▶︎ 小林由依
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ー待って、行かないで、帰ってきて、由依。
『っ…、夢か、』
mrthkr、21歳。1か月前、2年付き合った恋人に振られたばかりの大学生だ。
同棲をしていたこの部屋に残っているのは由依の抜け殻だけ。別れの理由?そんなの知りやしない。たった一言、もうhkrとはやっていけない。そう言われて振られた。
あの時、意地でも由依の手を離さなかったら、どれだけ遠くに逃げられても追いかけていたら、何かが変わっていたのかもしれない。けれど、由依が居なくなっても世界は当たり前のように朝を迎えた。当たり前のように時間は進んで、やらなきゃいけないことは増えていくばかり。
変わったのは、私の隣に由依が居なくなったことだけ。
ピコン
森田:今日二限来れる?
mrt:意地でも行くよ。もう単位落とせないから。
失恋をしようがなんだろうが教授は単位を差しのべてくれたりはしない。私は、気だるい体を無理矢理起こして準備を始めた。
『おはよう、ひかる。』
森田「おはよう。」
「この前会った時より痩せてるけど、ちゃんと食べれてる?」
『…由依と別れてから食欲無くてさ。』
森田「無理にでも食べんと、倒れちゃうよ。」
『だね、今日から頑張って食べるよ。』
ひかるの心配を横目に、ノートを書く。書きながらも考えてしまうのは由依の事で、気がつけば授業は終わっていた。
『じゃあ、帰るね。』
森田「…hkr、」
『ん?』
森田「行こう。」
『え?どこに、』
森田「由依さんの所。」
『は!?』
神妙な面持ちをしたひかるに手を引かれ、電車に乗った。何を聞いても、後で話す。の一言で終わらされてしまい、仕方なく目的地とやらに着くまで大人しく電車にゆられていた。
〜櫻駅、櫻駅〜
森田「降りるよ。」
駅を降りて、辿り着いたのは、
『病院、?』
森田「由依さんに、hkrのことよろしくって言われとった。別れの理由も、全部、由依さんから聞いてた。」
『っ…、なんで、なんで教えてくれなかったの。』
森田「教えられんよ、それが由依さんとの約束やったから。でも、どんどん弱ってくhkr見てたら、もう私じゃどうにも出来んっち思ったから、由依さんとの約束、破った。」
『…由依は、ここに居るの、?』
そう聞けば、静かに頷いたひかる。
ああ、やめてくれ。こんな嫌な予感、頼むから当たらないでくれ。
森田「406号室。私は外で待っとるから、行ってきて。」
『…、』
森田「ちゃんと、話してきて、?」
『怖いよ、ひかる、嫌な予感がして仕方ない、』
森田「…由依さんの全部を受け止めてきて。hkrは、由依さんの恋人やろ?」
その言葉が、私の背中を押した。
気が付けば、病院の階段を駆け上がり、406と書かれた病室の前まで来てしまった。
『ふぅ…、』
コンコン
小林「はい。」
ガラガラ
『…由依、』
小林「っ…hkr、なん、で、」
「…苦しい、ねえっ、苦しいって、」
『うるさい。』
『もう離さない。絶対離さない。』
最後に会った時とは全く違う、弱った由依の姿。
やっていけないと一方的に振ったのは、由依の優しさだったんだ。私が変に期待をしないように、最後の優しさだったんだろうな。
小林「っ…、離してっ、離してよっ、!」
『なんで!!!』
『…なんで、1人で全部決めてんの。1人で、抱え込んでんの。』
小林「hkrに、迷惑かけたくなかった、っ、hkrといたら、弱くなっちゃうっ、」
『迷惑掛けてよ、弱いとこ、見せてよ。』
『ねえ、由依の全部を受け止めるよ。だから、私に話して。』
腕の力を緩め、彼女と目線を合わせるように椅子に座る。ぽつり、ぽつりと由依の口から紡がれる言葉は、覚悟を決めていても、心にくるものだった。
小林「私、いつ死んでもおかしくないの、もう余命すぎてるんだよ、」
『っ…、』
小林「ねぇ、hkr、私が居なくても、ちゃんと朝起きて、ご飯食べて、学校行くんだよ。当たり前を、ちゃんと過ごすんだよ、」
やめてよ、そんな、最後の言葉みたいなこと、言わないでよ。
『…由依が居なきゃ、嫌だよ。』
『私の生活には由依が必要なんだよ。』
小林「私だって、一緒に居たいよ。」
「でも、居れないの。居れないんだよ。」
『っ…、』
今は、ただ強く由依を抱きしめることしか私にはできなかった。
小林「…、ひかるのやつ、約束破りやがって、」
そういった由依は言葉こそ乱暴だけれど、その表情は晴れていて、ここに来たことを良かったと思わせてくれた。
『由依、』
小林「ん?」
私の腕の中で、必死に私の体温を感じている由依の耳元で声を出す。私の声が、届くように、想いが伝わるように。
『由依が、居なくても、生きていくよ。』
小林「っ…、うん、」
『きっと、生きていける、頑張ってみる。』
小林「ん、」
『でもね、やっぱ寂しいよ。由依と離れたくないよ。ずっと駄々こねてたい。こうやって、由依を抱きしめていたい。』
あぁ、震えんなよ、私の声。
最後までちゃんと、話すんだよ。
小林「ぐすっ…、」
『由依が好きだよ。ずっと、好きだった。ねえ、あの日の言葉私返事してないよ。』
小林「え、?」
『hkrとはもうやってけないって、そう言ったけどあれは由依が勝手に出ていっただけ、私は返事してない、私たちは、まだ、別れてないよ。』
小林「っ…、」
『恋人として、またここに来てもいい?』
小林「うん…っ、来て、私もhkrが好き、ずっっと、好き。」
ちょっとだけ距離を置きすぎた、ただの痴話喧嘩。そう、これは、ただの喧嘩なんだよ、由依。
『由依、』
小林「ん?」
『愛してる。』
目を見て、そう言葉を告げれば、少し驚いた顔をしてから、にっこりと笑って、
小林「私も愛してる。」
なんて口にした由依。
そのまま、私の腕の中で、目を閉じた。
『由依?…由依?』
どんどん力が抜けて重みが増えていく由依の身体。真っ白になっていく肌。嫌だ、嫌だよ。
折角気持ち伝えられたのに。
その後のことはよく覚えていない。
気がつけば、葬儀やらなんやらが終わって、その間も私の隣にはずっとひかるがいた。
着慣れない喪服を着崩して、ひかると2人で外に出た。ポケットから一本取りだして、咥える。
カチッと音を立ててライターを点ければ、辺りが煙と懐かしい匂いに包まれて、目頭が熱くなる。
森田「hkrまで吸うようになったと?」
『まさか。』
『ただ、これを吸う由依の気持ちを分かってみたかっただけ。…ごほっ、』
私は由依みたいに格好よく吸えやしないし、そんな姿似合わない。
由依が居ないこの世界で私は、私を見つけなきゃ行けない。
『ねーえ、ひかる?』
森田「ん?」
『生きるの、手伝ってよ。』
訳のわかんない誘い文句だったと思う。
それでもひかるは嫌な顔せずに"いいよ"なんて笑ってくれた。
その笑顔はなんだか、あるはずのない八重歯があるように見えて、また苦しくなった。
ねぇ、由依。
私さ、由依のいない世界を頑張って生きてみるよ。
だからさ、そっちに行ったら沢山私のそばにいてね。
約束だからね。
-fin-
『っ…、夢か、』
mrthkr、21歳。1か月前、2年付き合った恋人に振られたばかりの大学生だ。
同棲をしていたこの部屋に残っているのは由依の抜け殻だけ。別れの理由?そんなの知りやしない。たった一言、もうhkrとはやっていけない。そう言われて振られた。
あの時、意地でも由依の手を離さなかったら、どれだけ遠くに逃げられても追いかけていたら、何かが変わっていたのかもしれない。けれど、由依が居なくなっても世界は当たり前のように朝を迎えた。当たり前のように時間は進んで、やらなきゃいけないことは増えていくばかり。
変わったのは、私の隣に由依が居なくなったことだけ。
ピコン
森田:今日二限来れる?
mrt:意地でも行くよ。もう単位落とせないから。
失恋をしようがなんだろうが教授は単位を差しのべてくれたりはしない。私は、気だるい体を無理矢理起こして準備を始めた。
『おはよう、ひかる。』
森田「おはよう。」
「この前会った時より痩せてるけど、ちゃんと食べれてる?」
『…由依と別れてから食欲無くてさ。』
森田「無理にでも食べんと、倒れちゃうよ。」
『だね、今日から頑張って食べるよ。』
ひかるの心配を横目に、ノートを書く。書きながらも考えてしまうのは由依の事で、気がつけば授業は終わっていた。
『じゃあ、帰るね。』
森田「…hkr、」
『ん?』
森田「行こう。」
『え?どこに、』
森田「由依さんの所。」
『は!?』
神妙な面持ちをしたひかるに手を引かれ、電車に乗った。何を聞いても、後で話す。の一言で終わらされてしまい、仕方なく目的地とやらに着くまで大人しく電車にゆられていた。
〜櫻駅、櫻駅〜
森田「降りるよ。」
駅を降りて、辿り着いたのは、
『病院、?』
森田「由依さんに、hkrのことよろしくって言われとった。別れの理由も、全部、由依さんから聞いてた。」
『っ…、なんで、なんで教えてくれなかったの。』
森田「教えられんよ、それが由依さんとの約束やったから。でも、どんどん弱ってくhkr見てたら、もう私じゃどうにも出来んっち思ったから、由依さんとの約束、破った。」
『…由依は、ここに居るの、?』
そう聞けば、静かに頷いたひかる。
ああ、やめてくれ。こんな嫌な予感、頼むから当たらないでくれ。
森田「406号室。私は外で待っとるから、行ってきて。」
『…、』
森田「ちゃんと、話してきて、?」
『怖いよ、ひかる、嫌な予感がして仕方ない、』
森田「…由依さんの全部を受け止めてきて。hkrは、由依さんの恋人やろ?」
その言葉が、私の背中を押した。
気が付けば、病院の階段を駆け上がり、406と書かれた病室の前まで来てしまった。
『ふぅ…、』
コンコン
小林「はい。」
ガラガラ
『…由依、』
小林「っ…hkr、なん、で、」
「…苦しい、ねえっ、苦しいって、」
『うるさい。』
『もう離さない。絶対離さない。』
最後に会った時とは全く違う、弱った由依の姿。
やっていけないと一方的に振ったのは、由依の優しさだったんだ。私が変に期待をしないように、最後の優しさだったんだろうな。
小林「っ…、離してっ、離してよっ、!」
『なんで!!!』
『…なんで、1人で全部決めてんの。1人で、抱え込んでんの。』
小林「hkrに、迷惑かけたくなかった、っ、hkrといたら、弱くなっちゃうっ、」
『迷惑掛けてよ、弱いとこ、見せてよ。』
『ねえ、由依の全部を受け止めるよ。だから、私に話して。』
腕の力を緩め、彼女と目線を合わせるように椅子に座る。ぽつり、ぽつりと由依の口から紡がれる言葉は、覚悟を決めていても、心にくるものだった。
小林「私、いつ死んでもおかしくないの、もう余命すぎてるんだよ、」
『っ…、』
小林「ねぇ、hkr、私が居なくても、ちゃんと朝起きて、ご飯食べて、学校行くんだよ。当たり前を、ちゃんと過ごすんだよ、」
やめてよ、そんな、最後の言葉みたいなこと、言わないでよ。
『…由依が居なきゃ、嫌だよ。』
『私の生活には由依が必要なんだよ。』
小林「私だって、一緒に居たいよ。」
「でも、居れないの。居れないんだよ。」
『っ…、』
今は、ただ強く由依を抱きしめることしか私にはできなかった。
小林「…、ひかるのやつ、約束破りやがって、」
そういった由依は言葉こそ乱暴だけれど、その表情は晴れていて、ここに来たことを良かったと思わせてくれた。
『由依、』
小林「ん?」
私の腕の中で、必死に私の体温を感じている由依の耳元で声を出す。私の声が、届くように、想いが伝わるように。
『由依が、居なくても、生きていくよ。』
小林「っ…、うん、」
『きっと、生きていける、頑張ってみる。』
小林「ん、」
『でもね、やっぱ寂しいよ。由依と離れたくないよ。ずっと駄々こねてたい。こうやって、由依を抱きしめていたい。』
あぁ、震えんなよ、私の声。
最後までちゃんと、話すんだよ。
小林「ぐすっ…、」
『由依が好きだよ。ずっと、好きだった。ねえ、あの日の言葉私返事してないよ。』
小林「え、?」
『hkrとはもうやってけないって、そう言ったけどあれは由依が勝手に出ていっただけ、私は返事してない、私たちは、まだ、別れてないよ。』
小林「っ…、」
『恋人として、またここに来てもいい?』
小林「うん…っ、来て、私もhkrが好き、ずっっと、好き。」
ちょっとだけ距離を置きすぎた、ただの痴話喧嘩。そう、これは、ただの喧嘩なんだよ、由依。
『由依、』
小林「ん?」
『愛してる。』
目を見て、そう言葉を告げれば、少し驚いた顔をしてから、にっこりと笑って、
小林「私も愛してる。」
なんて口にした由依。
そのまま、私の腕の中で、目を閉じた。
『由依?…由依?』
どんどん力が抜けて重みが増えていく由依の身体。真っ白になっていく肌。嫌だ、嫌だよ。
折角気持ち伝えられたのに。
その後のことはよく覚えていない。
気がつけば、葬儀やらなんやらが終わって、その間も私の隣にはずっとひかるがいた。
着慣れない喪服を着崩して、ひかると2人で外に出た。ポケットから一本取りだして、咥える。
カチッと音を立ててライターを点ければ、辺りが煙と懐かしい匂いに包まれて、目頭が熱くなる。
森田「hkrまで吸うようになったと?」
『まさか。』
『ただ、これを吸う由依の気持ちを分かってみたかっただけ。…ごほっ、』
私は由依みたいに格好よく吸えやしないし、そんな姿似合わない。
由依が居ないこの世界で私は、私を見つけなきゃ行けない。
『ねーえ、ひかる?』
森田「ん?」
『生きるの、手伝ってよ。』
訳のわかんない誘い文句だったと思う。
それでもひかるは嫌な顔せずに"いいよ"なんて笑ってくれた。
その笑顔はなんだか、あるはずのない八重歯があるように見えて、また苦しくなった。
ねぇ、由依。
私さ、由依のいない世界を頑張って生きてみるよ。
だからさ、そっちに行ったら沢山私のそばにいてね。
約束だからね。
-fin-