夢見るチョコレート
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正月ムードも完全に去った2月の初め。
2月3日の節分を終えた2月4日から百貨店や量販店、コンビニ、町並みは瞬く間にそれまでの和風な装いからハートとピンクが溢れるロマンチックでラブリーな光景へと姿を変えた。
2月14日、バレンタインデー。
世界でカップルの愛を誓う日とWikipediaにも書かれる日。
しかし日本では"愛の日"ぬであると共に近年では愛より単なる"チョコレートの日"となっているのではないかと、サロンの待合で何気なく読んでいた雑誌に載っていたバレンタインのチョコレートやスイーツの特集ページを見ながら夢見る夢子は考えていた。
「夢見る夢子さ~ん、こんにちは~。お久しぶりですねぇ~」
声をかけてきたのは担当の女性スタッフ。
いつも間延びした口調で話す独特な不思議ちゃんだが腕は確かで、おしゃべりな様で口は硬いしっかりとしたプロの人材だ。
おかげで仕事からプライベートな悩みまでついつい話せてしまう数すくない人物でもある。
「こんにちは。ちょっと仕事がバタバタで来るタイミング遅くなっちゃいました」
「そぉなんですか~、お疲れ様です~。あ!その雑誌、バレンタイン特集のですよねぇ~!私も読みましたよぉ~!」
対話の際もテーブルを挟んだ向かい側の席には座らず、あえて傍らの床に片膝をついて座るなど徹底している。
しかしこういったバレンタインや乙女のイベントが大好きなタイプ。
普段なら今日のカウセンリングから入るべきところを、さっそくその話題に食い付いてきた。
「最近はジュエリーとか小物系の特集もあってますけど~、やっぱりバレンタインっていったらショコラですよねぇ~!」
「そういえばチョコが大好きだったよね。でもその話だと上げるっていうより、自分が欲しいって話だね」
といっても雑誌自体も男性へのプレゼントより女性向けのスイーツの方を大々的に紹介しているのだからそうなってしまうのも無理もない。
「えへへ~。でも、夢見る夢子さん~?今は逆チョコだって人気でてるんですよ~?」
逆チョコといえば男性から女性へと贈るそれまでのスタイルの逆バージョンだ。
そういえばここ数年よく聞きくが、生憎夢見る夢子はその経験など全くない。
唯一無理やりにでも上げるとすれば、実家に帰った際に父が職場で女性社員達から社交辞令的に貰ったチョコを貰ったことくらいだ。
思い返せばバレンタインとは、とんと縁のない日々を過ごしてきた。
「私には縁のない話だなー。そういえば最近はチョコ上げることすらしてないかも」
「えぇ!!?本当に!?職場では?夢見る夢子さん、芸能関係でしたよね?」
「え、そうだけど…?あ!もしかしてファンからのプレゼントのおこぼれのこと?それならうちは基本ないよ。やっぱりその人達に贈られたものだからねー」
「いやいやいやいや!そうじゃなくって!」
何やら担当は普段の間延び口調も何処へやら必死になっているが、夢見る夢子は何故か分からず首を横に傾げるばかり。
だってそうだ。
相手はBUCK-TICKのメンバーなのだ。
バレンタインの贈り物などファンから本当に腐るほど貰えるし、むしろ本人たちはそれをありがたく全て頂いていくのも一苦労なところだろう。
そうした結果、夢見る夢子はあえてバレンタインに彼らには何も贈らず、するとすれば内容量の多いアソートの詰め合わせを職場の皆用としてレコーディングの際にスタジオへ持っていく程度だろう。
しかし去年においては他のスタッフも同じような様子があった為、自分は贈ることすらしなかった。
「意外と業界内部はサバサバしたものだよ」
「でもそれじゃ楽しくないでしょ?」
「うーん、そもそもバレンタイン自体あんまり楽しもうって気がないからなぁ。でもスイーツはよく食べるからその辺は楽しめてるよ」
「それじゃ、駄目ですよ!そうだ!」
担当は力強く断言すると勢いよく立ち上がり、何かを思い付いたのかパン!と両手を叩いて見せた。
「夢見る夢子さん、今日のスタイルは何かをご希望お決まりでしたか?」
「いや。特にいつも通りとしか…」
「じゃあ今回はぜーんぶ私に任せて下さい。夢見る夢子さんが周りからプレゼントをガッポガッポ貰えるくらい素敵にしますから!」
ガッポガッポとは…なかなか今時聞かない単語をよく出してきたものだが、これほどやる気と熱さに満ちた彼女は見たことがない。
夢見る夢子としてはプレゼントを貰いたいなどという気は一切なくバレンタインに対しても今日のないままではあったが、その勢いに圧倒されこくこくと頷くことしかできなかった。
それから数日後。
時間はあっという間に過ぎて行き、いよいよバレンタインデー。
あの後、夢見る夢子は担当の手によって普段のスタイルからかけ離れ過ぎないものの、何処か女性らしさをぐっと引き上げた姿へと変身を遂げた。
その翌日出社した際には「雰囲気変えた?」などと声をかけられることもあり、周りから見てもその変わり様は目に留まるものだったらしい。
そしてBUCK-TICKメンバーからも好評で皆から「いいね」と軽く誉められたこともあり、夢見る夢子としても悪い気がするわけがなく担当から教えられたスタイリング方法などをしっかりと確認してそれに習う状況が続いていた。
しかし、あくまで身内に好評であったのみで今日まで合コンに誘われだのナンパされただの告白されただのといったものは、一切なく普段通りの日々が続くのみ。
夢見る夢子としては一瞬だけでも少しちやほや扱われただけ十分に楽しめた為、特に不満はない。
とりあえず今年のバレンタインデーは何かを贈るのも良いかと考えたので、久々にプレゼントの用意はした。
男女共々スタッフにまとめてアソート詰め合わせを1つ、横山や、先輩である千葉マネージャーなど特定スタッフにそれぞれちょっとしたお菓子を1つずつ。
そしてBUCK-TICKメンバーそれぞれに同じだが他と比べて少しグレードの高いプレゼントを準備した。
去年よりも少し楽しいバレンタインデーにしよう。
ただそう思っていた。
しかし、まさかこうなるとは誰が思っていただろうか…。
■□Choisissez votre chocolat préféré.□■
お好きなショコラをお選び下さい。
AROUND CHOCOLATE
ーアマンドショコラー
アーモンドる甘い幸せの欠片
CHOCOLAT CHAUD
ーショコラショーー
熱く甘い魅惑の一杯
TURFFLE
ートリュフー
甘くほどける溶ける目眩
SHELL
ーシェルー
想いも甘く可愛く包み込んで
GUIMAUVE
ーギモーヴー
……チョコ?
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AROUND CHOCOLATE
ーアマンドショコラー
アーモンドる甘い幸せの欠片
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TURFFLE
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甘くほどける溶ける目眩
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ーシェルー
想いも甘く可愛く包み込んで
GUIMAUVE
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……チョコ?
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