「っ…はぁっ、しっかりして、森田ひかる。」
「ひぃちゃんは保乃が居らんくても毎日ちゃんと生きていくの、保乃の分まで、楽しんでよ、」
「っ…保乃ちゃんが居らんと!何も、たのしくないよ、」
田村「ひぃちゃん、」
「っ…、」
田村「ひかる、」
「んっ…、」
重なった唇は、記憶よりも冷たくて、本能的にこれが本当に最後なんだと悟ってしまう。
田村「幸せになって、ひぃちゃん、っ、」
保乃ちゃんが流した一筋の涙が雪に落ちると同時に目を閉じた保乃ちゃん。
「待って、待ってよ、保乃ちゃん!!行かんで、まだ、間に合うから、」
救急車に連絡をして、保乃ちゃんをおぶりながら、必死に山を降りた。
「なぁ、今日のデートコース、私が保乃ちゃんに告白した時と同じやろ?修学旅行で、ここに来た時、回ったところと全部一緒やった、なぁ、保乃ちゃん!!私はまだ、保乃ちゃんに伝えてないことが多いんよ、伝えなきゃいけないこと、まだ、あるんよ、」
返事も、温かさもない保乃ちゃんにずっと話しかけて、山を降りればすぐ救助隊の人が駆け付けてくれて、そのまま、近くの病院に運ばれた。
"1/18 22:21 お亡くなりです"
「っ…あぁっ、保乃ちゃんっ!!!保乃、ちゃん!!!」
眠っているように、ベッドの上で、息をすることもなく横たわっている保乃ちゃんを抱きしめても、手を握っても、何も返ってこない。
そのうち先生たちは居なくなっていて、保乃ちゃんと二人きりの病室。
「ぐすっ…、ねぇ保乃ちゃん、っ、私は、1人で待ってられるよ、家事やって出来る、だからっ、帰ってきてよ!!」
「1人に、せんでっ…、」
冷たい手のひらをぎゅぅっと強く握りしめてそう言葉を紡いでも保乃ちゃんからの返事は無くて、そしていつの間にか、私は手を繋いだまま眠ってしまっていた。
「保乃、ちゃん、」
田村「もう、ひぃちゃんがしっかりしてくれれんかったら保乃成仏出来ないやん。」
「保乃ちゃんっ…!!!」
夢の中で、夢だとわかっていたのに、何故か凄く現実感があって、直ぐに保乃ちゃんに抱きついてしまった。
田村「ごめんな、1人にして、約束、守れんくて、」
「っ…私は、1人じゃなんも出来ん、保乃ちゃんが居らんと出来んよ、」
田村「出来るよ、ひぃちゃんなら、1人でもやっていける。」
「っ…、」
「保乃、ちゃん、」
田村「ん〜?」
「ずっと、渡そうと思ってた、」
田村「っ…、」
「今日で、4年記念日、っ、」
「っ…、指輪、お揃いなんよ、」
この日のためにずっと前から用意していたもの。
こんな形で渡すなんて思っていなかったけれど、それでも嬉しそうに笑ってくれた保乃ちゃんの薬指に通して、指を絡めた。
田村「っ…はぁ、ほんまひぃちゃんは狡い人やな、」
「…ごめんね、」
田村「生まれ変わって、またひぃちゃんの所に必ず帰るからっ、やから、それまで待っててくれん?」
「…必ず帰ってくる?」
田村「うん、必ず帰るよ。」
「分かった、それまで、ひとりで待っとるから、絶対、帰ってきてね。」
田村「ふふ、うん、じゃあ、またな、ひぃちゃん。」
「っ…うん、保乃ちゃん!」
田村「ん?」
「今日までずっと、幸せやった。今までも、これからも保乃ちゃんを愛しとるよ。」
田村「っ…保乃も、愛してんで、」
「っ…、」
目が覚めて、ふと繋いでいた手に視線を落とせばしっかりと指輪が嵌められている薬指。
あぁ、夢やなかったんだ。
「…保乃ちゃん、待っとるから、ちゃんと帰ってきてね、行ってらっしゃい。」
こうして、私と保乃ちゃんの長くて一瞬だった物語が幕を閉じた。
その日から2年。
「くっしゅ…、うぅ、寒。」
ピーッ パタパタパタ
「うわぁぁあ、びっくりした、って、い、インコ?」
お家に帰る途中、突然肩に何かが止まったかと思えばピヨ??なんて首を傾げてるセキセイインコ。どっかのお家から逃げ出したのかな、なんて思ったけれど、ふと4年前の保乃ちゃんの言葉を思い出す。
"ん〜、生まれ変わるならひぃちゃんの好きな鳥かなぁ"
"ふふ、鳥?"
"うん、ピヨピヨって、ひぃちゃんに会いに行くからちゃんと気づいてな?"
"分かったよ笑笑"
「っ…保乃、ちゃん?」
ピヨピヨ
きっとまぐれだ。こんなことあるわけない。
それでも、私は保乃ちゃんが帰ってきたのだと思った。
だから、
「…おかえり、保乃ちゃん。」
ピヨッ パタパタ
「あっ…、っ、星、」
大きく羽ばたいて、飛んでいってしまったインコを目で追えば、空には満天の星が散りばめられていて。
保乃ちゃんを好きになった日、付き合えた日、そして、あの日を思い出す。
「…愛しとるよ、保乃ちゃん。」
また何処かで会えるのを願って今日も1人お家に帰る。
-fin-
リクエスト付き合ってる森田村。
2人でささやかな幸せを日々感じながら過ごしていたある日田村さんの病気が見つかってしまう。
しかも既にだいぶ進行しており、余命宣告をされてしまう。森田さんは泣きそうになる気持ち
を抑えながらも毎日病室に通う。
そして時が経ち田村さんはある日自分の死期がもうすぐだと悟ってしまう。なので最後に森田さんとずっと行けていなかった旅行に行きたいと思った。しかし主治医からの許可は降りない。そして田村さんは決意する。「2人で病院を抜け出そうと」この提案をした時初めは田村さんの身体を心配し反対した森田さんだが田村さんの硬い意思には負けてしまう。そして2人は病院を抜け出し、旅行に行った。(ちなみに旅先はなるべく雪国がいいです
ね....それか雪の降ってるシチュエーションで) そして2人は思う存分楽しんだ。脱出劇も終わりを迎える夜、田村さんの様態が一変。急いで森田さんは救急車を呼ぼうとするが田村さんはそれを止める。周りには誰もいない完全に2人だけの空間。田村さんは死期を悟り、最期の言葉をの森田さんに必死に残そうとしていた。泣きながら聞く森
田さん。そして田村さんの声がついに途切れた。話している途中から雪が降り始めていた。田村さんの体温がどんどん下がっていくのを森田さんは雪のせいにした。まだ間に合う。そう自分に言い聞かせながら森田さんは田村さんの体温が下がっていくのを雪が降っているせいにしていた。自分よりも大きい田村さんを必死に背負いながら病院へ歩き出す。田村さんに思い出話などをしきりに話しかける。大丈夫まだ保乃ちゃんは生きてるんだと思い込ませながら。その小さな身体で鼻を真っ赤にし、目に涙を浮かばせながら必死に歩いていく。
病院に着き、田村さんの死を改めて知らされた森田さんは放心状態。だがその時田村さんの声が聞こえてきた。そこで田村さんが何を言うのかはばけさんに丸投げしますね^長くなりましたがばけさんなら書いてくれると信じてます!
某最近卒業した中学生より。