田村｢え〜、でもやっぱり由依さんのことは好きです。｣


ー大丈夫


田村｢わ、理佐さん〜〜、好きです〜〜！！｣


ー大丈夫


田村｢ほのはー、夏鈴ちゃんが好きやで！｣


ー大丈夫、


"彼女にしたいメンバー"


｢私はずっと保乃ちゃんです。｣
｢保乃ちゃんが好きです。｣


貴女が振り向かなくたっていい。
私は、保乃ちゃんが好きだよ。ずっと、これからも。





田村｢ひぃちゃ〜ん、またインタビューで保乃のこと書いてくれたんやって？｣


｢ん？あー、彼女にしたいメンバー？｣


田村｢そうそう。嬉しい。｣


｢ふふ、保乃ちゃんのことずっと好きやけ、当たり前やろ。｣


田村｢ふふ、ありがとな。｣






いつまでも保乃の事を好きでいるひぃちゃんが嫌いやった。


どれだけ保乃が他の子に行こうが、好きと言おうが、ひぃちゃんは耐えるように笑って、そして、保乃ちゃんが好きです、と色んなところで公言する。


真っ直ぐに保乃だけを見てくれるひぃちゃんが、嫌いで、怖くて、愛しかった。


藤吉｢ひかるまた見てるね。｣


｢ん？やなぁ。｣


藤吉｢…はぁ、離れたら？｣


｢え、嫌や、夏鈴ちゃんやって嫌やないやろ？｣


藤吉｢ひかるからの視線が痛い。｣
｢それに夏鈴はひかるが好きだから。｣


｢もーー、仕方ないなぁ。｣


藤吉｢…その歪んだ性癖どうにかしたら？｣


｢アイドルがそんなこと言ったらダメやん。｣


藤吉｢…保乃はさ、ひかるのこと好きじゃないんでしょ？｣


｢ん？うん。好きやないで。｣


藤吉｢なら、ちゃんと諦めつけさせてあげなよ。｣


｢何言ってんの、夏鈴ちゃん。｣
｢保乃の行動1つであんな簡単に表情変えるひぃちゃんを手放すわけないやろ。｣


人は優越感を感じてしまえばもうそれからは逃れられない。その沼にハマって、抜け出せなくなってしまう。


藤吉｢…なら、夏鈴が保乃からひかるを奪っても文句なしやで。｣


｢ふふ、うんっ。文句なんか言わへんよ。｣
｢対抗はするけどな？｣


藤吉｢っ…、｣








今日も保乃ちゃんの隣は夏鈴か。


ー大丈夫。


私は何も求めたりしない、
保乃ちゃんを好きでいれればそれでいい。


藤吉｢ひかる。｣


｢夏鈴？どうしたと？｣


藤吉｢夏鈴はひかるが好きやで。｣


｢え？｣


藤吉｢保乃のこと好きなん知ってる。それも含めて、ひかるが好き。｣


｢っ…、｣


人からの好意なんて久しぶりだった。
少しだけ、嬉しかった。
ましてやそれがあの藤吉夏鈴からだったから。


田村｢夏鈴ちゃーん？ひぃちゃーん？何話してるん？｣


｢…保乃ちゃん。｣


私はこの人が好きだ。
でも好きでどうする？何も返ってこないじゃないか。4年以上ずっと一方的な好きを与えていただけ。そろそろ好きを受け取ってもいいんじゃないか？貴女を好きじゃなくなっても、いいのかな。


藤吉｢…ねえ、ひかる、夏鈴のものになってや｣


｢っ…、｣


田村｢なに、もしかして告白中やった…？｣


｢あ、えっと、｣


田村｢ふふ、ひぃちゃんは答えんやろ？｣


｢え？｣


田村｢だって、保乃のこと彼女にしたいんやろ？違うん？｣


ー狡い


そうだ、この人はそーゆう人だった。
ハマるだけハマらせて、抜け方を教えてくれない。抜けようものならまたドップリと浸からせて、離してくれないんだ。


｢あぁ…、うん。私は保乃ちゃんのことが好き。｣


田村｢ふふ、やって、夏鈴ちゃん。｣


藤吉｢っ…｣
｢ひかる、それでいいん？夏鈴やったら、ひかるに好きを与えられるで。保乃とは違う。真剣にひかるを愛すことが出来る。｣


｢っ…、｣


田村｢夏鈴ちゃん、その言い方やと保乃がひぃちゃんのこと愛してないみたいやん。｣


藤吉｢…保乃みたいな歪んだ愛、ひかるに与えたくない。｣


田村｢何言ってるん？純愛やで？｣


この2人が話してる内容がまるで理解できない。
でも、一つだけ分かったことがある。
それは、私が幸せになるために選ばなきゃ行けないのは夏鈴だということ。


｢夏鈴、｣


藤吉｢夏鈴の事、今は好きやなくていい。好きにさせるから、なぁ、選んで？｣


｢私が幸せになるためには夏鈴の力が必要だって分かった。｣


藤吉｢っ…じゃぁ、｣


｢でもね、保乃ちゃんが幸せになるには私が必要なんだ。｣


藤吉｢っ…、｣


｢だから、ごめんね、夏鈴。｣
｢私は保乃ちゃんが好き。保乃ちゃんじゃなきゃ駄目なんだ。｣


田村｢ふふ、偉いなぁ、よく分かってるやん。｣


｢保乃ちゃんが好きだから。｣


田村｢…なら、これからも保乃のこと愛してな？｣


｢うん。勿論だよ。｣


藤吉｢狂ってる、ひかる達は、狂ってるよ。｣
｢こんなの、好きでも、愛でもない、｣


｢…依存、って言いたいん？｣


藤吉｢…、｣


｢そうだよ、私は保乃ちゃんに依存してる。もう抜け出せないの。抜け出す気もないから。｣


藤吉｢…、｣


田村｢あ、夏鈴ちゃん行っちゃったー。｣
｢ふふ、ひぃちゃんはほんまに一途やな？｣


｢こんなに好きになったのは初めてやけどね。｣
｢…んっ、保乃、ちゃん、？｣










純粋な好きで溢れている瞳に駆られて保乃はひぃちゃんにキスをした。


別に好きやからやない。
これからも好きでいてもらうために。


そうすればひぃちゃんは初恋のように顔を真っ赤にして、狼狽え、そしてこう言った。


森田｢保乃ちゃん、好きだよ。｣


-fin-