▶︎ 森田 田村
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壁の落書きは擦ったって消えやしない。
私の恋も、似たようなものだった。
田村「あ〜、また壁に絵書いて!お母さんに怒られんで?」
「…紙に書くの飽きたけ、」
田村「だからって壁に書くんは違うやろ〜、ま、保乃は好きやけどな!ひぃちゃんの絵。」
「…ありがとう。」
幼馴染で3つ上の保乃ちゃん。
高校生の私と違って、大学という遊び盛りのオトナが集まる世界で生活してる保乃ちゃんは、高校生の時より髪色も明るくなって、帰りの時間だって遅くなった。
私と過ごす時間も、グッと減ってしまった。
田村「はい、これ、この前サークルの人達と旅行行った時のお土産!」
「あー、旅行、だから居なかったんだ。」
田村「ふふ、皆でな温泉行ってきたんやけど、2組もカップルが出来たんやで!凄いよなぁ…。」
「え、男女で行ったと?」
田村「そうやで〜、そんな珍しいことやないやろ?」
「っ…、そうやね。」
私の知らない間に、保乃ちゃんは私の知らない男と付き合うんだろうか。私の知らない顔を見せて、私の知らないうちに、結婚とか、するんやろうか。
どんどん、私の知らない保乃ちゃんが増えてくばっかだな。
田村「なぁ、ひぃちゃんの机にあるスケッチブックって何が書いてあるん?」
「…あー、色々。」
田村「見てもええ?」
「え、あ、ごめん、ダメ。は、恥ずかしいけ、見んで。」
田村「壁に書いてあるの見てるやん!そんな恥ずかしがらんで〜?」
「これだけは、駄目、他のは見ていいから、」
田村「ちぇ…、まぁ、ええけど、」
私の知ってる保乃ちゃんは全部スケッチブックの中にいる。嬉しそうな保乃ちゃん。寂しそうな保乃ちゃん。寝ている時の保乃ちゃん。私が、好きになった時の保乃ちゃん。
こんなの見せられるわけが無い。
引かれて、嫌われて、それで終わりだ。
田村「なぁ、ひぃちゃん。」
「…?」
田村「なんで全部飲み込むん?」
「え?」
田村「何か言いかけては飲み込んで、溜め込んで、辛そうにして、保乃には気使わんでよ、なんでも教えてや、」
「っ…、」
私の気持ちには気付いてくれないくせに、こーゆうところは鋭くて、嫌になる。
私の恋も、何もかも全部、消しゴムで消せたら楽なのに。
田村「保乃たち幼馴染やろ?」
「それが嫌なんよ。保乃ちゃんと幼馴染なのが嫌で嫌で仕方ない。」
田村「っ…、」
あぁ、こんな表情の保乃ちゃんは初めて見たなぁ、初めて、傷付けちゃったな、
「…ごめん、ほんとに、ごめん。」
この場の空気に耐えられなくなって、逃げるように外に出た。保乃ちゃんを部屋に置いて、傷付けるだけ傷つけて、私、最低だ。
どの道を歩いても、保乃ちゃんとの思い出ばかりで、あの公園も、スーパーも、自販機も、1つ1つに保乃ちゃんを思い返して、馬鹿みたいに苦しくなる。
いっその事、気持ちを伝えてしまえばいいのだろうか。きっと、困らせるだけ。優しい保乃ちゃんの事だから、気を使って前みたいに接しようとしてくれるはず、けど、元には戻れない。
気持ちを伝えてしまったら、水に垂らしたインクのように後悔が広がって、どれだけ薄まっても、無くなりはしない。
私には、そんな勇気もない。
「……ただいま、」
もう居るはずもないだろうけど、無駄に緊張しながら階段を上がって、部屋の扉を開ける。
「っ…、」
部屋の中には、机の上にスケッチブックを広げたまま寝てしまったであろう保乃ちゃんの姿が目に入った。
あーぁ、見られちゃった。
あれ持って、出てくべきやった。
もう、元には、戻れなくなっちゃった。
全てがどうでもよくなって、保乃ちゃん起こすこともせずベッドに腰かけた。そのまま倒れ込むように壁に背を預けて、目の前の壁に広がるこれまで書いてきた壁の落書きをただじっと眺めていた。
「…、なん、あれ、」
壁の端っこにちょこんと書かれたクマの絵。
その横には、見慣れた丸っこい字で"好き"なんて書かれていた。
「っ…、なん、これ、」
近くで見ても、意味が理解出来なくて、でも書いた犯人は彼女しか居なくて、駄目だ、分からん。全然、分からん。
田村「んっ…、ひぃ、?」
「保乃、ちゃん、」
田村「良かった、帰ってきた、」
「っ…、保乃、ちゃん?」
寝起きの暖かい体温に体を包まれて、久々の保乃ちゃんの香りに目眩がする。
田村「もう、幼馴染辞めよっか。」
「っ…、」
それは、降格の言葉なん?それとも…、
田村「保乃達、付き合おう。」
「いま、なんて、」
田村「ふふ、ひぃちゃんが好き。やから、保乃と付き合って?」
「っ…、ほ、んとに、?」
田村「ほんまやって、壁の絵も見たやろ?」
「見た、けど、でも、なんで、大学いっぱい格好良い人いるやろ、旅行やって行ったんやろ?良い人いたんやないの?」
田村「…あれ、嘘。サークルで旅行行ったのはほんまやけど、全員女の子の友達やし、」
「っ…、なんでそんな嘘、」
田村「やって…、ひぃちゃんに嫉妬して欲しかってんもん、」
「…なんそれ、」
こっちは、気が狂いそうだったと言うのに、なんだその理由は。でも、有り得ないくらい、嬉しい。
「っ…ばか、保乃ちゃんのばか、」
田村「ほんまにごめんやん、」
「もう嘘ついたりせんから、」
「約束、」
田村「うん、約束。」
「それにしても、ひぃちゃん、ほんっま保乃のこと好きやなぁ〜?」
「え?」
田村「ふふ、保乃のイラスト集でも作るん?」
「っ…、それは、その、」
田村「嬉しかったで、ひぃちゃんがいっつも大事そうに持ってるスケッチブックの中が、保乃だらけで。」
「…引いたりせんの?」
田村「する訳ないやん。」
「保乃やって似たことやってるし。」
「…?」
田村「ふふ、これ、ひぃちゃん専用アルバム〜!」
そう言って差し出されたスマホのアルバムには、何百、何千と隠し撮りされている私の姿があった。
「…これは、」
田村「え、引いてる?引いてへんよな?」
「…ふふ、私たち似た者同士やね、」
田村「ふふ、やんな。」
「もっと早く、気持ち伝えとくんやったなぁ。」
「きっとこれが私たちのタイミングやったんよ。」
田村「そっかぁ、」
「…浮気したら許さへんからな。」
「するわけないやん、保乃ちゃんしか見えんよ。」
長年の片想いは、こんな幕の閉じ方をした。
私というスケッチブックに広がる保乃ちゃんのインクは絶対に消えることは無い。
どんな色で終わるのか、どんな世界になるのか、楽しみで仕方がない。
擦ったって、消えることのない好きで保乃ちゃんを彩っていこう。2人を、描いていこう。
「保乃ちゃんが、好きだよ。」
田村「保乃も、好きやで。」
-Fin-
リクエスト ・幼馴染の森田村。
・両片思いから踏み出す森田村の話
・デレデレの森田村
私の恋も、似たようなものだった。
田村「あ〜、また壁に絵書いて!お母さんに怒られんで?」
「…紙に書くの飽きたけ、」
田村「だからって壁に書くんは違うやろ〜、ま、保乃は好きやけどな!ひぃちゃんの絵。」
「…ありがとう。」
幼馴染で3つ上の保乃ちゃん。
高校生の私と違って、大学という遊び盛りのオトナが集まる世界で生活してる保乃ちゃんは、高校生の時より髪色も明るくなって、帰りの時間だって遅くなった。
私と過ごす時間も、グッと減ってしまった。
田村「はい、これ、この前サークルの人達と旅行行った時のお土産!」
「あー、旅行、だから居なかったんだ。」
田村「ふふ、皆でな温泉行ってきたんやけど、2組もカップルが出来たんやで!凄いよなぁ…。」
「え、男女で行ったと?」
田村「そうやで〜、そんな珍しいことやないやろ?」
「っ…、そうやね。」
私の知らない間に、保乃ちゃんは私の知らない男と付き合うんだろうか。私の知らない顔を見せて、私の知らないうちに、結婚とか、するんやろうか。
どんどん、私の知らない保乃ちゃんが増えてくばっかだな。
田村「なぁ、ひぃちゃんの机にあるスケッチブックって何が書いてあるん?」
「…あー、色々。」
田村「見てもええ?」
「え、あ、ごめん、ダメ。は、恥ずかしいけ、見んで。」
田村「壁に書いてあるの見てるやん!そんな恥ずかしがらんで〜?」
「これだけは、駄目、他のは見ていいから、」
田村「ちぇ…、まぁ、ええけど、」
私の知ってる保乃ちゃんは全部スケッチブックの中にいる。嬉しそうな保乃ちゃん。寂しそうな保乃ちゃん。寝ている時の保乃ちゃん。私が、好きになった時の保乃ちゃん。
こんなの見せられるわけが無い。
引かれて、嫌われて、それで終わりだ。
田村「なぁ、ひぃちゃん。」
「…?」
田村「なんで全部飲み込むん?」
「え?」
田村「何か言いかけては飲み込んで、溜め込んで、辛そうにして、保乃には気使わんでよ、なんでも教えてや、」
「っ…、」
私の気持ちには気付いてくれないくせに、こーゆうところは鋭くて、嫌になる。
私の恋も、何もかも全部、消しゴムで消せたら楽なのに。
田村「保乃たち幼馴染やろ?」
「それが嫌なんよ。保乃ちゃんと幼馴染なのが嫌で嫌で仕方ない。」
田村「っ…、」
あぁ、こんな表情の保乃ちゃんは初めて見たなぁ、初めて、傷付けちゃったな、
「…ごめん、ほんとに、ごめん。」
この場の空気に耐えられなくなって、逃げるように外に出た。保乃ちゃんを部屋に置いて、傷付けるだけ傷つけて、私、最低だ。
どの道を歩いても、保乃ちゃんとの思い出ばかりで、あの公園も、スーパーも、自販機も、1つ1つに保乃ちゃんを思い返して、馬鹿みたいに苦しくなる。
いっその事、気持ちを伝えてしまえばいいのだろうか。きっと、困らせるだけ。優しい保乃ちゃんの事だから、気を使って前みたいに接しようとしてくれるはず、けど、元には戻れない。
気持ちを伝えてしまったら、水に垂らしたインクのように後悔が広がって、どれだけ薄まっても、無くなりはしない。
私には、そんな勇気もない。
「……ただいま、」
もう居るはずもないだろうけど、無駄に緊張しながら階段を上がって、部屋の扉を開ける。
「っ…、」
部屋の中には、机の上にスケッチブックを広げたまま寝てしまったであろう保乃ちゃんの姿が目に入った。
あーぁ、見られちゃった。
あれ持って、出てくべきやった。
もう、元には、戻れなくなっちゃった。
全てがどうでもよくなって、保乃ちゃん起こすこともせずベッドに腰かけた。そのまま倒れ込むように壁に背を預けて、目の前の壁に広がるこれまで書いてきた壁の落書きをただじっと眺めていた。
「…、なん、あれ、」
壁の端っこにちょこんと書かれたクマの絵。
その横には、見慣れた丸っこい字で"好き"なんて書かれていた。
「っ…、なん、これ、」
近くで見ても、意味が理解出来なくて、でも書いた犯人は彼女しか居なくて、駄目だ、分からん。全然、分からん。
田村「んっ…、ひぃ、?」
「保乃、ちゃん、」
田村「良かった、帰ってきた、」
「っ…、保乃、ちゃん?」
寝起きの暖かい体温に体を包まれて、久々の保乃ちゃんの香りに目眩がする。
田村「もう、幼馴染辞めよっか。」
「っ…、」
それは、降格の言葉なん?それとも…、
田村「保乃達、付き合おう。」
「いま、なんて、」
田村「ふふ、ひぃちゃんが好き。やから、保乃と付き合って?」
「っ…、ほ、んとに、?」
田村「ほんまやって、壁の絵も見たやろ?」
「見た、けど、でも、なんで、大学いっぱい格好良い人いるやろ、旅行やって行ったんやろ?良い人いたんやないの?」
田村「…あれ、嘘。サークルで旅行行ったのはほんまやけど、全員女の子の友達やし、」
「っ…、なんでそんな嘘、」
田村「やって…、ひぃちゃんに嫉妬して欲しかってんもん、」
「…なんそれ、」
こっちは、気が狂いそうだったと言うのに、なんだその理由は。でも、有り得ないくらい、嬉しい。
「っ…ばか、保乃ちゃんのばか、」
田村「ほんまにごめんやん、」
「もう嘘ついたりせんから、」
「約束、」
田村「うん、約束。」
「それにしても、ひぃちゃん、ほんっま保乃のこと好きやなぁ〜?」
「え?」
田村「ふふ、保乃のイラスト集でも作るん?」
「っ…、それは、その、」
田村「嬉しかったで、ひぃちゃんがいっつも大事そうに持ってるスケッチブックの中が、保乃だらけで。」
「…引いたりせんの?」
田村「する訳ないやん。」
「保乃やって似たことやってるし。」
「…?」
田村「ふふ、これ、ひぃちゃん専用アルバム〜!」
そう言って差し出されたスマホのアルバムには、何百、何千と隠し撮りされている私の姿があった。
「…これは、」
田村「え、引いてる?引いてへんよな?」
「…ふふ、私たち似た者同士やね、」
田村「ふふ、やんな。」
「もっと早く、気持ち伝えとくんやったなぁ。」
「きっとこれが私たちのタイミングやったんよ。」
田村「そっかぁ、」
「…浮気したら許さへんからな。」
「するわけないやん、保乃ちゃんしか見えんよ。」
長年の片想いは、こんな幕の閉じ方をした。
私というスケッチブックに広がる保乃ちゃんのインクは絶対に消えることは無い。
どんな色で終わるのか、どんな世界になるのか、楽しみで仕方がない。
擦ったって、消えることのない好きで保乃ちゃんを彩っていこう。2人を、描いていこう。
「保乃ちゃんが、好きだよ。」
田村「保乃も、好きやで。」
-Fin-
リクエスト ・幼馴染の森田村。
・両片思いから踏み出す森田村の話
・デレデレの森田村