強烈な個性
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名無しさん…どこ行きやがった…。
アイツの足でそう遠くには行ってないはずだ。
ありがちな出会いだか、町で絡まれているところをうちのペンギンとシャチが助けてやった。
そしたら雑用係でも何でもいいから船に置いてくれって言うから丁度いい。
人手が足りてない所へ適当に押し付けた。
初めは鈍臭ェ芋っ子みてェなやつだと思った。
何やらしても失敗続きで俺にしょっちゅう怒られ。
でもアイツは何度怒られても挫けずに。
俺の後をついてきて離されまいと必死にしがみついてくる。
物覚えは良くないが、言われたことは完璧にこなすアイツは教え甲斐がある。
そんな我武者羅に働く名無しさんを見て俺は無意識に目元が緩んでいたらしい。
ペンギンに茶化されては、よくバラしてやったモンだ。
そして、名無しさんは毎朝決まった時間に起こしに来る。珈琲を手に持って。
初めは要らねェ、面倒臭ェと思ったがいつしかそれを待っている俺が居た。
「あれ、私が来る前にキャプテンが起きてるなんて珍しいですね。」
「お前も誰に頼まれた訳でもねェこんな事、毎朝毎朝飽きもせずによく続くな。」
俺は皮肉を言ったつもりだったが、名無しさんは笑顔を浮かべ、こう言ったんだ。
「私、キャプテンのこと好きなんです。毎朝一番に顔見たいから…迷惑でしたか?」
目の前には耳まで真っ赤にして突っ立っている名無しさん。
なんだ、この状況は。
「…いや。迷惑じゃねェが。」
「本当ですか!?じゃあ、キャプテン私と付き合ってくれますか?」
咄嗟の事で、しかも寝起きの俺は言葉が出なくて一言「あぁ。」としか返せなかった。
虱潰しの様に町を駆けずり回る。
アイツが行きそうな店は既に調べた。
あとは昼間でも薄暗い、この裏通り。
その時、飲み屋から見慣れた女が出てきたのが遠目からでも分かった。
名無しさんだ。
ふらふらと覚束無い足取りで。
両腕をガタイのいい男二人に抱えられて出てきた。
…汚ェ手で触るな。
誰の女だと思って手ェ出してやがる。
「ROOM。」
ブゥ…ン。とサークルが、俺と三人を取り囲む。
「何だぁ兄ちゃん。俺に何か用かぁ?」
男が気付いたらしく、後ろを振り返る。
「これからお楽しみなんだよ。邪魔をするつもりなら容赦しねぇぜ。」
間に挟まれている名無しさんは赤い顔をして目も虚ろだ。
どんだけ飲まされたんだ…。
その目の焦点が俺に合う。
「…ロー?」
確かにアイツはそう言った。
そして、その言葉を聞いた男達の顔はみるみる青褪めていく。
「ローってまさか…!?」
「俺の事を知っているのか。フ、名乗る手間が省けた。そいつに手を出した事、後悔させてやる。」
「ま、待て!俺達はただ、介抱してやろうとしただけで。」
「黙れ。」
奴らは俺の気迫に恐れをなしたのか、名無しさんをその場に放り出して逃げようと背を向ける。
「きゃっ…痛ッ。」
酔って受け身もろくに取れない状態の名無しさんは地面に転がり体を打つ。
それは更に俺の頭に血が上る事だと知らずに。
「勝負中、相手に背中を見せるのは殺されてもいいって合図だ。」
俺は指を立てた。