シングルベール

シングルベール

メリーカナシミマス

クリスマスイブの夜なのに私は職場の広いフロアに一人ぼっちで残業中

パソコンのキーボードを叩く手を止めて画面から窓の外に目線を移せば雪がしんしんと降っている

それを見て思わずため息をつく

「はぁ…雪止まないかなぁ」

子供のときはホワイトクリスマスってだけで嬉しくてテンション上がったものだったけど

大人になった今では気持ちは真逆だ

雪が降ってるってだけで寒くて
雪道を歩けば靴は冷たくなるしでテンションだだ下がり

そしていい年した大人だけどプレゼント交換するそんな恋人すらいない

…いつの間にか私も寂しい大人になってしまったようだ

他の同僚はデートがあるとかで先に帰ってしまったし、家庭をもっている人も家族水入らずで過ごすクリスマスイブを楽しみに定時で上がって行った

私はどうせ予定もないので皆の残った仕事を引き受けて居残り中

我ながらお人好しというか何というか

まぁ、誰かがやらなきゃいけない仕事だから仕方ないんだけどね

「うぅ〜、疲れた」

ポキポキと背筋を伸ばして姿勢を直すと椅子がギッと軋む音を立てた

一人暮らしの寒いマンションへ帰っても寂しさが増すだけだ
仕事をしていたほうがまだ気が紛れる

時計の針は夜8時を過ぎていた

明日も出勤だし寝るのが遅くなって仕事に響く様では困る

仕事の目処は付いたのでそろそろ帰ろうとパソコンをシャットダウンしたり帰り支度を始める

帰りのスーパーで夕飯の食材買うついでにケーキくらいは買おうかな

皆は今頃クリスマスデートかなぁ

家族であったかい料理を囲んでいるんだろうなぁ

それに比べて私は一人
真っ暗で寒い部屋に帰ることを思い浮かべる

自分へのご褒美でパーッとプレゼントでも買えばよかったー！

寂しさが爆発しそうで思わず机に突っ伏していると後ろから突然声を掛けられた