「君のこと困らせるつもりじゃないんだ。ただ、最近他の奴らといる名無しさんちゃんを見ていると何だか気になっちまう」

そのまま私の気持ちまで見透かされてしまうみたいで
ドキドキと胸が苦しくなる

さっき距離を取ったはずなのに
徐々に距離を詰めてくるサンジ君

「あの…サンジ君？」

「あー、クソ格好悪ィな俺。正直言うとウソップに嫉妬してた」

くしゃっと頭を軽く掻くと綺麗な髪が乱れた

嫉妬という言葉を聞いて私の心の中も掻き乱されている

「女の子はみんなプリンセスだけど、名無しさんちゃんだけは俺にとって特別なんだ」

「う、そ…」

サンジ君が私の手を取り、スルッと手の甲を撫でる

「名無しさんちゃん、君のことが好きなんだ」

熱を帯びた目で見つめられ
胸を突き上げてくる感情に涙腺が緩む

「私も…サンジ君が好きなの」

振り絞った勇気は小さな声にしかならなかったけど
彼の耳にはちゃんと届いたみたいだ

わっ、と気付いた時にはサンジ君の腕の中にいた

「っ、サンジ君？！」

「同じ思いでいてくれてクソ嬉しい」

抱き締められて心臓のドキドキがすごく伝わってくる

同じ様に私の鼓動も伝わっていると思うと恥ずかしいけど

「他の奴らの事が好きなんじゃないかって思ってたからさ、自信なかったんだ…」

少し声が震えている気がする
サンジ君も緊張しているのかな

「ウソップにはサンジ君についての恋愛相談に乗ってもらっただけだよ」

はぁっと長く一息つくとサンジ君は言った

「なんだ、勘違いだったのか」

彼の腕の中は温かくて
その優しいぬくもりは私を幸福感いっぱいにしてくれる

「名無しさんちゃん、これからは恋人としてよろしくな」

「はい…サンジ君」

自然と頬を流れる涙はとてもあたたかかった


fin.