夢見る大晦
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正月を迎えるに当たって、年末から取り組まれる大掃除。
学生の頃から苦手ではあったが、社会人になってからは仕事の都合なども関わって来るため億劫さは増し、一年を締め括る最大の苦行イベントと化していた。
「はぁ…やらなきゃだよね…」
12月31日。
いつもより少し早めに目覚めた夢見る夢子は、乱れた髪もそのままに目の前に広がる惨状に呆然と立ちすくんでいた。
夢見る夢子の城は、女の独り暮らしにはやや広いマンションの一室。
普段から掃除は苦手な分、後で苦労しないようにと敢えて小まめに掃除や整理整頓は行っていたし、仕事上家を空ける事も多いのでそもそも物も少ないこともあり、友人や知人が突然訪ねてきても難なく通せる程、彼女の部屋は清潔だ……ったのだが…。
一番清潔さを保つべきである年末の今にこそ、彼女の城は荒れている。
理由は簡単。仕事だ。
BUCK-TICKの年末といえば12月29日に武道館で行われるTHE DAY IN QUESTION.
一年の最後を締め括るイベントとしてメンバーはもちろん関係者一同の思い入れは強く熱い。
数ヵ所の地方公演を経ての1日でも、打ち合わせなり微調整など手抜きは皆無。
むしろ絶対成功させなければという気合いも加わり、当日までの数日間はむしろツアーの初日より仕事量が多いのではと思うほどだ。
そうなると必然的に仕事による疲労感は増える。
地方と違い仕事場から自宅までは近いのでフラフラながらも帰宅はする。
しかし「ちょっと掃除してから休もう」という気持ちは微塵もなくなる。
寝る、仕事に行く…その繰り返し。
今回は特に忙しくなったのは当日までの4日間ほど。
たった4日だが、こうやって落ち着いて部屋を見回すと…そこそこ酷い。
テレビの前のソファには帰って脱ぎ捨てたアウターが数着、良く見ると脱ぎ捨てたタイツやニットまでが無造作に置かれている。
テーブルには空のペットボトルが数本。
その足元のカーペットには一昨日の朝に出勤前にソファで化粧をしていた際に落として割れてしまったファンデーションの欠片が、取り除ききれずに残っている。
キッチンには毎朝必ず飲む珈琲を淹れた空のマグカップが洗われることなくシンクの中に置き去りにされ、内ひとつには何に使ったかも思い出せないフォークが一本突っ込まれている。
さすがに生ゴミや食べかけ飲みかけのゴミこそなかったが、それを受け入れるゴミ箱は中身がパンパン。
ついでに言うと脱衣所には洗濯はしたものの畳んでもいない服達が山積みにされている。
見る人が見れば、これは立派な汚部屋だと怒られてしまいそうだ。
「あー…ダルいなぁ…」
本当であれば30日に少し片づけをしていれば、2日かけての大掃除として負担は少なかったのだろうが…
今年の打ち上げはかなり盛り上がり久しぶりに太陽がずいぶんと高い位置に上るまで皆で飲み合ってしまった為、帰ってからは荷物も放り出して泥のように眠ってしまい何も手を付けることができず終いとなった。
とはいえ、さすがにこのままではいけない。
そして計画性うんぬんをもはや言っていられない今、こうして早めに起きて気合いでどうにかする他ない。
「うっし!」
夢見る夢子は意を決すると、かけ声一つ上げてゴミ袋を片手に窓を開けた。
真面目に手早く取り組んだおかげもあってか正午には4日分の掃除はほぼ片付いた。
あとは大掃除らしく普段なかなか掃除をしない窓や家具の下など細かいを掃除すれば上出来と言って良いだろう。
ゴールが見えると気が楽になるもので、夢見る夢子は最初の嫌々気分を何処へやら…
足が低くて隙間が狭く、普段はなかなか掃除機もかけれないソファの下を掃除するべく「よっ!」と掛け声を上げながらソファを持ち上げてずらした。
「……あれ?」
そこで夢見る夢子はあるものに気がついた。
ソファの下に何かがある。
掃除をする手を一時止め、手に取ったそれは……
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