ハッピーバレンタインデー
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ここは船長室。
無理やり連れて来られて膨れっ面の彼女の前には長い足を組み、腕まで組んで偉そうに座るローの姿。
まぁ、実際キャプテンだから一番偉いんだけど。
「それで…言い訳なら聞いてやるが?答え次第ではバラバラになるぞ。」
フッと口元に少し笑みを浮かべて勝ち誇ったローの顔が既に何かムカつく。
そりゃあ、ローに口では勝てない。
勝てないのは分かっている!けど…。
これは黙ってはいられない。
「今日はバレンタインデーでしょ?」
「あァ。知ってる。」
「日頃皆にお世話になっているお礼としてのチョコレートを…。」
「必要ない。」
「うっ。」
ローの目は相変わらず私を射抜きそうなくらい真っ直ぐ、鋭い視線で見つめる。
その目で見られて体温が上がるのを感じた。
じわじわと胸の奥が焦げたみたいにチリチリと痛い。
「普段アイツらだってお前に散々迷惑かけてるだろ。それでプラマイゼロだ。」
「でもっ、感謝の気持ちだしクッキーくらいあげたって…。」
「言葉だけで十分だろ。」
はぁ…。
やっぱり何を言っても駄目だ。
ローには簡単に丸め込まれてしまう。
ぐっ…と言葉に詰まっていると、ローが椅子から立ち上がり距離を詰める。
「しかし、お前も懲りねェなぁ…去年もこんなやり取りしただろ。」
そうだった。だから今年はローが出掛けた隙を見計らって皆に渡そうと思っていたのに、その作戦も簡単に見抜かれていたみたい。
去年は全てのチョコレートが没収されたなぁと頭の隅で考えていた。
そういえば、没収されたチョコレートの山はどうなったんだっけ…?
椅子から立ち上がると少しずつ近付いてくるロー。
後退する名無しさん。
背中は壁についた。
そっと、ローの長い指が頬を
つつ…となぞった。
一気に頬に朱が散る。
触られたところが熱い。
「出せよ。おれの本命。あるんだろ?」
「あ、うん。…はい、ローどうぞ。」
手提げの紙袋をガサガサ探って残っていた一つを拾い上げて目の前の彼へ渡す。
その二人の距離は30センチもない。
ローはまだ不服そうな表情。
「違う。」
「?違うって何が?」
「これを良く見てみろ。何処が本命だ?」
んーと。
そう言われても…。と名無しさんは困惑してしまう。
ラッピングも量産した義理チョコクッキーとは差をつけたし。
中身だって頑張って作ったトリュフチョコレートなのにぁ。
あっ。と、ローが小箱を受け取り、しゅるしゅると金色のリボンを解いて箱を開ける。
「もっと本命感をだせ。」
「……はい?」
「おれだけ特別なんだろ?」
「そりゃあ、まあ…。恋人同士ですしね…。」
って改めて言葉に出すのが何か恥ずかしいな。て言うかせっかくあげたバレンタインチョコにダメ出しって酷くない?
「おれのこと好きなんだろ?」
「うっ。」
自信満々なその笑みがムカつく。
ムカつくけど、やっぱり心臓がぎゅっと掴まれたみたいに鼓動が早くなり、目が反らせない。
「うん…ローのこと好きだよ。だけど特別ってどうすれば良いの?」